令和3年度学生への意識啓発事業を開催しました

笑って考えるワーク・ライフ・バランス ~ジャンボ宝くじを必ず当てる方法~

 今年度の学生への意識啓発事業は佐賀大学と共催し、キャリアデザインを受講する1・2年生を対象に開催しました。講師に、東京大学大学院教授の瀬地山角(せちやまかく)さんを迎え、「笑って考えるワーク・ライフ・バランス~ジャンボ宝くじを必ず当てる方法⁉~」と題して講演いただきました。瀬地山さんはテレビ番組「世界一受けたい授業」で、東大生へのアンケートで人気講義No.1に選ばれたジェンダー論の研究者。関西弁でユーモアあふれるトークに、学生の皆さんは楽しみながら学んでいる様子がうかがえました。

 

 瀬地山さんは結婚相手を決める前から保育所を決めていたそうで、結婚し子どもが生まれてからは保育所への送り迎えや夕食づくりなどをこなし、今も保育所の経営にかかわっているとのことでした。子育てについては、「男性にできないことは何一つない」と力説され、生物学的性差により男性は出産できないが、子育ての負担が女性に偏りがちなのは、社会的性差(ジェンダー)によるものであり、社会的につくられたものは人同士が相談して変えていくことができると述べられました。

 

 日本の男性の家事・育児時間はとても少なく、2016年の社会生活基本調査によると、共働き世帯の週平均の一日の家事関連時間は、女性4時間54分に対し、男性46分。また、6歳未満の子を持つ夫の育児時間は、妻3時間45分に対し、夫49分。このように男性の著しく短い家事・育児時間は、個々の家庭の問題を超えて、もはや「社会的」に問題にすべき水準であると述べられました。また、母親だけが朝から忙しく家事・育児をこなしながら働き、夫は仕事一辺倒なCM動画を実際に見ながら、固定的性別役割分業の問題についても触れられました。

 

 女性が男性に結婚相手の条件として求めるものとして、2015年に独身者を対象に実施された調査では、「家事・育児の能力」、「仕事への理解」が上位に挙がっており、男子学生に向けて、家庭を築いていく上で家事能力は必須であることを強く伝えられました。

 

 そして、「子育て」を「植林」に例えて、現在の少子化の状況を「山に植林しながら木を伐採する業者の木は、植林のコストがかかり高くて売れず、一方で植林をしないで木を伐採する業者の木はコストがかからず安いので売れる。この状態が続くと山は植林されずハゲ山になっていく。同じように、企業が家事・子育てのリスクがない労働者ばかりを雇い、労働者の子育ての時間やコストを保障することなく働かせるという状態が続いたために、子育てがしづらくなり少子化の現象が起きている。」と説明されました。そして、これらを解消するためには、男性がきちんと家事・育児にかかわり、ワーク・ライフ・バランスを実践していくことが大事であると述べられました。

 

 そして、CM動画も交えながら、男性の生きづらさについても触れられました。コロナ禍で女性の自殺者が増えたことが報じられているが、それでも自殺者の3分の2は男性が占めており、中でも中高年の男性の割合が圧倒的に高く、経済や生活の問題を理由とする自殺が多いとのことでした。このことからも一家の大黒柱として男性にかかるプレッシャーは大きく、重みに耐えかねて潰れてしまうリスクがあり、他にも、倒産や離婚のリスクを考えると、男性だけが稼ぐ一頭立て馬車タイプでは家計のリスクが高いため、共働きで二頭立て馬車タイプにしておくことが、これからの時代のリスク管理として不可欠であると述べられました。

 

 例えば、夫が1日平均3時間の家事・育児を担えば、妻は正社員で働き続けることができ、その収入はまさにジャンボ宝くじに当たったのと同じくらいになるとの考えを示されました。男性の家事を時給に換算すると、男性が稼ぐ残業代よりも高く、妻が正社員で働くことで家計には異次元の収入がもたらされるとのことでした。そのため、夫婦で家事・育児を分担しながら育休を交互に取るなどして、仕事を辞めずに乗り切ってほしいと伝えられました。

 

 最後に、「大学入学はゴールではなくスタートであり、大学は無駄を学ぶところ。何が役に立つかは後にしかわからないけれど、面白いこと、興味のあることをゆっくり見つけてください。」とメッセージを送られました。

 会場 講師

  (令和3年11月10日開催)

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