アバンセ館長ルーム

 

アバンセは、幸せに生きたい県民の応援団です。男女共同参画社会づくりの促進の拠点であり、パートナー間などあらゆる暴力の撤廃の拠点、生涯学習の振興の拠点でもあります。

    館長の仕事は、そんな多様なアバンセの魅力を発信すること。その魅力とは、人との出会いで生まれるものです。この館長ルームでは、アバンセの職員紹介とともに、その折々の出来事を通して感じたことを綴っていきます。ときどき、ふっと道草したくなるような、自在なお気持ちで、館長ルームにお立ち寄りください。

 一緒に働いてもらっている職員を私が描いた似顔絵とともに少しずつ紹介いたします。

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最新のアバンセ館長コラム

第31号 生きてこそ 自分自身を生きてこそ

 どんなに近しい間柄であっても、相手の悲しみを悲しみ、喜びを喜ぶ関係性だったとしても、相手の人生を代わりに生きることはできないということを改めて痛感する出来事がありました。

 

 それは、私だけに限らず、すべての人が大切な出逢いの相手との関係で感じる可能性があることです。例えば、相手が辛い病気に罹ってしまった、失業してしまった、家族を失くして(亡くして)しまった・・・などの、すぐには受け入れがたい事態はほぼ突然に知らされます。

 

私の場合は弟妹でした。既にそれぞれの家族ができ、離れた場所で独立した暮らしをしています。自分ができることの少なさに呆然としました。物理的にも離れ、時間も取れず、必要な時にそばに駆けつけることもできない現実を思い知らされました。経済的なサポートにも限界があります。私には私の人生があり、それを大きく変更する決断は残念ながら私にはできません。どんなに仲が良い間柄でも、です。

 

ただ、未成年の子どもを育てている親であれば、引っ越しも転職も厭わないで、自分の人生の優先順位を子ども中心の暮らしに変えるという決断をされることはあるでしょう。それだけ親子の関係性は濃いものがあります。それゆえに、親子の関係性に苦しむ人々も決して少なくありません。

 

家庭教育学級で保護者の方にお話しさせていただく機会があります。「家の外では、ほかの子どもたちに優しくできるのに、家の中では我が子に対してカーっとなって怒ったり、落ち込んだり、感情的になってしまいませんか?」と投げかけると、うんうん、と頷かれる方が圧倒的です。自分の分身のような存在には「そとづら」対応はできないのです。感情のコントロール機能が緩んでしまう「うちづら」で、家族に接してしまいます。自分の分身には、自他の境界線が曖昧になります。自分の所有物扱いをしがちです。

 

しかし、子育ては、子どもが自分の思い通りにならない、別の人格を持った存在であることを痛感する長い修行の旅です。その旅の途中で、子どもから「親として成長してね」という宿題を出されます。親が「子どもが問題行動を起こしている」と感じているときこそ、この宿題を解くチャンスなのですが、たやすくそのように思えないのも当然です。この宿題は、時に、自分の子ども時代にまでさかのぼり、自分の痛みと向き合う必要があります。自分が親にされて嫌だったことを我慢したまま封じ込めている感情のしこりに辿り着き、解放・昇華させることで、その長年の呪縛から自由になることもあります。

 

とはいえ、その渦中は実に苦しい。「なぜ自分がこんな目に?」、突きつけられた困難を生きることは、実に実に苦しい。弱い自分を抱えつつ苦しい日々を生きてこそ、その渦中で不要なものを剝がされてこそ、どんなに愛おしい存在でも別個の人生だと諦めてこそ、他者の評価優先でなく、本来の自分自身を生きてこそ、内側から命は輝くのでしょう。その渦中は気づかないけれど、当時を振り返れば、そんな感慨を抱きます。

 

『支配や服従の関係性から解放され、私は私の人生を、あなたはあなたの人生を主体として生きる。』

 

今、自分にも大事な相手にも送りたい言葉を綴ってみました、

アバンセ初代館長の船橋邦子さんと対談しました。

画像をクリックするとYou Tubeに接続します。

 

 
 アバンセ館長 田口香津子    プロフィール


 アバンセ館長

   佐賀女子短期大学 学長 (2018.4-2022.3)

 認定NPO法人 被害者支援ネットワーク佐賀VOISS理事長

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