令和5年度生涯学習関係職員実践講座(ステップアップ編1)報告
佐賀県立生涯学習センターでは、生涯学習・社会教育関係職員に必要な知識や実践力を身につける「生涯学習関係職員実践講座」(基礎編、ステップアップ編、地域支援編 各2回)を行っています。
今年度は「With地域を考える編」と「ICTを活用した学びと情報の伝え方編」の2つのバージョンを、それぞれ 基礎編、ステップアップ編、地域支援編の3回を通して、段階的に深めていく連続型の講座として展開しました。
ステップアップ編1 With地域を考える編
「対話」から始める 風通しのよい地域づくり 令和5年9月7日(木)13時30分~16時30分
チラシはこちら (832KB; PDFファイル)
ステップアップ編(1) 「With地域を考える編」では、山口 覚さん(津屋崎ブランチLLP代表、一般社団法人まち家族代表理事、慶応義塾大学大学院特任教授)を講師に迎え、「対話」を通して住民と共に取り組む地域づくりについて考えました。
講師 山口 覚さん(津屋崎ブランチLLP代表)
山口さんは建築や都市計画を学んだ後、企業で勤めた経験やまちづくりに携わる中で、価値観の違う多くの人が関わる場では、話し合いの技術が根底にないと上手くいかないと気づき「話し合う」ことを研究し始めたそうです。
都市計画とまちづくり。いずれも大事なことですが、自分が関わらなくても誰かがやってくれる都市計画とは違い、まちづくりはみんなが関わり続けていくことになります。話し合ってまちの未来を創っていくのに、これまで誰もが討論(ディベート)の経験はあっても、話し合いの技術をまともに学んできていません。
山口さんはそんな受講者に向けて「話し合うという事。つまり自身が話すという事と人の話を聞くという事に、かなりの意識を持ってこの場にいてください」と、対話のコツを伝えられました。
自己紹介を兼ねたワークショップでは、日頃の職場での悩みや「こんな事やってみたら、こんないい事になった!」などの最近の取り組みについて話し合いました。受講者の緊張を解くために、山口さんが準備されたスピーカーからは、まるでカフェにいるかのような心地よい音楽が流れ、会場は終始リラックスした雰囲気でした。
また、グループの机に広げられたクラフトペーパーには、山口さんやみんなの話を聞いて、思いついたことをどんどんメモしていきました。みんなで1枚の紙にメモすることで一体感が得られ、そこでの意見をシェアすることで共有財産となり、他のグループの意見も視覚的に分かる。何より自分以外の多様な考えを知ることができるそうです。
山口さんは、同じ話や物、データを見聞きしたとしても、人は全く違うように感じる事を、例を挙げながら示されました。仮にデータを並び立てて、ディベートで打ち勝ったとしても納得は得られないし、自分と他人の考えは同じだと思って行動すると、次第に組織はギクシャクしてくるそうです。
「自分の経験は数ある経験の一部に過ぎない」という自覚と「答えの全部を分かってはいないはず」との謙虚さを持つ事が対話のスタートラインであり、みんなの意見が集まる事で全体像が見え、同時に新しい気づきを得ることに繋がると話されました。また「何を思っているのかな」との気遣いや心配り、そして「話を聞いてみよう」と思う気持ちも大切だと伝えられました。
山口さんが代表を務める津屋崎ブランチの事例には、まちの未来をつくるヒントとアイデアがたくさん詰まっていました。頷いたり考え込んだりしながら話を聞く受講者のクラフトペーパーには、どんどんメモが追加されていきました。
対話の心得をしっかりと胸に刻んだ受講者は、グループで感想を述べ合った後、ワールドカフェで他のグループに出かけ、多方面からの意見で思考の広がりを体感しました。
受講者から質問を受けた山口さんは、それもグループ内での対話に変え、たくさんの意見を引き出されました。その上で「私の場合は…」と、自身の経験からアドバイスをされていました。
最後に山口さんは「私が言うことが正解ではありません。皆さん新しいアイデアにどんどんチャレンジしていきましょう!」というエールとともに、対話の場=コミュニティがある=出掛けていきたくなるという効果を話され、集いの場・対話の場をまちなかにつくることを提案されました。
受講後のアンケートからは、対話の重要性とアイデアを生み出す技術を学んだことで、今後の地域づくりに活かしていこうとの決意も伺えました。
アンケートより(一部抜粋)
- “心の変容を許す”がすごく印象的でした。対話する中で考えが変わることを怖がらずにいようと思います。
- 話をする場を作ることの大切さを改めて感じました。
- グループワークの対話で皆さんの活動を知り、活かせそうなところは取り入れてみようと思いました。
- みんなが集まって対話交流会。実現できるように努力していきたいと思います。
- 大きなイベントでなくても、予算がなくても、対話の場はアイディア次第で楽しく作ることができると思いました。
- 話し合いの場に多様な人を入れることなどの気づきがありました。