アバンセ館長コラム第23号(令和6年2月)

アバンセ館長コラム 第23号                                                   避難所運営訓練 ~自分事として引き寄せて~(令和6年2月)

  

  128日の日曜日、今にも降り出しそうな曇天のなか、鹿島市「のごみ楽習館体育館」にて、男女共同参画の視点を取り入れた防災リーダー養成講座の最終回として、避難所運営訓練「みんなでつくろう!安心・安全な避難所」が開催されました。遠く、青森から、一般社団法人男女共同参画地域みらいねっとの講師二人をお迎えしました。2022年、ジェンダー平等の実現を取り入れた防災教育が評価され、SDGsジャパンスカラシップ岩佐賞を受賞された団体です。本当に豊かな支援経験に裏打ちされたプログラムを企画していただきました。

 

 私は、それまでも、令和33月アバンセ発行の「男女共同参画の視点を取り入れた災害時避難所運営のマニュアル」を読んだり、防災の研修会に参加し事例をお聞きしたり、防災士会開催の実技講座にも参加し、浅い知識は持っていました。しかし、今回は、「百聞は一見にしかず、実践にしかず。」

この訓練の各場面で、受け取る重みが違いました。

 

 もちろん、私だけでなく、訓練に参加した全員が、11日に石川県能登半島地震発生以来、刻々と被害状況が明らかになり、必要な手立てが変わっていき、まだまだ、先の見えない日々を多くの方が過ごしている現実を知っています。

 

 ですから、講師が、「床にそのまま寝てみてください。」と言われて冷たく硬い床に横たわり、チクチクと刺されて痛くなるような冷たい感触に襲われときに、これ以上の冷たさの中で過ごされた方々の辛さを思うと、申し訳ない感情に陥りました。今は、訓練だから、一瞬被災地のことを思い浮かべたとしても、すぐに立ち上がれるのです。体育館、寒いですよねと簡単に言ってはいけないような気持になりました。その後、段ボールベッドを組み立てて横たわると、どれほど、床より冷たさが和らぎ寝やすいかを実感しました。また、ビニール袋、新聞紙、凝固剤を用いた簡易トイレのつくり方も習いました。「実際は、一人分を小さなビニール袋に詰めて捨てるというのでは間に合わない、用便後、スプーン一杯の凝固剤を振りかけた後に、新聞紙を重ね、その上に別の人が用便をして、10人分くらいになったら、口を結んで燃えるごみとして捨てます。」と講師が言われたとき、「それって、誰が捨てるのですか?」と質問がありました。「その避難所の皆さんで、どうするかを話し合って決めていくのでしょうね。」と答えられました。

 

 「避難所に集まるのは、顔見知りの地域の方ばかりじゃないですよ。たまたま、旅行していた地域外の方、日本語の通じない外国籍の方、病気や障害を持たれた方、妊婦さんや幼い赤ちゃん連れの家族など個別的な配慮が必要な方たちも当然います。くれぐれも、市役所の人などに、サービスを要求したり文句言ったりするだけで終わらないでくださいね。市役所の人も誰もが被災者です。皆さんは、今日のようになんらかの役割をもって運営できる主体であって欲しい。」

 

 その日は、子ども向け(親子参加型の)防災講座も兼ねてあったので、子どもたちがビニール袋と新聞紙で製作した防災クッションを披露してくれたり、子どもたちの掛け声で、ラジオ体操を一緒にしたり、子どもたちも避難所運営の一員であることを知りました。

 

 母と子が安心できる授乳コーナー設置ばかりでなく、父親が赤ちゃんに飲ませるミルクコーナーの設置もあり、はっとしました。男女共同参画社会の基本は、多様性への配慮なのですね。

 

 今回の避難所運営訓練は、体に落とし込むような学びとなりました。

 
 アバンセ館長 田口香津子    プロフィール


 アバンセ館長

   佐賀女子短期大学 学長 (2018.4-2022.3)

 認定NPO法人 被害者支援ネットワーク佐賀VOISS理事長

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