令和3年度生涯学習関係職員実践講座(ステップアップ編2)報告


佐賀県立生涯学習センターでは、生涯学習・社会教育関係職員に必要な知識や実践力を身につける「生涯学習関係職員実践講座」(基礎編、ステップアップ編、地域支援編)を行っています。

ステップアップ編2は、地域の中でのより良い関係性づくりに役立てるため、コミュニケーションや対話力アップのためのポイントやスキルを実践的に学んでいきました。



公民館もまちセンも!今、こんな時だからこそやってみよう  ひとりの気づきをみんなのアクションに!

令和3年12月10日(金)10時00分~15時30分

1. 「こんな時だからこそ!」の つながるコミュニケーション

講師の佐藤さんは大学での非常勤講師として、福祉やボランティアの分野で学生たちの能力発揮や地域貢献のための指導をされています。また、佐藤さん自身も、自分が暮らす地域の自主運行バスの補助員として、山あいの地区で移動手段に困っている人たちの買い物支援をされているそうです。「地域のいろいろな人がそれぞれ自分のできる範囲で動いていくことの大事さを実感している」と佐藤さん。

今回は、コミュニケーションをとりながら住民とより良い話し合いをしていく上でも役立つ「ファシリテーション」の考え方やスキルについて、ワークを中心に体験しながら学びました。


講師

【講師】佐藤 倫子 さん(一般社団法人 ママトコラボ ディレクター)


ファシリテーションとは「促進する、容易にする」という意味があり、話し合いの進行役としてその場の話をしやすくする役割があります。

まず、それぞれで”ファシリテーションの定義”(進行役として大切なこと)について考えました。そして、グループで共有したことを発表してもらうと「否定せず、共感する」「分かりやすい言葉を使う」「いろいろな人が話せる環境づくり」などの意見が出てきました。佐藤さんからは「どれも大切な要素だと思います。私の考え方としては『参加者ひとり一人の参加を引き出しつつ、場の目的達成に貢献する』ことです」と紹介され、「その場の誰もが発言できること」と「何かを決めたり、情報共有といったその場の目的が達成できること」を両立して進めていくことが大事なポイントと話されました。

「今日は、どのワークでもグループの中で順番に誰かが進行役をしてもらいます。メンバーの話を引き出せるように心がけてやってみてください」と呼びかけられました。

講義 自己紹介

ファシリテーションのスキル  ~『可視化の効果』と『質問の使い分け』~

今回学ぶファシリテーションのスキルは2つ。

話し合いを可視化するするための「書く」スキルと、相手の考えを引き出すための「質問する」スキルです。


話し合いの場で出た意見を書いていくことは、人の記憶に残りやすく、話題が脱線せずにより深い話ができることや言葉の曖昧さを具体化できることにつながります。

グループワークでは「たこ焼き屋をやろう」というお題のもと、たこ焼き屋をするための準備物と、当日までのスケジュール計画について意見を出し合い、進行役が書いていきました。

みんなの意見を書いたものがあることで、全員が同じ情報を共有でき、話し合いがどんどん展開していくことを実感できました。

また、板書や模造紙に書く際の色ペンは、青・赤・黒色の3本があれば十分とのこと。使う色の意味を決めておけば、その場のメンバーが理解しやすく、書くときのハードルも下がるとアドバイスいただきました。

ワーク ワーク


次に「質問する」スキルを学びました。

質問には「オープンクエスチョン」と「クローズドクエスチョン」の2つがあり、「オープンクエスチョン」

(「~というと?」「具体的には?」「他には?」など)を使うことで相手の考えを引き出し、より掘りさげて聞くことができます。

「~というと?」と聞かれると、相手は考えて話すことになります。単語だけでは話の中身がすれ違うことも多く、相手の認識を具体的に聞いていくことが必要です。「その場のメンバーみんなで考える時間をつくり、参加の度合いを上げていくためにも、どんどん問いかけていくことが大切」とポイントを示されました。

グループワークのお題は「公民館の役割」。進行役が質問すると「公民館というと…?〇〇〇というと…?」と、悩みながらも話題が深まっていく様子が伺えました。

公民館の役割 公民館の役割

グループワーク「企画会議をやってみよう」

前半の最後は企画を考える話し合いです。

話し合いの基本的な流れ「共有」→「発散」→「収束」という段階に沿っての実践ワーク。ここでは受講者の一人に協力いただき「〇〇さんをちょっとだけ幸せにするプラン」を考えました。


まずは企画を考えるための情報を共有し、その情報から考えられるアイデアや意見をどんどん出し合い(発散)、絞り込んでいく軸(予算や重要度など)で検討して企画を詰めていきました(収束)。ここでも進行役は意見を書き出し「~というと?」と問いかけてアイデアを広げていきます。

最終的なプランを各グループからプレゼンしてもらうとバラエティーに富んだ企画が発表され、そこにはメンバーの特技や経験値が盛り込まれていていることが分かりました。

「地域の話し合いにおいても、まずはアイデアや発想を口に出しやすい場にすることで『私は〇〇ができる』という人がきっと出てくるはず。そうして、納得感のある合意形成の上で参加する人を巻き込んでいければいいのでは」と、話し合いの場を通して人との関わりを深め、一緒に活動することを後おしできることにもなると教えていただきました。

企画会議 企画会議


2. みんなのアイデアをつなぎあわせて考える「今ならでは!」の公民館アクション

公民館の取組紹介

後半は、職員同士や地域住民とアイデアを出し合い「今ならでは」なアクションを起こした取組みについて、県内の3つの公民館より紹介していただきました。

西川副公民館(佐賀市)

西川副公民館

今夏の東京オリンピックの聖火リレーに着想を得て取り組んだ『西川副SEIKAリレー』(地元特産品の「青果」「生花」などの生産者を職員が訪問してインタビューを実施。リレー形式でつないだ21組の生産者の姿を公民館の情報サイト「つながる西川副」で紹介し、口コミなどで広まった)や、校区内の自治公民館へのアウトリーチ活動について紹介。

【発表者】添田 晴巳 さん(西川副公民館 職員)

大良公民館(唐津市)

大良公民館

公民館隣の小学校のグラウンドで昨年初めて開催した野外音楽イベント(地元の若者バンドメンバー中心の実行委員会で企画運営)に、今年は公民館の文化祭をだき合わせで実施した『やまおとフェス2021』や、昨年結成した地元有志の会『まこと会』(地元の炭焼きや和紙作りの継承、耕作放棄地の水田再生などの活動)について紹介。

【発表者】金嶽 栄作 さん(大良公民館 館長)

武内公民館(武雄市)

武内公民館

「町の祭りの見直し」をきっかけに実施した住民ワークショップから生まれた企画『キャンプでミーティング』(地域資源の「飛龍窯」でキャンプ体験しながら住民が話し合い、幅広い声を新しい祭りづくりにつなげるべく継続中)や、コロナ禍でも住民が楽しめるイベントとして開催した「花火大会」「武内町ライトアップ大作戦」について紹介。

【発表者】古賀 浩紀 さん(武内公民館 主事)



取組紹介を聞いて、それぞれの「印象に残ったこと」「もっと詳しく聞きたいこと」をグループで共有。

その後の質問タイムでは、

「新しい取組みを始めるにあたって、住民の反応はどうだった?」

「今回の取組みがきっかけで、公民館に来るようになった人はいる?」

「今まで公民館活動に関わりのない住民に、どのようにしたら関わってもらえるようになると思うか?」

などなど、コロナ禍の影響もある中でどのようなアクションをしていけばいいのか、新たな糸口を探ろうとする受講者の姿が見られました。


佐藤さんからは「リレーの訪問インタビューや地域のことを話し合うワークショップの中で、関わった人が『エンパワーメント』されていると感じました。様々な状況下で『人が元々持っている力』が封じられている場合、その力は他者との関わりによって引き出されます。地域で人と人が関わることは、住民の力を発揮できる関係づくりにもつながります」と、人と話すことの大切さをふまえてお話しいただきました。

トークセッション トークセッション

グループワーク「企画書作り」

最後は、受講者それぞれの地域の現状に合わせて「こんなことやってみたい!」というアクションを考えるワークを行いました。

「地域の課題」「地域にある資源(人・場所・ネットワークなど)」「私のやりたいこと」を書き出して企画書を作り、グループで共有。お互いにコメントし合うことで、新しい視点ややり方に気づき、アクションプランの具体的なイメージもさらにふくらんでいたようでした。


グループでわいわい話し合うワークの中で、書いたり質問したりしながら、その場の話題を深めていくファシリテーションのスキルとその効果を学ぶことができました。

今回の学びをそれぞれの地域や職場でのコミュニケーション、話し合いの場で生かし「今、ここならでは」の取組みにつながることを期待しています。

グループワーク グループワーク


参加者の声(アンケートより抜粋)

・グループのメンバーと話し合う回数が多く、短い時間の中でも親近感がわいて話しやすかった。

・次の会議の場では「見える化」と「~というと?」を意識してやってみたい。

・相手の話を聞き出したり、広げたり掘りさげていくことなど、仕事に直接つながることが学べた。

・他の公民館の取組紹介や企画書作りで具体的に考えたことで事業のマンネリ化解消へのヒントになった。

・自分もやってみようと思える取組みや参考になる意見をたくさん聞けた。できることからコツコツやりたい。


トップへもどる