アバンセ館長ルーム

 

アバンセは、幸せに生きたい県民の応援団です。男女共同参画社会づくりの促進の拠点であり、パートナー間などあらゆる暴力の撤廃の拠点、生涯学習の振興の拠点でもあります。

    館長の仕事は、そんな多様なアバンセの魅力を発信すること。その魅力とは、人との出会いで生まれるものです。この館長ルームでは、アバンセの職員紹介とともに、その折々の出来事を通して感じたことを綴っていきます。ときどき、ふっと道草したくなるような、自在なお気持ちで、館長ルームにお立ち寄りください。

 一緒に働いてもらっている職員を私が描いた似顔絵とともに少しずつ紹介いたします。

  職員紹介ページ(第一弾)   職員紹介ページ(第二弾)

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最新のアバンセ館長コラム第28号  男の生きづらさを辿る

 さて、今回、「男の生きづらさを辿る」と言うタイトルにしましたが、ここで話そうとしている「男」の定義は、6月号のコラムの続きでいえば、からだの性とこころの性が一致しているシスジェンダーで、男らしさの性表現を選んでいる男性を指すことになります。おそらく、世の中で一番人数の多い男性の分類枠と推測しています。

このテーマを選んだのは、男性としてのジェンダーを生きている多数派にも、結構な生きづらさがまとわりついていることを再確認したいからです。

『出生時に「男」に振り分けられ、家の後継ぎ、あるいは老後の親の経済的後ろ盾と期待される。学業、スポーツ、学歴、職業、経済力、社会的地位など競争社会において他者よりも優れていることを求められる。(たとえ途中で競争に敗れたとしても、弱音を吐かず、悔しさをばねに努力を続け、再起を図る姿勢が求められる。)その環境に疑問を持たず、男らしさの期待に応えるレールに乗っていけば勝ち組とされ、有能感を持つことになる。競争に勝ち続けてきた有能感は、強者の論理やエリート意識を強め、ややもすれば、競争に敗れた人たちへの共感性を持つことを妨げることになりかねない。気づかぬうちに、ハラスメント等の加害者性を帯びやすくなる。』

言い方を変えれば、優位性のレールから逸脱することへの恐怖、負け組と周囲から見下されてしまうことへのプレッシャー、優劣を序列づけられる運命と密かに戦い続けるのが、「男らしくあれ」と言われる影の部分ではないでしょうか。優劣の序列がある以上、すべての男性が勝者にはなれない、必ず一定の層の「敗者」を生み出すしくみが再生産されているわけです。「こんな成績じゃ駄目だ。」「いつまでも定職に就かないのは、一人前じゃないぞ。」等と言われ、男であることで、周囲からさらにハードルを上げられ、人知れず苦悩している姿。その結果として、心身の不調や自殺率の高さ、家庭内孤立など、「男」が抱えてしまう闇は、看過できないものがあります。本来、「男らしさ」の強い縛りがなければ、ここまで生きづらさを抱える必要はなかったのかもしれません。

もうお分かりの通り「男性に生まれてよかった。女性じゃなくてよかった」という結論には安易に結びつかないのです。必要なことは、男女間の力関係の逆転ではありません。性別による固定的な力関係の構図自体を解消していくことです。

その人の個性を表す多くの特性の一つが、その人の「振り分けられた性」にすぎません。その「振り分けられた性」が、生き方を強制、制限してしまう社会に、ジェンダーの在り方に関わらず、私たちすべてが当事者として「NO」を突きつけていきましょう。

「あなたは男じゃないのに、そう言っていいのか?」というご批判もあるかもしれません。ひとりひとりが自分らしく生きていける男女共同参画社会。その社会の実現のためには、自分の権利だけの主張では十分ではありません。他者への共感性や想像力はとても必要だと思っています。私の人生も、あなたの人生と同様大事だから!

アバンセ初代館長の船橋邦子さんと対談しました。

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 アバンセ館長 田口香津子    プロフィール


 アバンセ館長

   佐賀女子短期大学 学長 (2018.4-2022.3)

 認定NPO法人 被害者支援ネットワーク佐賀VOISS理事長

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