アバンセ館長コラム第7号(令和4年10月)
第7号 言葉の力(令和4年10月)
映像や舞台の方が、活字や音声だけより受け取る情報量は圧倒的に多く、皆さんも感動体験が沢山おありでしょう。しかし、人間は不思議ですね。本を読む、あるいはラジオ番組を聴くだけで(つまり、言葉を見て、音にするだけで)、過去の記憶や情動が揺り動かされ、未知の世界への想像力を掻き立てられることが十分起こります。
「言い仰せて何かある(すべてを描き切ってどうするのだ、それは野暮というものだ)」という松尾芭蕉の言葉を思い起こしました。言霊という言葉があるように、言葉には、力があります。言葉は、言の刃とも言え、人の心を傷つける道具になりうるからこそ、余計に大事にしたいものです。
私は、「SOGI」という言葉に出会いました。その言葉を生み、広げてきた人たちと心がつながりたいと願い、詩に表現してみました。(同人誌「扉」に掲載)
「まことにSOGIですが」
SOGI は 〜 そじ 〜 粗辞 〜 粗末な言葉 〜 では決してない
それよりも 素地 ~ その人の本質 〜 と言っていい
性的指向 〜 誰を愛するか 〜
性自認 〜 自分は何者か 〜
女と男 〜 ジェンダー 〜 の貧しい分断を壊し
LGBTQ+ 〜 性的少数派 〜 の囲い込みを外す
わたしとあなたの はだかの心だ
人間ひとりひとりの 体温を持った豊かな物語
私は 誰を愛するのか愛さないのか
相手の 何を愛そうとしているのか
私は 女か男かそのどちらでもない者か
何を持って 自分の性を決めるのか
SOGI
誰からも傷つけられない尊厳の話だ

アバンセ館長 田口香津子 プロフィール
アバンセ館長
佐賀女子短期大学 学長 (2018.4-2022.3)
認定NPO法人 被害者支援ネットワーク佐賀VOISS理事長