アバンセ館長ルーム
アバンセは、幸せに生きたい県民の応援団です。男女共同参画社会づくりの促進の拠点であり、パートナー間などあらゆる暴力の撤廃の拠点、生涯学習の振興の拠点でもあります。
館長の仕事は、そんな多様なアバンセの魅力を発信すること。その魅力とは、人との出会いで生まれるものです。この館長ルームでは、アバンセの職員紹介とともに、その折々の出来事を通して感じたことを綴っていきます。ときどき、ふっと道草したくなるような、自在なお気持ちで、館長ルームにお立ち寄りください。
最新のアバンセ館長コラム
第41号 令和7年9月「多様性と包容力 ~相手を受けいれるということ~」
「リーダーシップとは何か」を考え続けています。「リーダーシップがある」というのは、“ルールと序列に従って整然と動くことを組織に明言すること”かもしれません。リーダーの思うように動く人を評価し、そうでない人は排斥するという某国の大統領らに倣えば、単純明快です。その方が、表向き、組織はスムーズに動き、パフォーマンスは進むのでしょう。
ところが、そうしたくないという、変なこだわりがあるのです。暴力とは何か、対等性とは何かを学んできた結果、自分の思うとおりに人を動かそうとする支配欲に絡み取られないようにしたいと自制の気持ちが強く働いてしまいます。時間がかかっても、自分の意見とは異なっても、相手の意向を引き出しながら、協議しつつ、民主的に運営することを念頭に置こうとしています。ただ、多様性と包容力を目指そうとすると、即断、決断の力は鈍く感じられます。
これは、従来のリーダーシップとは異なるアプローチでしょうし、成果がすぐに出るわけでもありません。今も模索中です。ただ、リーダーの定義を「自分の思うように人を動かす力を持った人」と多くの人がみなす限り、リーダーの独善性はセーブできず、リーダーが許容できない存在は否定され、人々の多様性は保障されなくなってしまう懸念があります。
私は、自由でありたい。選択肢は自分が持ちたいです。特定の人から強制された社会には住みたくありません。手前勝手な個人主義とは異なります。公共への責任も担う必要があります。誰もが幸せに生きるための基盤作り=男女共同参画社会&生涯学習=人権尊重がアバンセの目指すところと思う故に、余計に強く思います。
私は、若いころから組織の中で、理不尽を感じたときは、立場の上の方々にも主張し、意見を闘わすこと、抗うことを躊躇しませんでした。それでも、意見が聴き入られず、悔しかった記憶がいくつもあります。立場が上になるにつれて、ミイラ取りがミイラになりたくない、自分は担当者の意見を聞いたうえでフェアに判断しようと思ってきたのです。が、その一方で、狭い範囲で考えず、全体を俯瞰して優先順位を判断しなくてはならなくなり、局所的な意見は押し返すことも経験しました。
生きている限り、心は揺れ、葛藤はなくなりませんね。願わくば、相手のことを大事にすること、優しいことが弱点にならないように。相手を受け入れることが、相手から付け込まれることにならないように。
「暴力」はあらゆるところで目を出す隙を窺っています。 個人同士は、常に利害の不一致がつきまとってきます。暴力を受けると、反撃したくなります。相手から反撃されたら、報復は正当化されます。その悪循環の罠に陥りたくありません。
自分の人権を傷つけられたときに、そのまま泣き寝入りせず、相手を不当に傷つけず、自分の意志や態度を表明すること。アバンセのDV等暴力予防教育事業でも、その考え方を子供たちに広く伝えてきました。そして、「私自身はどうか」、を、これからも自分に問い続けたいです。

アバンセ館長 田口香津子 プロフィール
アバンセ館長
佐賀女子短期大学 学長 (2018.4-2022.3)
認定NPO法人 被害者支援ネットワーク佐賀VOISS理事長