アバンセ館長コラム第11号(令和5年2月)

アバンセ館長コラム 第11号 ~シオリーヌさんから刺激をうけて~(令和5年2月)

 2月12日、アバンセホールにて、『女らしさって?男らしさって?「聞いてみよう!ジェンダーのこと」』というテーマで、令和4年度男女共同参画フォーラムが開催されました。講師には、助産師で人気ユーチューバーのシオリーヌさんをお招きしました。

 シオリーヌさんの言葉を紹介します。『ジェンダー平等の社会とはなにか、それは、「どんな性で生きる人も平等な選択肢を持ち、自分の意思で人生を選び取れる社会、ありたい自分であり、周囲からも認められる社会」です。』心にしっくりとくる、いい表現だと思えました。シオリーヌさんの講演を聞いた60代男性は、「ジェンダーに関するいろんな講演を聴いてきたが、いつも怒られているような居心地の悪さを感じていた。けれど、今回は違った。わかりやすく、なるほどと腑に落ちて、すんなり聴けた。」と感想を話されていました。

 私も、同感でした。性やジェンダーを語るシオリーヌさんの言葉の選び方、話し方、表情から、明朗さ、率直さ、人権感覚、感受性の柔らかさを感じました。「性」にまつわる概念を、狭い閉じ込められた場所から解放し、明るい日向のにおいのする場所で、生きることを愛おしむ感じがして、とても好感を持ちました。

シオリーヌさんは、歌や踊り、演劇などのエンタメの力を使って、性教育に関する発信を、楽しみながら取り組まれています。実は、私も似たような発想を持っています。

 

 歴史を紐解くと、私たちが当たり前に享受している権利は、先達の獲得した恩恵の上に成り立っていることに気づかされます。さまざまな差別・弾圧を受けていた先達が自分たちの尊厳を守るために連帯して行動し、徐々に社会を変えてきました。そして、今を生きる私たちが、残存する未解決の課題を変えていく主体であることも十分理解できます。

 差別の歴史は、常に、当事者が声を上げ、変革の主体となってきました。では、ジェンダー平等は誰が進めていくのか。本来ならば、男女共同参画という言葉が示すとおり、全員が当事者なのです。しかし、先ほどの男性の感想が示唆するように、ジェンダー平等が、今もなお、変革を迫る女性側VS変革を嫌がる男性側の対立の構図、怒りや恨みのエネルギーで突き動かされる負のオーラの世界と認識され、その状況に留まってしまうのは、大変もったいないことです。

 男女共同参画とは、シオリーヌさんの言葉を嚙み締めれば、皆が幸せになる未来の社会です。「戸籍上に振り分けられた性別に縛られず、自分らしく生きることができる社会を創ろう。一人一人が幸せな人生を歩めるように。」というメッセージをもっと多くの人達に届けたいと思います。アバンセでも、多くの人たちに発信できる創意工夫をしていきたい。エンターテインメント、芸術の力をもっと活用したいと思っています。

 
 アバンセ館長 田口香津子    プロフィール


 アバンセ館長

   佐賀女子短期大学 学長 (2018.4-2022.3)

 認定NPO法人 被害者支援ネットワーク佐賀VOISS理事長

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