アバンセ館長ルーム
アバンセは、幸せに生きたい県民の応援団です。男女共同参画社会づくりの促進の拠点であり、パートナー間などあらゆる暴力の撤廃の拠点、生涯学習の振興の拠点でもあります。
館長の仕事は、そんな多様なアバンセの魅力を発信すること。その魅力とは、人との出会いで生まれるものです。この館長ルームでは、アバンセの職員紹介とともに、その折々の出来事を通して感じたことを綴っていきます。ときどき、ふっと道草したくなるような、自在なお気持ちで、館長ルームにお立ち寄りください。
最新のアバンセ館長コラム
第44号 令和7年12月「老害 という言葉について」
「今頃の若いものときたら。」「あなたたちは新人類、行動が理解できない。」 と言われていた十代の頃の私は、ああ、こんなセリフを言う大人には決してならないぞと思っていました。しかし、実際、社会経験を積み、若い世代と接して、内心ジェネレーションギャップを感じることがいくつもありました。ただ、直接、苦言を呈することは控えていました。その言葉を発して状況がプラスに働くとは思えない、では、代わりにどういう言い方をすれば伝わるのかを考えてきた気がします。そのような判断でジェネレーションギャップ解消の効果があったかは疑問です。世代間の壁があるな、簡単に解消できないものだろうな、どの時代にも繰り返されてきたことだろうな、という受け止めができるようになっただけかもしれません。
そしてあっという間に、高齢者65歳の節目を超えて生きている私。これからは、「老害だ」という言われる対象になるのでしょう。すでに陰でささやかれている可能性だってありますね。周囲から老害と言われる前に自ら引き際を決められるようになりたいと秘かに願ってきましたし、「それがプライドだよね」と言いあう同年齢も結構います。ところが、「私は、周囲からうるさい、老害だと言われる存在をめざす。耳の痛い話をして警告する役割を生きる。」と意気込む声に触れました。みっともない老害の印象が、かっこいい響きに変わりました。なるほど、そういう考え方もあるか、目からうろこでもありました。
こう振り返ると、個人を表す一つの属性に過ぎない「年齢」にも、差別意識が潜んでいますね。「若者は、高齢者は、」という括りで物事を断定的に語らない、ステレオタイプの見方に終始しないことが、人権意識につながるのでしょうね。実際、80代でも矍鑠として現役で働いている方もいます。体力・気力が充実しているのに、高齢者というだけで、もう仕事するチャンスがないと可能性を閉ざされたら、なんだかもったいないことです。年齢で一律に線を引くのは合理的ではないですね。
先日受けた人権研修会で講師の方が、「日本人は、男性は、女性は、と主語を大きくすると誤解が生じ、実相が見えなくなる」という趣旨を言われ、はっとしました。「主語を個別具体的にして発言すること」を大事にしていこうという気づきをもらいました。
私は、今後、いろんな機能が衰えたとしても、それを受け入れつつ、尊厳を失わず、「老徳」になれるよう精進していきたいですが、はてさて、どうなることやらです(笑)。
アバンセ館長 田口香津子 プロフィール
アバンセ館長
佐賀女子短期大学 学長 (2018.4-2022.3)
認定NPO法人 被害者支援ネットワーク佐賀VOISS理事長



















