令和6年度 家庭教育支援者リーダー等養成講座(支援者養成講座)第3回報告

親子への支援を考える3ステップ講座 ~多様な親子 多様な家族に 寄り添う支援をめざして~

支援者養成講座は、家庭教育・子育て支援に関わる活動が3年以内の方、また、これから活動したいと考えている方を対象とした連続3回講座です。今年度は多様化する社会で求められる視点は何だろう?と、親や子や多様な家族に寄り添う支援について考えました。


家庭教育支援者リーダー等養成講座(支援者養成講座)チラシはこちら (1498KB; PDFファイル)

第3回 家庭を地域へひらくこと ~里親養育から深める親子支援と子どもの権利~

令和7年1月30日(木)1320分~1630

第3回目の講座は、里親養育から親子支援や子どもの権利について、そして家庭を地域にひらき支えることについて考えてみようと、九州大学大学院 専任講師・社会福祉士の田北雅裕さんをお招きしました。田北さんは認定NPO法人SOS子どもの村JAPAN理事、一般社団法人福祉とデザイン理事もお務めです。

講座写真

講師:田北雅裕さん(九州大学大学院 専任講師/社会福祉士

1. デザイン、まちづくり ~風景は変えられる~

田北さんは自身の活動の中で、子ども家庭福祉の領域にデザインが行き届いていないと感じ、情報を必要としている人、支援を必要としている人へ届くようにと、児童相談所のホームページや里親家庭向けの冊子など、様々な形でデザイン制作に携わってこられました。「物理的な状況(環境)を変えることができなくても、デザインすることによって“これはこういうところ”と意味付けし、知らせることができる。そうすると、その場も、見えてくる風景も変わっていく」と、その可能性について話されました。


また、以前と比べ「人数」も「時間」も少なくなった現在の家族について触れられ「家族だけで担うのが困難な時代。家族を小さなプライベートな領域に閉じ込めるのではなく“まち”にひらいて、“まち”で支えていく必要がある」と考えられたそうです。「個人的な課題をみんなで支えることこそ “まちづくり”ではないでしょうか」との話に、支援を行う参加者の皆さんも大きく頷きながら耳を傾けられていました。

講座写真  講座写真


2.「里親」で親子を支える ~親にならない里親~

里親と一言に言っても、養育里親、養子縁組里親、専門養育里親など様々あります。それぞれの説明に「初めて詳しく知った」という感想が多く見られました。

やはり親になるイメージが強い里親。ですが、親にならない里親もあります。その象徴的なものとして、田北さんはショートステイ里親について触れられました。子育てに困難を抱える家庭に伴走しながら、実親と一緒になって子育てをするショートステイ里親。子育てを少しずつ、みんなで支える仕組みを聞いて、里親は子どもだけでなく、親子を支えていく家族のパートナーでもあるとわかり、認識を新たにされた方も多かったのではないでしょうか。


3. 子どもの声をきくこと ~カードキット「TOKETA」を体験~

後半は「子どもの声をきくこと」について考えました。子どもの権利条約にある4つの原則のひとつ「意見を表す権利」。里親家庭で暮らす子どもの声を聞き、子どもの意見表明を支えるために、田北さんはカードキット「TOKETA」をデザインされました。里子、実子、里親、そして里親家庭を支援する全ての人の不安や悩みを溶けた状態にする、関係性を溶かして打ち解けた関係にしていく「TOKETA」カード。皆さんも興味津々です。

講座写真 講座写真


講座写真 講座写真


キットには「こんにちはカード」「しつもんカード」「おうえんカード」の3種とサポートブックが入っています。手引きもあるので、ファシリテーションが初めての方も安心ですね。

今回体験したのは「こんにちはカード」。カードの組み合わせによって「面白い夢は?」「忘れられない生き物は?」など、普段なかなか聞かないような意外な質問が出来上がることも。「だからこそ、答えにその人らしさが立ち上がってくるわけです」と田北さん。皆さんからも様々な会話が引き出されました。会場も自然と和やかな雰囲気に。 “うち溶けた状態”実感いただけたのではないでしょうか。

講座写真 講座写真


講座写真 講座写真


4. 佐賀の活動紹介

ここで、佐賀で活動を行われている2つの団体から活動を紹介。取り組まれている内容はもちろん、お2人の思いや姿勢にも学ばせていただきました。身近なところで行われる支援に、参加者の皆さんも真剣な表情で耳を傾けられていました。

 講座写真  講座写真

佐賀県里親支援こねくと 野口裕美子さん / 児童家庭支援センター絆 金森星奈さん


5. 修了証の交付

最後に、全日程(連続3回)受講された16名の方に修了証を交付しました。

田口館長から「今年度のテーマは ”多様な親子や家族に寄り添う”でした。理解の範囲を超えて、違う経験や環境の中に生きる人にも繋がろうとする心もちがより広がったり、深まったりしたのではないでしょうか。今インプットした段階なので、ここからアウトプット。出会いを次につなげていただけたらと思います。皆さんと出会えて本当によかったです!」とエールを送られました。皆さん、ご参加いただき本当にありがとうございました。

講座写真 講座写真 講座写真


講座写真


参加者の声 

アンケートより(一部抜粋)

  • 里親という言葉だけで難しく感じていましたが、色々な形があり、子どもだけでなく、親子をサポートし、一緒に育てていくという体制になっていることに驚きました。初めて知ることばかりでしたので、とても勉強になりました。また、TOKETAカードキットは子ども自身(里子さん、実子さん)の気持ちを表す、知るためのいいツールだなと思いました。

  • 田北さんの言われた「デザイン」がとても自分の中ではっとしたし、とても好きなデザインの考え方だと思いました。「風景を変えることができる」という言葉がとても嬉しかったです。

  • 田北先生のものの見方、考え方、自分が思いもしないことで、いろんな視点があるんだなと勉強になりました。そんな視点からつくられたホームページやTOKETA、こんなものがあったらとか、こんなことができたらと思っていたことにピンポイントに形にされていて大変感動しました。これからの支援に活かせたらと思います。

  • デザインについて話を聞き、ものごとに関する考え方、とらえ方、アプローチの方法など、おもしろいなーと思いました。TOKETAを使ってグループワークしましたが、アイスブレイクにも使えるなと思いました。子どもが思いを表現する方法として取り入れやすく、里親家庭へ紹介したいと思った。

  • 里親についてこんなに詳しく丁寧に聞いたのは初めてでした。自分にできること、1つずつ考えていきたいです。TOKETAカードは職場、職員間で人間関係構築の為にも利用できそう。
  • 自分のやりたいこと、進みたい方向が少し明確になりました。わからないこと、知らないことを学び続けて自分の活動に反映させていこうと思います。

トップへもどる