令和3年度ハラスメント防止啓発講演会を開催しました
さまざまなハラスメントについて正しい認識を身につけてもらい、ハラスメントのない職場づくりにつながることを目的に、佐賀県立男女共同参画センター、佐賀県、厚生労働省佐賀労働局、女性の活躍推進佐賀県会議の主催により講演会を開催しました。
*新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、録画配信形式で実施しました。
配信期間:令和3年12月3日~12月17日
【第1部】講演 「今から始める!ハラスメントのない職場づくり」
講師:原田 直子さん(女性協同法律事務所 所長/弁護士)
第1部では、ハラスメント全般の基礎知識や実際の裁判例など具体例の紹介とともに、ハラスメントのない職場づくりのためにできることを中心にお話いただきました。講演内容の一部をご紹介します。
原田さんが弁護団の一員として携われた日本初のセクハラ裁判「福岡セクシュアル・ハラスメント訴訟」提訴から32年。この訴訟をきっかけにセクシュアルハラスメントが違法とされ、事業所にセクシュアルハラスメント防止のための措置義務が認められ男女雇用機会均等法の改正につながり、セクシュアルハラスメントの概念が世間一般に認識されるようになりました。その一方で、労働局の相談件数の統計では、セクシュアルハラスメントをはじめ、職場のハラスメントは多くを占めている状況です。
ハラスメントは、「嫌がらせ」「いじめ」であり、相手に対する言動により相手を不快にさせたり脅威を感じさせたりするもので、個人の尊厳を侵害する人権侵害です。行為者の意図によらず、受けた側の感じ方が重要となります。「法に規定があるハラスメント」と「法に規定はないが社会的に許されないとされるハラスメント」があります。
【法に規定があるハラスメント】
・セクシュアルハラスメント(男女雇用機会均等法)
・マタニティハラスメント(男女雇用機会均等法、育児介護休業法)
・パワーハラスメント(労働施策総合推進法)
【法に規定はないが、社会的に許されないとされるハラスメントの例】
・モラルハラスメント:精神的苦痛を与えるハラスメント
・ジェンダーハラスメント:「男らしさ」「女らしさ」を強調するハラスメント
・ソジハラスメント:性的指向・性自認に対するハラスメント
・アルコールハラスメント:飲酒に関するハラスメント
・アカデミックハラスメント:大学・研究機関で行われるハラスメント など
職場で起こる各種ハラスメントに共通することは、職位や経験など職場の力関係を反映しており、職場での男女差や社会構造としての男女差が目に見えない圧迫を生み出します。ハラスメントを受けた人が苦痛に感じ、労働環境の悪化にもつながります。事業所(組織)としても、労働者個人の尊厳を不当に傷つけ、個人の能力が十分に発揮されず、職場の秩序や業務の遂行を阻害し、社会的評価に影響を与えかねないのです。
時には意図的ではないハラスメント、アンコンシャスバイアス(無意識のバイアス)によるハラスメントにも注意を払う必要があります。相手に対し、性別や属性、「○○らしさ」による思い込みや決めつけをせずに、相手の立場に立って考え、行動することが重要です。
職場のハラスメントをなくすためにできることとして、次のことが紹介されました。
(1)「ハラスメントを許さない」という組織のスタンスを明確化すること
(2)特に管理職や中心的立場の人を対象としたハラスメント防止のための教育・研修
(3)メンタルヘルス対策:職場(組織)内のストレス対策(NOと言える職場)、加害者・被害者双方に必要
(4)被害の訴えに対する真摯で迅速な対応:「気にするな!」ではダメ
もちろん、相談員体制も大切です。本人の希望に沿ってプライバシーを守り迅速に対応することが重要となってきます。そのためには、複数で、同性の人がおり、かつ総務や人事担当などあて職ではない信頼されている相談担当者がいる相談窓口を設置すること、相談員の研修をすること、相談の目的を共有したうえで共感的な態度で事実関係を聞き取りし、加害者・被害者双方に確認した記録を作成することが必要です。
最後に、職場(組織)内でハラスメントが起こった場合は、就業規則に定める懲戒処分をし、あいまいにしないことが大切です。ハラスメントが認定できずに被害者が非常に悩んでいる場合は、配置転換など職場環境を調整する対策も必要です。また、「ハラスメントがあった」という事実を共有するだけでなく、「ハラスメントになりうる行為はいけない」と研修を実施し啓発活動をすることで職場(組織)の「ハラスメントを許さない!」というスタンスを示すことができ、労働者にとってハラスメントが起こった際に、きちんとした対応をしてもらえるという職場(組織)への信頼を醸成することができますと視聴者へメッセージをいただきました。
【第2部】情報提供 「職場におけるハラスメント防止対策について」
説明:厚生労働省佐賀労働局 雇用環境・均等室 宮﨑佐津美さん
第2部では、労働施策総合推進法の改正に伴い、大企業においては、2020年(令和2年)6月1日から職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務となっており、中小企業においても2022年(令和4年)4月1日から義務化されること、また、セクシュアルハラスメント、妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント防止対策についても強化されており、相談したこと等を理由とする不利益取り扱いの禁止や事業主及び労働者の責務が明確化されていることなどを中心に、「職場におけるハラスメント防止対策について」説明していただきました。
第2部で紹介されたハラスメントに関する相談窓口や情報サイト
- 佐賀労働局雇用環境・均等室
電話 0952-32-7218
(8時30分~17時15分※土・日・祝日を除く)
- 職場におけるハラスメント対策の総合情報サイト「あかるい職場応援団」(厚生労働省委託事業)
(クリックすると、外部のサイトに移動します)
ハラスメント裁判事例や職場のハラスメント対策に取り組む企業へのインタビュー記事、パンフレット・社内研修用資料などが掲載されています。
【参加者の感想(一部抜粋)】
- 組織などでは、習慣化している加害者側の自覚の無いイジメ、性差別など改めて考えてみるいい機会となった。
- アンコンシャスバイアスと初めて聞きました。よかれと思って気遣っていたことが、ものの見方や捉え方のゆがみ、偏りとなり「意図的ではないハラスメント」になることを知りました。
- 2022年4月からハラスメント防止対策が中小企業に義務化されることを初めて知った。ハラスメントを防止し、職場の生産性向上や職員のキャリア形成などに取り組む必要があると改めて考えさせられた。
- ハラスメントについて制度が構築されていく中で、相談窓口の担当者が重要となることが理解できた。ハラスメントが起きた時の対応は非常に重要だが、起こさないことが最も重要であり、意図的でないハラスメントなどを無くすための周知を進める必要があると感じた。