令和7年度 家庭教育支援者養成講座(基礎講座)第3回報告
共に生きる 共にゆれる
基礎講座は、家庭教育・子育て支援に関わる活動が3年以内の方、また、これから活動したいと考えている方を対象とした連続3回講座です。今年度は、家族のかたちも生き方も、多様化する社会の中で支援者としてのあり方を実践者の言葉から考えます。
家庭教育支援者養成講座(基礎講座)チラシはこちら (2041KB; PDFファイル)
第3回 ただ、ここにいるということ‐対話を通して考える‐
令和7年11月25日(火)13時30分~16時30分
いよいよ講座最終回。
講師の小林さんが、これまで実践してきた「ただ、ここにいるということ」に焦点を当てました。
この日は、小林さんと共に、よりみちステーションの運営に関わる古賀裕美さんと、武富むつみさんもお迎えして、「ただ、ここにいること」の中にある悩みや葛藤、それでも「居続けること」を大切にされる3人の想いから学びました。
対話を通して学ぶ
この日は、会場に机がありません。代わりに用意したのは「えんたくん」と呼ばれる段ボール製の円盤です。
参加者の皆さんがそれを膝に置き、互いを近くに感じ、顔を見合わせながら、心に浮かんだ言葉を直接書き込んでいく対話から始まりました。
「さんま(三間)」を失った子どもたちの放課後
講師の小林さんは、ご自身の3人の子育てを振り返りながら、現代の子どもたちが置かれた「窮屈さ」について語られました。
「今の時代、子どもたちには『時間・空間・仲間』という3つの間(さんま)がないと言われて久しいけれど、本当にそうなんです。学校から帰れば宿題、そして習い事。大人が良かれと思って用意した予定で、隙間が埋め尽くされている。でもね、石ころを拾ったり、虫を眺めたり……大人から見れば『無駄』に見えるその隙間にこそ、子どもが自分で育つ力が宿っているんです」と話されました。
その「失われた放課後」を取り戻したい。そんな想いで始めたのが、よりみちステーションの活動でした。
信頼から生まれる“居場所”
トークセッションでは、スタッフの古賀裕美さん(左)と武富むつみさんも加わり、現場の「リアル」が明かされました。
「最初はわが子を連れて行くだけで精一杯だった」と語る古賀さん。
我が子が自分のタイミングで好きなように過ごすことを、周囲が「それでいいよ」と受け入れてくれた体験。
それが「親である自分にとっても居場所になっていった」と古賀さんは振り返ります。
武富さんは、活動の中での「困った出来事」を明かしつつ、”困り感を感じた子ども”を置き去りにしなかった過去を振り返りました。
当時を振り返りつつ、3人で顔を見合わせながら「大人が“困った出来事”が起こってしまうような環境を作っていなかったかな、と考えるんです。環境を整えつつ、でもその子の気持ちも想像しながら、根気強く向き合っていく。いいことばかりじゃないけれど、だからこそ続けてこられた気がします」と武富さんは丁寧に言葉を紡ぎました。
理想は「暇そうな大人」
後半のワークショップでは「“ただ、そこにいる”ことがどんなことだろう?自分はどんな支援者でありたいと思ったか」をテーマに対話をしました。
参加者の皆さんから出たキーワードが印象的でした。
「暇そうな大人になりたい」 。
地域の見守りをお散歩がてら毎日続けている「近所のおじちゃん」のエピソードに、会場中が頷きました。
おじちゃんはいつも、「俺は散歩しよるだけたい」と笑い、見守りバッジすら断る。そんな、ジャッジも評価もしない“暇そうな大人”がそこにいるだけで、子どもたちはどれほど安心して寄り添えることでしょう。
「居場所とは、自分が自分らしくいられる場所。そして、ただそこにいるとは、相手を待つこと、そして自分自身の存在を消すのではなく、一人の人間としてそこに在ること」と語る受講者からの深い気づきが、えんたくんの上に色とりどりのマジックで描かれていきました。
ウェルビーイングの本質
講座の最後には、全日程出席された受講者の方に修了証の交付が田口館長より行われました。
最後のあいさつの冒頭、館長が「最近、身近な大切な人の存在を通して、改めて気づかされたことがあるんです」と静かに切り出され、ご自身の近況に触れながら、心震えるようなお話が始まりました。
「何ができるとか、何かを成し遂げるとか、そんなことは関係ない。ただ今ここに、その人が生きていてくれる。それだけで、もう十分なんだな、と…」。その言葉には、支援という枠を超えた、深い慈しみが込められていました。
「『生まれてきてくれて、ありがとう』そんな、赤ちゃんを抱いた時のような真っ直ぐな心持ちで、目の前の人の存在に触れていたい。今、皆さんとこうして心を通わせているこの時間こそが、私にとっても大切な居場所になっています」と温かい言葉が向けられました。
それは、この3日間で私たちが学んできた「ウェルビーイング」の答え、そのものだったように感じます。
最後に小林さんが「どうぞ、それぞれの現場で『居場所となる人』になってください。お元気で、これからも一緒にあり続けましょう」 とエールを送り、3日間の学びは温かな拍手と共に幕を閉じました。
「うーん」と悩みながら、共に揺れる。そんな柔らかな支援の輪が、佐賀のあちこちに広がっていく未来を信じています。
参加者の声
アンケートより(一部抜粋)
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居場所みたいな人がたくさんいてくれることがとっても大事だよなの共感。たくさんありました。
- 「ただ、ここにいる」という簡単そうだけど、とても難しい事をこれからの活動を通して実現していきたいと思います。
- 居場所にとって大切な事。本当に寄り添うとは何なのか?皆さんで共有することにより、自分の決まった考えがやわらかくなりました。
- 言ってしまいがちだけど、待つことも必要だし、ルールとかはもたないそのきっかけをつくる→居場所につながる。「ただお菓子を食べて一緒に話す」とおっしゃっていた。よりみちの方の言葉が本当に刺さりました。それが子どもたちにとってより所となり、居場所につながっているのだと思います。
- 言葉にならないキモチがあること、あっても良いことが身に染みた感じでした。
- 今まで自分の「居場所」を考えたことがなかった。家以外で。子どもだけではなく、大人もそういう場所があるって素敵だなと感じた。


















