令和4年度 課題解決支援講座(佐賀市)を開催しました

【課題解決支援講座について】

佐賀県立生涯学習センターでは、市町、公民館等との共同企画で、地域課題の解決に向けて取り組む講座を開催しています。《令和4年度は佐賀市、唐津市の2地域と共催》


佐賀市は、佐賀市公民館支援課&協働推進課×日新公民館との共催で

「にっしんBOUSAIまちづくり講 ~『つぶやき』からはじまる。みんなで考えるまちの未来~」を開催しました。

講座名「にっしんBOUSAIまちづくり講 ~『つぶやき』からはじまる。みんなで考えるまちの未来~

日新地区は、発足7年目を迎えるまちづくり協議会や各種団体による地域活動が活発に行われてきた地域です。

まちづくり協議会の安心安全部会では、地域の防災のためにハザードマップの作成に数年前から取り組んでいるところですが、近年の豪雨災害等によって住民の危機意識が高まり、早期のマップの完成が望まれています。

一方、地域活動において従来からの体制が続いている中で、団体内で新しい意見が出にくい、活動の情報共有や改善策に取り組めていないといった状態が見受けられ、今までのやり方からの変化を求める声もありました。

そこで、住民の関心事である「防災」を入口に対話の場を重ね、地域のことを一緒に考える中で、お互いの意思疎通を図りやすい環境づくりと、住民が主体的に地域の課題に取り組み、より良いまちづくりの活動につながることを目指して講座を開催しました。


講師は、地域おこしグループ「さざんか塾」などで様々な地域活動やボランティア活動を長年実践されている多良淳二さんです。

※「にっしん」=「日新のまち」という意味で表記

第1回 「第一夜 にっしんをつぶやく夜(ヨ~)♪」

 【日時】令和4年11月25日(金)19時~20時30分  【講師】多良 淳二 さん(地域づくりアドバイザー)

講義「地域課題とまちづくりを考える意義」

第1回は「にっしんをつぶやく夜(ヨ~)♪」と題して開催。

会場には、まちづくり協議会役員、安心安全部会委員、校区自治会長会のメンバーの方が集まりました。

はじめに、講師の多良さんから「地域課題とまちづくりを考える意義」というテーマでお話しいただきました。


講師 日新公民館

「この講座のテーマの軸としている『防災』を含めて、地域には身近なところで様々な課題があります。まずはそれらの課題に関心を持って『自分にできることはなんだろう』と、自分事として考えてほしい。自分だけではできないことは周りに協力を求める。それが皆で地域を守っていく活動につながったらいいなと思います」と、地域活動に取り組む上での考え方などを伝えていただきました。

また「一番大事なのは地域の『課題発見力』を養うこと。その一歩は皆で話し合って共有することです。お互いの意見や考えを聞き合いながら、できることを一緒に考えていく話し合いの方法をこの講座で体験してみましょう」と呼びかけられました。

ワークショップ「にっしんの良いところ・気になるところ」

後半は、さっそくワークショップ形式での話し合いをやってみようということで「にっしんの良いところ・気になるところ」について意見を出し合うグループワークを行いました。


ワークショップ ワークショップ

誰もが自分の意見を出せるように、まずは付箋紙にそれぞれの意見を書き出す時間を設けました。そして、ワークシートに付箋紙を貼りながらグループメンバーで共有。短い時間でしたが、どのグループも和気あいあいとした雰囲気の中でたくさんの意見が出ている様子が見られました。


ワークショップ ワークショップ

その後のグループ発表では『良いところ』として「歴史があるまち」「川沿いの桜がきれい」「通学や買い物が便利なところ」など、『気になるところ』として「道路や歩道の幅が狭くて危ない」「一人暮らしの高齢者が増えている」「大雨時の浸水が多くて水害が心配」といった意見が紹介され、地域の現状を皆で共有できた時間となりました。

最後に多良さんから「お互いの考えを知り合うことで、共通していたこと、気づいていなかったことが分かったと思います。今回やってみた手法を、皆さんが地域活動をするときにも活用してほしい」と話されました。

参加者の感想
  • 自分でできることや得意なことを地域活動に活かすという考え方が印象的だった。
  • ワークショップによって他の人のいろいろな意見を知ることができた。
  • 参加型の講座でとても楽しく参加できた。皆さんとつながりができるチャンスになって良かった。


第2回 「第二夜 にっしんを想う夜(ヨ~)♪」

【日時】令和4年12月15日(木)19時~21時

【講師】多良 淳二 さん(地域づくりアドバイザー)、鈴木 宣雄 さん(さがクロスロード研究会 代表)

ワークショップ「クロスロード」

第2回は『防災』に焦点をあてた内容で開催。「クロスロード」という災害対応カードゲームを用いたワークショップを行いました。

今回は、さがクロスロード研究会の鈴木さんにワークの説明と進行をしていただきました。


クロスロード 講師

「クロスロード」は災害時を想定した『こんな時どうする?』という設問に対して、自分の選択を「Yes」「No」のいずれかのカードを出して、その選択の理由をお互いに述べ合います。そのため、災害時のことを自分事と捉えて考えることができ、他の人の意見や価値観の多様性を感じたり、新しい視点や気づきを得ることもできます。


クロスロード クロスロード

『避難所に家族同然の飼い犬を一緒に連れて行く?』といった問いに悩みながらも自分のカードを出す皆さん。カードを表にしてYesとNoの数が分かると「わっ」と声があがって盛り上がりました。

ここでは多数派・少数派に関係なく、誰の意見も否定せずに聞く姿勢が大切です。「なるほど。そんな考え方もあるね」と他の人の言葉に耳を傾ける様子が見受けられました。


クロスロード クロスロード

また、設問ごとに鈴木さんから防災に関する話題提供があり、災害時に役立つ情報や知識を学ぶことで、参加者からは「防災への意識が高まった」という声も聞かれました。

最後に多良さんから「災害時の判断は、何が『正解』なのかではなく、その時の状況によって自分なりの答えをつくりだしていく『成解』があるのではないでしょうか。もしもの時に慌てずにより良い判断や行動をするためには、日頃の備えが大事。それは普段から関心を持っておくこと、家族と話したり隣近所との付き合い、協力できる関係性が大事だということ。防災を考えるとまちづくりとの関連性が見えてきますね」と話され、次回以降も皆さんで地域のことを具体的に考えていきましょうと結ばれました。

参加者の感想
  • 「クロスロード」は良い経験になった。災害時の判断を考えることが大切であると感じた。
  • 自分の意見を考えて言うこと、他の人の考えを聞くことが参考になった。
  • 立場、性別、年齢の違う方々の意見が聞けて良かった。あらゆる団体で地域が成り立っていると感じた。


第3回 「第三夜 にっしんの未来を語る夜(ヨ~)♪」

 【日時】令和5年1月19日(木)19時~21時  【講師】多良 淳二 さん(地域づくりアドバイザー)

ワークショップ「にっしんの課題とその解決への取組みアイデアを考えよう」

第3回では「防災」と「防災以外のこと」にテーマを分けて地域の課題を出し合い、その解決への取組みアイデアを話し合うワークを行いました。

多良さんからの「『主体は自分たち』ということを頭において、どんなことができるのかアイデアをどんどん出し合ってみましょう」というかけ声でスタートしました。


第3回講座 講師

これまで毎回参加している参加者の姿も多く、ワークショップのやり方にだんだん慣れてきた様子の皆さん。

机の上のペンをさっと手に取ると、自分の考えを付箋紙に書き出されます。ワークシートに貼りながらグループメンバーで意見を共有すると、「こんなこともできるかな」とアイデアがさらに膨らんでいるようでした。

ワークシートには「すぐできる/時間がかかる」という時間軸と「重要性が高い/低い」という軸があり、アイデアをどこに位置づけるのかも考えることで、取組みのより具体的なイメージを持つことができました。


ワークショップ ワークショップ

第1回から第3回までの講座は、毎回ランダムなグループメンバーの組み合わせでワークを行いました。今回も、普段はあまり意見を交わすことがない人との対話の場になっている様子が垣間見えました。


ワークショップ ワークショップ

最後のグループ発表では「災害時の避難場所や避難経路の把握」「防災のための学習や情報収集」「高齢者の交流の場づくり」「空き家の活用」「ながら防犯の推進」など、たくさんのアイデアが紹介され、全体で共有できました。

参加者の感想
  • グループでの会話も多く、いろいろと話ができて非常に良かった。皆で考える良い機会だった。
  • 多様な意見があり、地域を見直すのに役に立った。
  • 地域の課題とその対応策についての意見を聞くことができて、とても参考になった。


第4回 「第四夜 にっしん ○○○夜(ヨ~)♪」

【日時】令和5年2月16日(木)19時~20時30分  【講師】多良 淳二 さん(地域づくりアドバイザー)

前回までのふり返り

最終回はこれまでの3回講座の復習からスタート。多良さんに各回の内容をふり返っていただきました。


第4回講座 講師

「地域の課題を見つけたら『自分でできること』『仲間とできること』『みんなでできること』を考えて、それぞれの得意分野を活かして動く。それらがつながっていくことが地域ぐるみの活動においては大事なこと」「講座のワークショップで日新の地域の様々な課題が分かった。鳥の目(俯瞰的な目線)と虫の目(複眼的な視点)の2つの目で見直してみると、また新たな発見があるかもしれない」「災害時を考えるとやはり日頃の備えが大事だと気づいた。防災のために取り組むことは、地域の他の課題とも結びつく部分がたくさんある」など、まちづくりに取り組む上で大事なポイントも改めてお話しいただきました。

ワークショップ「にっしんのまちの課題解決に向けたアクションプランを考えよう」

最終回のワークは、まちの未来に向けてのアクションプランを考えます。

今回は「防災」「人」「コミュニティ」「生活環境」のテーマの中から、参加者自身が話したい話題を選んでグループをつくりました。


ワークショップ ワークショップ


ワークショップ ワークショップ

まずは各テーマに関する課題を出し合い、その中から「特に解決したい課題」を皆でチョイス。次に、その課題の解決に向けた取組みについて「誰が」「何を」「いつ」「どこで」「どうやって」という項目に沿ってアクションプランを話し合いました。また、プランの実施スケジュールも考えることで、より現実的な内容として検討することができました。


ワークショップ ワークショップ

そして、今回の講座タイトル「にっしん ○○○ヨ~♪」に当てはめて、アクションプランにキャッチフレーズをつけての発表。どのグループのプランにも、にっしんが安心して暮らしやすく、人とのつながりのある楽しいまちになったらいいなという皆さんの思いが込められていました。


★各グループのキャッチフレーズはコチラ♪

『にっしん 自己中でいいヨ~♪』(テーマ:防災)

『にっしん 深~く つながるヨ~♪』(テーマ:防災)

『にっしん 安心ヨ~♪』(テーマ:人)

『にっしんは ワクワク・ドキドキ感がいっぱいの町ヨ~♪』(テーマ:コミュニティ)

『にっしん 地域のゴミステーションがきれいになったらいいヨ~♪』(テーマ:生活環境)

『にっしんの 風は気持ちがいいよ いいヨ~♪』(テーマ:生活環境)


最後に多良さんより「『自分たちのまちは自分たちで守る』という意識で、今は地域ぐるみで取り組まないといけない社会の状況になっている。にっしんは一つのファミリーという視点で考えてみてほしい。どんな状況でもプラス思考であることが大事。にっしんの未来を皆で支え合い、楽しくワクワクしながら、力を合わせてまちづくりに取り組んでほしい」と激励のエールが送られました。


参加者の感想
  • 課題解決のステップを学ぶことができて良かった。
  • 「三人集まれば文殊の知恵」が実感できた。これからも協力できることはやっていきたい。
  • 実際の解決策を考えて具体的な実施スケジュールを立てる手順が分かり、実施への踏ん切りができた。
  • 地域の課題に対する取組みは「みんな」でやるということが大事だと痛感した。


日新災害ハザードマップ

各回の講座の中で、ハザードマップの作成状況の説明や、紙面の内容について参加者から意見をもらう時間を設けました。皆さんの意見を反映させながら、今年度中の完成を目指して進めることができました。

ハザードマップ ハザードマップ

▲作成中のハザードマップの紹介         ▲原稿を見ての気づきや意見を書いてもらう 

ハザードマップ ハザードマップ

▲意見を原稿に落とし込んで印刷の校正作業へ   ▲初校(左)ができあがり、修正箇所等の説明を行う


講座を終えて

講座を終えて、スタッフと講師の多良さんを交えてのふり返りを行いました。

  • ワークショップ形式は自分の意見を出せて、他の人の考えも聞けると実感した。今回経験した手法を地域の話し合いの場でも取り入れられるように働きかけたい。
  • 他の人と意見を交わして共有することは、人との関係を良くして、まちが良くなっていくことにつながるのだと再認識できた。
  • 住民同士でもっと話し合う場や、コミュニケーションがとれる機会が必要とされていることが分かった。
  • 参加者の皆さんの協力のもと、ハザードマップの完成へ向けて動き出せて良かった。完成したら、今後の活用の仕方について意見をもらうような場があったらいいと思う。
  • まちづくりの活動は「いつ」「誰が」が大事。やっていることを可視化して、地域の皆に伝えること、還元していくことが望ましい。多世代の人が楽しく関われる仕組みができることも期待したい。

などの意見を交わしました。


ふり返り

7月の事前研修からスタートし、日新公民館、佐賀市公民館支援課、協働推進課、アバンセ担当者で企画会議を重ね、多良さんからのアドバイスもいただきながら、試行錯誤の道のりで講座を実施しました。

講座を通して、住民の方が地域のことを真剣に考えて語り合う姿や普段感じられている本音に触れることで刺激を受けたり、寄せられた感想の声に励まされたりもしました。

最終回の講座で「公民館は住民の皆さんとともに歩んでいきたい」という公民館長の言葉がありましたが、住民の声(つぶやき)を受けとめ、何ができるのかを一緒に考えて取り組んでいく伴走者としての公民館とともに、にっしんの皆さんによる地域ぐるみの活動がますます広がっていくことを期待しています。


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