アバンセ館長ルーム
アバンセは、幸せに生きたい県民の応援団です。男女共同参画社会づくりの促進の拠点であり、パートナー間などあらゆる暴力の撤廃の拠点、生涯学習の振興の拠点でもあります。
館長の仕事は、そんな多様なアバンセの魅力を発信すること。その魅力とは、人との出会いで生まれるものです。この館長ルームでは、アバンセの職員紹介とともに、その折々の出来事を通して感じたことを綴っていきます。ときどき、ふっと道草したくなるような、自在なお気持ちで、館長ルームにお立ち寄りください。
最新のアバンセ館長コラム
第38号 令和7年6月「弾むボール 凹むボール」
先日、参加したオンライン研修を契機に、「ジェンダー平等のまちをつくる~東京国立市の挑戦~(太田美幸編)」と言う本の存在を知り、国立市の男女共同参画センター「パラソル」の活動を知りました。
研修で紹介された、国際女性デー・ミモザウィークくにたち2025のパネルに書かれていた言葉が心に沁みて忘れられません。
すべて大事な文章ですが、一部抜粋して紹介します。
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わたしのからだは わたしのものの一歩先へ
(前略)
ひとつとして同じではない身体を抱え、異なる人生を生きている以上、誰にとっても当てはまる「正解」はありません。生や生殖に関する決断には、喜びだけでなく、迷いや後悔、痛みも伴います。「選んだ」と思っていたことが、「選ばざるを得なかった/選ばされた」ことに気づくこともあります。
選べなかったことを選んでみる。
選ぶことを保留する自分を許す。
選んだことを手放す。
わたしのために、私が私の幸福を選ぶこと。
それはいつからでも始められます。いっしょにやっていきましょう。
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文章は、スタッフで話し合う過程があったと聞きました。
あぁ、どんな状況を生きる人に対しても「それでいいですよ」と否定しない、
良い悪いと評価しない、その姿勢に感動しました。
選んだつもりが選ばされていただけに過ぎないと気づくこともある、
選べないまま過ごすこともある、
選んで後悔することもある、
それに過ちや失敗というレッテルを貼らなくていいのだなぁ、安心できるなぁと思えました。
私自身のことですが、朝起きた時「また今日一日を生きられるのが幸い」と思い、誰に向けてではなく「ありがとう」と声を出すようになりました。不安の裏返しかもしれません。明るく元気いっぱい、周りにプラスの影響を与えられる人でありたい願いを持っています。ですが、そんな光の道だけを歩いてきたわけではありません。自分自身のことだけでなく、自分にとって大切な関係性を尊重するからこそすぐには選べないこと、避けることのできない息の詰まるような経験も当然あります。ただ、その経験をどう受けとめるか、その意味づけは自分次第で変えられると思っています。
心をボールに例えてみると、空気いっぱいの弾んだボールの時は自信とやる気に満ちた言動をします。傷がついたり疲弊したりして、空気(エネルギー)が抜けて凹んだボールの時はじっとその場から動けないかもしれません。ただ、必ずしも弾むボールの状態が最善とは限らないような気がします。凹んだボールには、相手のそばで気持ちに寄り添える窪みや余白が生まれるかもしれません。迷いや後悔や痛みも生きているからこそ感じるもの。
「そのまんまのあなたでいいよ」を掌に載せたようなパラソルのパネルの言葉には、生身の人に届く体温がありました。

アバンセ館長 田口香津子 プロフィール
アバンセ館長
佐賀女子短期大学 学長 (2018.4-2022.3)
認定NPO法人 被害者支援ネットワーク佐賀VOISS理事長