令和6年度生涯学習関係職員実践講座(地域支援編1)報告
佐賀県立生涯学習センターでは、生涯学習・社会教育関係職員を対象に、必要な知識や実践力を身につける「生涯学習関係職員実践講座」を行っています。今年度は「学び直しと意識のアップデート」のテーマのもと、年間で全6回(基礎編、ステップアップ編、地域支援編 各2回)の講座を実施します。
地域支援編1 「地域課題を楽しい取組みに変えるコツ ~KIITO、プラス・アーツの実践から~」のチラシはこちら (1401KB; PDFファイル)
地域課題を楽しい取組みに変えるコツ~KIITO、プラス・アーツの実践から~
令和6年12月18日(水)13時30分~16時30分
今回は、地域課題解決に向けたプログラムづくりに必要な視点や仕掛けを学ぼうと、講師に永田 宏和さん(株式会社iop都市文化創造研究所 代表取締役、NPO法人プラス・アーツ 理事長、デザイン・クリエイティブセンター神戸【KIITO】センター長)をお迎えし、講座を開催しました。
1部:地域豊穣化と風、水、土、そして種の話 ~「不完全プランニング」と「+クリエイティブ」~
さまざまな社会課題解決に向けて、ユニークで楽しい取組みを行われている永田さん。その魅力的なプログラムはどうやってつくられてきたのか、まずは大事なメソッド、考え方からお話しいただきました。
1.俯瞰って大事
1つめは俯瞰の大切さについてです。俯瞰には環境的俯瞰と時間的俯瞰の2つがあります。
プログラムをつくるとき、ついつい私たちはターゲットとなる対象者にフォーカスして考えがちですが、俯瞰して見てみると、地域にはもっと沢山の関係者がいることに気付くことができます。「一緒に物事に取り組んでくれるパートナー、手伝ってくれる人を見落としていないか、ぜひ引いて見てください」と永田さん。これが環境的俯瞰です。
そして時間的俯瞰です。これは、例えばイベントや講座を行う場合、その当日をゴールとせず、その前後の活動にも目を向けるということです。「例えば、“当日”が終わった後、関わった人たちが地域で活躍できるようになったり、他の人も巻き込んで取組みが広がったりしたらいいですよね。そのような“後ろ”を意識して“前”をつくると、活動がより豊かな取組みとなります」と話されました。
2.地域豊穣化における「風」「水」「土」そして、「種」の話
2つめは地域の人たちが仲良く生き生きと暮らす元気なまちを目指す”地域豊穣化”についてです。これには3つの人が必要となります。地域に暮らす「土の人」、そこに寄り添い支援する「水の人」、そして「種」を運んでくる「風の人」です。ここで言う「種」は、地域で行われている行事や取組みを指します。例えば防災訓練や餅つき、運動会などです。永田さんは、このように「風」「水」「土」「種」に例え「昔は土が豊かで、どんな地域行事(種)を植えてもすくすく育っていましたが、地域の繋がりが薄れてきた今は土が乾いた状態で、種が育ち難くなっています。だからといって種を植えないと益々土は枯れる一方です」と地域の現状を話されました。
3.「不完全プランニング」と「+クリエイティブ」
そこで、今必要とされるのが、枯れた土でもしっかり芽を出す強い「種」。ということで、3つめにその強い種をつくるポイント「不完全プランニング」「+クリエイティブ」について話されました。活動をつくるときに完璧に仕上げてしまわず、地域の人が関わることができる隙を残しておくのが「不完全プランニング」。そして、楽しく魅力ある取組みにするための「+クリエイティブ」。魅力があれば多くの人に興味を持って関わってもらえるし、地域の人と一緒に作ることで、その活動は「みんなのもの」となって定着します。
永田さんは「既成概念にとらわれず、広い視野でリサーチもしながら、直感や妄想を広げてください」とアドバイスされました。
4.KIITOの話、実践事例
強い種をつくるコツを伝授いただいた後は、永田さんが行われている取組みやKIITOの実践を見ながら、ポイントの振返りと確認です。
・高齢の男性がプロ級のパンを作れるようになって地域で活躍する「パンじい」
・子どもたちがプロから学び、自らつくり上げるまち「ちびっこうべ」
・子どもが夢の家の模型をつくる「ゆめいえ」
・みんなが参加したくなる楽しい防災訓練「イザ!カエルキャラバン!」
などなど、さまざまな取組みに「おお!」「なるほど」と頷いたり、笑みを浮かべる参加者のみなさん。妄想、膨らんできたでしょうか?
2部:公民館を舞台に地域を豊かにするプログラムづくり
後半は、強い種(地域を豊かにするプログラム)をつくるワークショップです。
「アホなことを言っていいんです。メンバーの互いの違いを大切にして、俯瞰の大切さを思い出して、視野を広げて」と永田さんからのアドバイスに、各グループから様々な魅力的なアイディアが出てきました。話す皆さんからも思わず笑みがこぼれます。
最後はグループごとにアイディアを発表。永田さんからコメントやアドバイスをいただきました。
「失敗という言葉を意識したことがない」という永田さん。講座の最後に「全てがトライアル。失敗するかもしれないけど、やってみて気づくことや学ぶことの方が大きい。だから、いろいろやってみればいいと思います。最初は1人の思いから始まって、地域を巻き込んでいった取組みが多くあります。みなさん、ぜひ、その最初の1人になって、風の人になってください」とエールを贈られました。
参加者の声
アンケートより(一部抜粋)
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今、防災の事業を企画中です。行き詰っていましたが、今日参加して楽しくなってきました。ありがとうございました。
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もっと自由に考えていいんだと思えました。はみ出してやりたいとわくわくしました。
- 地域活動、公民館事業の経験の少ない自分でもやれそう!やってみたい!と思える講座でした。
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講師の先生のお話しも目からウロコで、「あ~そんな考え方なんだ」と思うこともあり、グループの仲間の意見にも感心することもあり、考え、思い、成り立ちなどなど十人十色でおもしろかったです。
- 土、水、風の話を聞いて、とても納得しました。俯瞰を大切にしながら活動したいと思いました。
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仕事に向き合うモチベーションが上がりました。
- どう動いていいか悩んでいましたが、今日の講座を受けて視野が広がりました。
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最高に楽しかったです!!ずっとワクワクしっぱなしでした!!