令和7年度 家庭教育支援者養成講座(基礎講座)第2回報告
共に生きる 共にゆれる
基礎講座は、家庭教育・子育て支援に関わる活動が3年以内の方、また、これから活動したいと考えている方を対象とした連続3回講座です。今年度は、家族のかたちも生き方も、多様化する社会の中で支援者としてのあり方を実践者の言葉から考えます。
家庭教育支援者養成講座(基礎講座)チラシはこちら (2041KB; PDFファイル)
第2回 子どもと家族のウェルビーイングと響き合う
令和7年10月29日(水)13時30分~16時30分
不登校やひきこもり、自殺者の増加…近年、子どもを取り巻く環境は加速度的に変化し、課題は社会の多様化とともに増え続けています。課題の本質を子どもだけに見るのではなく、社会全体としてみる必要性も指摘されています。
講座2日目となる今回は、公開講座として開催しました。
メイン講師の小林由枝さん、小児科医の山口有紗さんをお迎えし「子どもと家族のウェルビーイングと響き合う」と題したお話とともに、子どもを包む社会の一員としての、私たちの考え方、関わり方を学びました。
はじめに、4〜5人のグループに分かれ、リラックスした雰囲気で自己紹介や「ウェルビーイングとはどんな状態だろう?」ということをみんなで考える対話の時間を持ちました。
子どもの育ちを支える「土台」を知る
ゲスト講師は、小児科医として、日々子どもの心の声に耳を傾け、その声を多くの人に届ける活動をされている山口有紗さんです。
お話のスタートは、脳科学の視点から。乳幼児期の脳が驚異的に発達する「ゴールデンタイム」において、周囲の大人がどう関わるかが、その後の人生の土台になるという本質的なお話でした。
山口さんは、ウェルビーイングという言葉を「単なるハッピーな状態」とは定義しません。それは良い時も悪い時も、自分にとって「ちょうどいいところに戻ってこられる」という揺らぎのプロセスであり、その中心にあるのは他者への信頼感なのだと教えてくださいました。
社会全体で包みこむ「玉ねぎの層」
子どもの状態を理解するための視点として示されたのが、まるで“玉ねぎの層”のように密接につながるエコロジカルモデル(生態学的モデル)です。
山口さんは「子どもの育ちは決して家族だけの問題ではなく、学校、地域、社会、さらには気候変動に至るまで、玉ねぎの層のように重なり合う、あらゆる環境が影響し合って作られている、社会全体のことなのです」と示されました。
「声をきく」ことの本当の意味
後半は、トラウマインフォームドケア(トラウマへの理解に基づいたケア)について深めました。子どもたちの暴言や攻撃、あるいは固まってしまうといった、一見「問題」に見える行動。山口さんはそれを、過酷な環境を生き抜くために子どもが精一杯とってきた「生存戦略(サバイバル・スキル)かもしれない」と優しい眼差しで捉え直します。
「子どもたちは犠牲者である前に、勇者なんです」 という山口さんの言葉に、会場の空気が一層深まったのが印象的でした。
最近よく耳にする「子どもの声をきく」という言葉。山口さんは、それが単なるアンケートや意見聴取ではなく、日常の些細なサインに目を向けることだと強調されました。
「大人がいいアドバイスをくれることより、遮らずに聞いてくれること、一緒に遊んでくれること。その余白の中にこそ、子どもは安心を見つけます」と話されました。
小林さんとの対談セッションでは、小林さんも日々の活動を振り返りながら、大人が解決を急がず、『うーん』と一緒に悩んだり揺れたりすることの尊さについて語り合い、参加者の皆さんも深く頷いていました。
支援者自身を慈しむために
最後に、日々子どもや家族に寄り添う受講者の皆さんへ、山口さんから温かなエールが送られました。
「共感はエネルギーを使います。誰かを支える人は、自分自身も傷つくことがある。それを『自己責任』にせず、組織や仲間でケアし合い、自分の中の『かつての子ども』の声も大切にしてください」とやわらかい笑顔を向けられました。
山口さんと小林さん、お二人の温かなチームワークによって、「知識」を学ぶだけでなく「安心」を体感する時間となった今回の講座。 佐賀の子どもたちが、そして大人たちも、共に揺れながら健やかに生きていける地域を目指して、この学びをそれぞれの現場へ持ち帰る一日となりました。
参加者の声
アンケートより(一部抜粋)
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行動には理由があり、そのことに対して敬意を払う。「勇者」という表現が印象に残りました。
- 日常のできない自分を知っていることが大切である。
- 「共に生きる、共にゆれる」というのがどういう在り方なのか。すごく伝わる内容でした。ゆらぎながら、自分の真ん中に戻ってこられたらいいし、そういう支援がしたいと感じました。
- 子どもたちはもちろん、自分も大切にしようと思える場に感謝です。医学的なエビデンスとともに大切なことも聴けてよかった。
- 強くなくてもいいと思える、その在り方が素敵だなと思いました。
- 向き合える時間、関係性を築く過程をしっかりと…と思いがちだけど、大切にしたいと思う気持ちの重要性の方が大事という言葉に気持ちが軽くなりました。
- そのとき最適だった「適応の努力」の延長っていう言葉が印象に残りました。子どもたちは力を持っているし、大人もゆれている存在。共に生きて、共にゆらいで育ち合っていきたいと思いました。


















