令和4年度生涯学習関係職員実践講座(基礎編1)報告

佐賀県立生涯学習センターでは、生涯学習・社会教育関係職員に必要な知識や実践力を身につける「生涯学習関係職員実践講座」(基礎編、ステップアップ編、地域支援編)を行っています。

今年度は初の試みとして、「課題解決支援おうえんBOOK(※)活用編」「ICTを活用した新たな学びを考える編」の2つの連続性を持たせたテーマで実施!その様子をご紹介します!

【※課題解決支援おうえんBOOKとは…市町、公民館等、佐賀県立生涯学習センター(アバンセ)の3者協働で地域の課題解決に取り組んでいる「課題解決支援講座」の10年間、31地域の試行錯誤をぎゅっとまとめた冊子。令和4年3月発刊】




基礎編1 課題解決支援おうえんBOOK活用編

「社会教育にふれる 地域の声を考える」令和4年7月5日(火)13時00分~16時30分

チラシはこちら (1095KB; PDFファイル)

社会教育って 生涯学習ってなんだろう?


【講師】上野景三さん(西九州大学子ども学部子ども学科教授)


講師にお招きしたのは前アバンセ事業統括でもあり、おうえんBOOKを監修された、西九州大学子ども学部子ども学科教授の上野景三さん。

前半の講義では、社会教育・生涯学習の理念と歴史、また社会教育職員として必要な基礎的知識について、課題解決支援おうえんBOOKにふれながらお話しいただきました。

上野さんは、コロナ禍で久しぶりに人と交流するときの心境の変化を例えに、最初は公民館に「集められた感」がある住民でも、そこにある楽しい要素によって「自ら参加する」という行動様式を学ぶことを示され、職員にはその成長を促していく努力が必要だと伝えられました。

ちなみに、その努力を課題解決支援講座実施後も続けている公民館では、今でも多様なカタチで活動が継続していて、おうえんBOOKの中でも「その後の展開」として紹介されています。

また、元来社会とのつながりを説く社会教育と、明治期以降、加速度的に社会が変化していく中で学び続ける必要性から出てきた生涯学習・生涯教育との違いや、新旧の教育基本法の違いなどを話され、社会教育の定義・生涯学習の理念、公民館の基本的役割について学びました。

さらに人口推移グラフなどの具体的な数値が示され、今後の家族のあり様やライフスタイルの変化に、専門職としての公民館職員の資質向上が求められてくるとのことでした。


       


公民館をデザインするとは、地域社会が抱える問題や課題に対して、公民館を使って問題の解決にあたっていくことです。その手法の一つが課題解決支援講座で、地域と地域住民のパワーレスを解消していくことから始めます。

上野さんは「皆さんには地域住民の幸せと健康のために、まずは『声を聴く』ことから始めて、利用者理解とチーム公民館(=公民館を核としたクラスター形成)で、いろんな人と混ざり合いながら仕事をしていってください」とエールを贈られました。 

課題解決支援おうえんBOOKの中身にふれる

続いて、おうえんBOOKのスピンオフ事例として、平成29年度に唐津市東唐津公民館で行った「東唐津あかりプロジェクト」、令和2年度に唐津市大良公民館で行った「大良しあわせプロジェクト~大良大すき良かトコロ♪~」の2事例を紹介しました。

会場にお越しいただいた大良公民館の金嶽館長や、おうえんBOOK編集員のアバンセ職員から、講座の裏話やその後の展開、また、地域住民や公民館職員の声を聴きながら企画会議を進めるために、企画の修正もあり得ることなどを聞き、受講者は地域の声を拾う難しさも感じたようでした。

上野さんは「地域課題解決は暗中模索で試行錯誤の連続ですが、やりながら変えていき、どういう人のどういう声を聴いたら良いのかを一緒に考える。いろんな声の聴き方があっていいのです」と話されました。

      

「地域の声」って?しゃべり場から考えてみる

後半のワークショップでは、地域の声を聴くことについて考えてみました。

『あなたが考える「地域の声」とは?』『あなたなら「地域の声」をどうやって聴く?』いう2つのお題について、ワールドカフェ方式でグループワークをしました。

数年ぶりにえんたくん(円盤状の段ボール。距離感や一体感がほどよいツールの一つ)も登場しました!

初めて見る方はその形状や使い方に最初は戸惑いながらも、次第に慣れてきて縦横無尽にメモしたり、ぐるぐる回して他の人の意見を見たりと、グループの皆さんと活発に意見を交わす姿が見られました。

 

最後は皆さんに、住民の声を聴くために「明日からこれをやってみます!」との決意を紙に書いてもらい、グループ内で発表して共有しました。


上野先生はまとめとして、小学校などへの公民館のアウトリーチ、公民館での事業で年に1つでもいいので新しいことにチャレンジすることなどを提案され、「公民館は小さな職場です。常に一人ひとりがパワーアップして、新しいことに挑戦していくことが求められます。市町やアバンセでの研修で知識を得て、情報を交換しその後の仕事に活用していってください」と締めくくられました。

    

番外編

ワークショップの前のアイスブレイクの代わりに、QRコードとGoogleフォームを利用した簡単なアンケートを行いました。

事前にGoogleフォームで準備した質問をQRコード化し、皆さんのスマートフォンで読み込んで回答してもらいました。その結果をプロジェクターで投影し、リアルタイムで共有できることを体験してもらったのです。

今回の「QRコードとGoogleフォーム」や「えんたくん」は、地域住民から意見を聴くときや交流を図るための、ツールとしての活用の提案の意味もありました。

会場からは早速「公民館でも取り入れてみたい」などの感想が聞かれ、皆さんの業務に対する柔軟な姿勢が伺えました。


    

参加者の声(アンケートより抜粋)

・社会教育、生涯学習、地域の声の重要さを認識しました。

・新しい取組みができそうなヒントを聞くことができました。立場の違う参加者の方と話すことができたことは重要でした。

・QRコードやえんたくんが良いアイデアでした。

・ニーズの「見える化」「言語化」は重要だと思いました。公民館の問題が見えてきました。

・社会教育の意義などを改めて教えていただいてよかったです。

・初心にもどって聞くことができました。公民館によく来る人だけのことを考えるのではなく、背景を見ることが大切だということが分かりました。

・他の自治体の方も、自分と同じような悩みがあることがわかり、がんばろうと思えました。

・他市町、異世代の方々と話せたのがすごく良い経験でした。いろんな方がいらっしゃるなと感じたと同時に、公民館に関わる方々は、柔軟な考え方をする方が多いなという印象でした。

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