家庭教育支援者リーダー等養成講座(リーダー研修) 第1回報告

リーダー研修 親と子の未来を育むためにできること~家庭教育支援の今を考える~

今年度より家庭教育支援者リーダー等養成講座は、家庭教育・子育て支援に関わる活動経験年数に応じて「支援者養成講座」と「リーダー研修」に分かれて受講できるようになりました。

今回のリーダー研修(活動年数3年以上の方対象)は、様々な経験を重ねてきた支援者の皆さんと、私たちにできる子どもや親の育ちを支える家庭教育支援について共に考え、学び合う、連続5回講座での開催です。


「リーダー研修」のチラシはこちら (975KB; PDFファイル)

第1回 家庭教育の現状と課題

開催日時:11月5日(金)13時15分~16時30分

開講式

開講式

上野景三(アバンセ事業統括)


会場には保育園やNPO等で子育て支援に関わられている方、地域で子どもの居場所づくりに取組まれている方等、様々なフィールドで活動している皆さんが県内各地から集合されました。

主催者挨拶では「子どもを取り巻く環境が大きく変わった今、子どもや保護者が抱える困難さをどのように理解し、支えていけるのか私達は学び直しの時代に入っています。いろんな立場で活動している支援者同士のネットワークを図りながら、リーダーとしての力量を高めていって欲しい」と上野事業統括がエールを送りました。

(前半)講義「家庭教育の現状と課題」

講義Zoom登壇講師

講師:宮嶋晴子さん(九州女子短期大学子ども健康学科教授)


1回目の講師、宮嶋晴子さんは北九州市よりオンラインでのご登壇です。

NPO子育て活動実践者でもある講師の宮嶋さんは「コロナ禍で活動休止が続き、家庭教育支援の現状が把握しにくい中ではありますが、これまでの実践から私なりの課題をお話ししたい」と述べられ講義が始まりました。


はじめに、増加の歯止めが効いていない児童虐待の現状から、様々な支援活動の実践に何が足りないのか考えていくことの必要性について話をされました。しつけとは本来、親が愛情をもって行う子どもの自立支援です。

しかし、子どもを痛めつけたり、罰を与える事件が起き続ける背景のひとつに、子どもの自立支援の方向性が見失われている点をあげられ「親自身が自ら主体的にしつけ糸のような役割を担えるような支援とはどのようなものか、ぜひ考えて欲しい」と呼びかけられました。

ここでの「しつけ糸」の解釈…子どもが本縫い、親はしつけ糸の役割。親はそっと手を添え、ほめてあげながら子ども自身が縫い上げていく。しつけ糸(親の役割)をはずすとその縫い後は跡形も無く、子どもの本縫いしか残っていない。(=子どもの自立支援)


また、従来の支援(利用者が主体的に参加する場での支援)だけでは、生活困難を抱えた家庭が自ら地域や支援の場に参加することは到底難しいと述べられ、宮嶋さんが取組まれている団地での子育てサロンの実践事例を紹介されました。厳しい家庭の親や子どもへの地域参加を促そうと地域に入り込んで展開されている活動は、少しずつ時間をかけながらも親や子どもとの信頼関係を育みながら、着実に当事者の行動変容や自己肯定感の高まりにつながっている様子が伺えました。

宮嶋さんは「子育て当事者が家から一歩を踏み出し、人と語り合い、子育てや地域づくりの主体となっていくように、一人ひとりの状況を見極めながら次のステップアップへつなげていくことが大切。そこが私達支援者としての力量が問われるところ」と話されました。


(後半)ワークショップ「家庭教育支援に大切なこと~互いの活動を語り合って考えよう~」

ワークの様子グループの様子


後半の時間は、参加者自身の活動を振り返りながら『それぞれの活動で気になっていること』『気になる家庭(親や子)』『厳しい家庭に支援を届けるためのヒント』の3つのお題でワークショップに取組みました。

この講座で初めて顔を合わせた方も多い参加者の皆さんですが、ワークが始まると話が止まりません。

お互いの声に耳を傾け、うなずきながら、各グループでの話が深まっていく様子が会場から伝わってきました。


発表の様子Zoom画面の講師


画面越しに会場の様子をご覧になった宮嶋さんは「アプローチしにくい親に対しても、何とかして接点をみつけ、まずは親が楽しいと思える場、子どもが行きたいと思う場を日常的に作り続けることが大切」とコメントされました。親達の価値観を受入れ、否定せずに関わりを持ち続け、楽しい事だけで終わらせず、そこを皮切りにステップアップへの階段につなげていくことが支援者には求められるところです。

また個別支援だけでの解決が無理なケースでは、福祉のソーシャルワークの原理を用いた家庭支援(同じ悩みを持つ親同士(3人以上)のゆるやかなグループに、支援者が間接的に関わっていく)も手立ての一つと紹介されました。さらに、親達が住みやすく、子育てしやすい地域づくりへと取組むことも家庭教育支援には大事な視点であることを学びました。


そして、親を深く理解する支援者として大事なことは『立ち位置』と宮嶋さんは語られました。『理解』は英語でアンダースタンド。『アンダー』(下)『スタンド』(立つ)の通り「支援者は親を下からそっと支える存在であることを忘れないで欲しい」と呼びかけまれました。


宮嶋さんは最後に「私自身、支援者としての悩みをずっと問い続けています。答えはすぐにみえませんが、皆さんと一緒に学びの積み重ねからみえてきたことを最終回に語り合いたい」と結ばれました。

宮嶋さんは最終回(第5回)の講座にも登壇。

講座の感想(アンケートより抜粋)

・皆さんの考えや価値観などを聞くことができ新鮮な気持ちになりました。自分の考えを見直すことができました。

・様々な立場で考え行動されている方と出会えて大変嬉しく思いました。地域へのアウトリーチの話が参考になりました。

・地域との連携も難しい点が多々あると思いますが、自分にできることから、自分育ちも意識して取組んでいきたいと思いました。

・家庭教育を「しつけ糸」に例えての話を聞いて、自分の子育てを振り返って考えさせられました。

・保育園と地域活動者とのつながりも大切だと思いました。保育園だけでは把握できない家庭問題があることがわかりました。



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