令和7年度生涯学習関係職員研修(基礎編2)報告

佐賀県立生涯学習センターでは、生涯学習・社会教育関係職員を対象に、必要な知識や実践力を身につける「生涯学習関係職員研修」を行っています。

今年度は「社会教育の風向き ~人と人をつなぐ学びのこれから~」をテーマに、年間で全6回(基礎編、ステップアップ編、地域支援編 各2回)の講座を実施します。その様子をレポートします。


基礎編2 「楽しさ広がる場のつくり方 -地域で学び地域を育むために-」のチラシはこちら  (3495KB; PDFファイル) 

楽しさ広がる場のつくり方  ‐地域で学び地域を育むために‐

令和7年9月16日(火)1330分~1630

 「楽しい場」という言葉に、どんな“場”を想像されるでしょうか。生涯学習に関わる職員は、講座やイベントなどの企画をする際「どうやったら楽しくなるかな?」「また来たいと思ってもらうには?」としばしば思い悩むこともあるのではないでしょうか。

 基礎編の2回目となる今回の講座では、そもそも「楽しい学びとはなんだろう?」「場とはどのようにつくるのだろう?」という問いを念頭に、県内で自身の「楽しい」を起点に様々な地域活動を展開する3人の登壇者にヒントをもらいます。


講師は西九州大学副学長の上野景三さんです。

1部:私たちの「楽しい」から始まる学びの場

場に必要な要素とは?

はじめに、上野さんがタイトルの「楽しさ広がる場のつくり方」を文節に分けて紐解き、その本質を問い直されました。

なかでも、本講座の根幹をなす考え方として語られたのが、「場」を英語の2つの概念「スペース(Space)」「プレイス(Place)」に分ける視点です。

 

上野さんは、「スペースとは、単に物理的に空いている空間のこと」だとし、一方で、「プレイスとは、そこに人の思いや関係性が通った『居場所』のこと」と示されました。地理学の知見を引用しながら「企画する側の私たちが、そこをただの空き部屋(スペース)として貸し出すのか、それとも誰かにとって意味のある居場所(プレイス)にしていこうとしているのか、その意図が問われている」と、参加者に投げかけました。

また上野さんは、「今日聞いた話をそのままやるのではなく、自分の現場に合わせて作り替えることが何より大事だ」と説かれました。

例えば、自分の公民館に明日来るのは「どんな子どもたち」で、「どんな高齢者」なのか。その人たちの具体的な顔を思い浮かべながら、あともう一工夫、二工夫を自分なりに加えてみること。本物の楽しさを生むのは「他の誰かではなく、その人たちと対面している自分にしかできない工夫」なのだと語られました。

「プレイス」をつくる3人の実践

 1人目は「多良岳を愛する会」の代表池田清哉さんです。

 

「マウンテン池田」という愛称で親しまれる池田さん。

はじめに、場の緊張をほぐすために、みんなで太良を代表する「カニ」のポーズで体操です。

池田さんは、登山という厳しい環境を、仲間と笑い合う「プレイス」に変える工夫を語りました。

「地域のOBさんという大先輩の力を借りない手はない」と、植物に詳しい先輩にSNSで写真を送って教えてもらうなど、多世代に参加してもらうことで、かつては5人だった仲間を100人にまで広げてきました。

「リーダーとして気遣いはするが、決して強制はしない。居心地の良い場所にすることが役目」という池田さんの言葉に、受講者は深く頷いていました。


2人目は鹿島高校教諭の芝原正章さんです。

 

芝原さんは「楽しい地域と学校のつなぎ手でありたい」という信念のもと、高校生が地域で活躍する場を創出されています。学校から地域へ高校生を連れ出し、地域の人との対話を通して「ありがとう」と言い合える関係性を築くことで、地域そのものを生徒たちの成長の場へと変えていかれました。生徒たちの自己肯定感高まっていく姿は、教育と地域が手を携える理想的な形を示していました。

3人目は春日北公民館館長の髙山昭彦さんです。

職員同士のアイデア会議から生まれた「水曜午後のティータイム」の事例を紹介されました。

あえて「昭和歌謡」や「方言」など特定の世代に刺さるテーマを設定することで、「久しぶりに人と喋った」と涙を流すほどの深い交流が生まれているそうです。

髙山さんが強調された「自分たちが楽しむという遊び心が、人を惹きつける磁石になる」という視点は大きなヒントとなりました。


2部:地域で学び地域を育むために(ワークショップ)

後半のグループワークでは、受講者同士の距離をぐっと近く感じてもらうために、えんたくんを使用しました。

 

今日の感想や「楽しい場にするためには何が必要か」という問いに対して各グループで熱い対話が行われました。「初めて来た人が壁を感じないような、こまめな声かけ」や「相手を尊重する自慢話の場」など、スペースをプレイスに磨き上げるための具体的なアイデアが溢れました。

たくさんのアイデアで彩られたえんたくんを展示し、みんなで見て回りました。

場づくりはいつから始まるのか?

 最後に、上野さんから「いつから場づくりというのは始まるのでしょうか」という問いが投げかけられました。

ただ場を提供するだけではなく、そこに来た人同士の関係性を育むためにどんな工夫ができるのかという視点が語られました。

上野さんは、「楽しさは一過性のものではなく、参加者の心に残る関係として広がっていくことが大切だ」と話されました。支援の場が一度きりの楽しい時間で終わるのではなく、参加者同士がつながり、互いに支え合う関係へとつながっていくこと。それこそが、地域での学びの場が目指す「楽しさが広がる場」の本質なのだということを改めて感じる時間となりました。

参加者の声 

アンケートより(一部抜粋)

  • 自分の知らない世界を広げれました。楽しさってなんだろう、広げるってどうしたらいいのだろうと、たくさん考える機会ができたと思います。
  • ”楽しさ”を忘れていました。それに気づける研修でした。
  • 利用者の方へ何ができるか色々ヒントをいただきました。
  • 事務員さんともアイデアを出し合おうと思いました。大きなイベントばかりしなくても小さなこともたくさんやっていこう。参加ではなく、参画にもっていこう。
  • スペースをプレイスにしていくアイディアを出していきたい。
  • あきらめようと思っていたことを、もう少し頑張ってみようと思いました!

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