令和4年度「女性に対する暴力防止講演会」を開催しました

18歳から大人に!成年年齢引き下げで見えてきた問題点

日  時:令和4年11月17日(木)13:30~16:30

会  場:アバンセホール

開催方法:会場参加、オンライン参加(後日YouTubeにて録画配信)


「女性に対する暴力をなくす運動」期間に合わせ、女性に対する暴力防止講演会を開催しました。

今年度も、会場参加に加えオンライン参加(録画配信)で開催し、200名(会場61名・オンライン139名)の方にご参加いただきました。

 

第1部 講演 

演題 デジタル性暴力の現状と支援

講師 NPO法人ぱっぷす理事長 金尻 カズナさん 

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 ぱっぷすに寄せられる10代からの相談は、性的な写真を送信したことや、盗撮されて拡散したなどスマホにまつわる被害が多く、親に迷惑をかけたくないという想いや、学校に知られてしまうことを恐れて相談できずに抱え込んでしまう方が多いことを紹介されました。相談の際、若年女性は、“自暴自棄になった”と話される方が多く、性的搾取の加害者は、そんな「社会に希望をもてなくなった瞬間」、「社会とのつながりを見いだせずに居場所を失う瞬間」を見逃さず加害に及んでいる現状があることについて述べられました。

 

 また、男性が被害者になるケースが最近多く見られるようになったことについても紹介され、海外の人とコミュニケーションができる出会い系アプリが流行し、SNSでビデオ通話をするうちに、さまざまな理由をつけて裸の写真や動画を送るよう促され送ってしまったことにより、それを拡散すると脅迫されて金銭を要求されることが起こっている。日本はセクストーション(性的脅迫)の被害国になっていることが懸念されており、法令が整備されていないため、10代から20代が被害に巻き込まれている現状があると話されました。


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 また、被害者の心情としてSNSで個人的な相談にのってもらうと、恩義や申し訳なさを感じて相手の要求に断れなくなってしまったり、大きな要求を断ったときの罪悪感から小さな要求に応じてしまうことがあるといった事例を紹介され、もし相手の要求が性的画像記録だった場合、1回断れなかったことによって、画像は未来永劫ずっと拡散し続け、生涯において不利益を被ることになると訴えられました。また、性的画像が拡散してしまった場合、インターネットで検索ができるため、デジタル性暴力や、デジタルタトゥ*の温床になっている現状があると述べられました。

 相談者は、「まさか自分が巻き込まれるとは思っていなかった」と言う方が多く、性的な画像や動画が一度でもネットに拡散してしまうと、被害者は24時間365日緊張状態に置かれてしまい、常に誰かに見られているという恐れから、精神的に不調を訴える方が後を絶たないということでした。


 また、性的搾取がのさばる社会的要因に、法の未整備、社会の無関心、または、容認する社会があると話され、自分は被害に遭わないと思っている人でも、自分の事として一度考えて欲しいと呼びかけられました。成年年齢引き下げにより、18歳、19歳の方が未成年者取消権を使う事ができなくなったことを大きな問題であると考え、今回のAV出演被害防止・救済法の制定に至ったと話されました。

 

 金尻さんは最後に、「デジタル性暴力や性的搾取の被害にあったときは、それはやめて!と言っていいです。理由を言わなくてもいいです。やめてと言えないときは逃げていいです。逃げられない時は、相談できる人を探してください。信頼できる大人に話しましょう。もしくは相談窓口に連絡してみてください。決してネット掲示版では相談しないでください。」と呼びかけられ講演が終了しました。


(*デジタルタトゥ:撮影された映像が知らないうちに出回り、いつまでも消すことができないという被害)


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第2部 トークセッション 

テーマ そのAV出演契約、やめることができます!

    ~AV出演被害防止・救済法ってどんな法律?~

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登壇者

 NPO法人ぱっぷす理事長 金尻 カズナさん

 佐賀県弁護士会 犯罪被害者支援委員会弁護士 安永 恵子さん

コーディネーター

 アバンセ館長 田口 香津子

  

佐賀県弁護士会犯罪被害者支援委員会弁護士 安永恵子さん 

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 AV出演被害防止救済法は、一般的・抽象的ではなく、場面を限定して細かく規定されており、緊急性・必要性からこのような特殊な法律が制定されたと説明されました。

AV出演契約から、撮影、公表までに関して、

・契約は作品ごとに締結する必要がある

・契約書には、制作者の氏名や連絡先、撮影日、場所、内容、公表の方法や期間、報酬額、支払時期等を明記する必要がある

・契約は書面またはデータで行い、出演者に交付する必要がある

・制作公表者は、契約内容を説明し、説明書面を交付する義務を負う

・出演者が契約書の交付を受けた日または、説明書面の交付を受けた日の遅い方から1か月経過した後でなければ撮影を行うことができない

・出演契約で定めていても、出演者は意に反する性行為の撮影を拒否でき、キャンセルについて損害賠償責任を負わない

・撮影時は、撮影にあたって健康の保護、安全、衛生に配慮しなければならない

・制作公表者は、出演者に対して映像の確認の機会を与えなければならない

・撮影終了後、4か月を経過しないと作品を公表することができないなど

出演者の自己決定権が重視された規定となっていると述べられました。

 成年年齢が引き下げられ、自己決定できる権利を尊重する意味ではメリットはあるものの、未成年者取消権が行使できなくなり保護される対象ではなくなったため、契約に関して教育機会を設けることが急務であり、知識不足につけこまれて被害に遭ったことに対する救済保護も必要になると話されました。


NPO法人ぱっぷす理事長 金尻カズナさん

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 自分で自分の性的画像記録をネット上から見つけ出すのは、ものすごく大変で苦痛でしかなく、多くの方はあきらめてしまうが、それでもあきらめきれないという方から多くの声があり、ぱっぷすは本人に代わって拡散した性的画像記録の削除要請を行う事業を始められたと話されました。

 法律制定の経緯は、成年年齢が引き下げになること、こども家庭庁の設置法案が審議されること、参議院員選挙があるという、この3つの条件が線で結ばれ、3ヵ月でこの法律ができたことは奇跡であること話され、最初は難しいと言われていたが、あきらめず声をあげることの重要性と、被害者の声が届いた法律なので、これを足がかりに、もっといい法律にしていなければならないと述べられました。

 また、学校でできることは予防教育であり、加害者にも被害者にもならない教育がとても重要であると話されました。


アバンセ館長 田口香津子(まとめ)

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 AV出演被害防止・救済法が制定され、成年年齢引き下げ問題ともリンクし、被害者救済につながる動きができるようになりましたが、「地方都市の佐賀にはあまり関係がない、18歳19歳の女性に限ったこと、AV業界の仕組みはよく分からないし、自分たちには縁遠い話である。」と捉える方がいらっしゃるかもしれません。しかし、残念ながらそのようなことはなく、急増するデジタル性暴力と地続きの問題で、居住地や性別に関係なく、身近な友人や家族が被害に遭うリスクがあります。佐賀県にも相談窓口がありますので、ぜひご相談いただきたいと思いますとまとめ、トークセッションが終了しました。


事務局より、相談先などをご紹介

性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター

 「#8891 はやくワンストップ)(全国共通番号)」


佐賀県では、性暴力救援センター・さが(さがmirai)、

 アバンセ女性総合相談で相談を受け付けている。

 

支援センターの紹介動画(学生向け)内閣府のHPの紹介


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  < 参加者の声(一部抜粋) >


全く知らなかった社会問題に対して、非常にリアルにその一端を感じ取ることができました。


自分と関わりのない部分だと思っていましたが、金尻さんのお話をきいて、身近に悩んでいる人がいるかもしれないと思うことができました。また、法律について分かりやすく説明していただけたおかげで、理解を深めることができました。


被害に遭わないために適切な時期の教育の必要性を強く感じました。「断るには理由は要らない」、この事は他のことにも適応出来ることと思います。今回のお話のような現状を知ること及びそれへの対策を社会に醸成していくことの大切さを思いました。


金尻さんの被害予防や支援について、とても熱意が伝わってきました。成人年齢引き下げについてはメリットもあるが、いろんな被害に遭う可能性もあり、今後予防教育等がより必要だと感じた。


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主催:佐賀県    主管:佐賀県DV総合対策センター 

後援:佐賀県弁護士会、佐賀県教育委員会、佐賀県PTA連合会、佐賀県医師会

   佐賀県産婦人科医会、佐賀県警察本部、一般社団法人佐賀県公認心理師協会

   公益社団法人佐賀県看護協会、公益社団法人佐賀県社会福祉士会、佐賀県人権擁護委員連合会

   認定NPO法人被害者支援ネットワーク佐賀VOISS、国際ソロプチミスト佐賀有明

   国際ソロプチミスト佐賀、佐賀県民生委員児童委員協議会、国立大学法人佐賀大学、西九州大学

   西九州大学短期大学部、佐賀女子短期大学、九州龍谷短期大学(順不同)

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