令和3年度「市町男女共同参画担当職員基礎研修」を実施しました

 佐賀県立男女共同参画センターでは、アバンセを会場に、県内の市役所や町役場で男女共同参画行政を担当する職員を対象に、年2回の研修を実施しています。今回は、男女共同参画を地域で普及啓発するために必要な基礎知識を身に着けるために、「第5次佐賀県男女共同参画基本計画から読み解く~そのポイントと男女共同参画のこれから」と題して開催しました。

   

講師写真

 講師には、佐賀大学教育学部教授の中西 雪夫さんをお迎えしました。中西さんは、令和3年3月に策定された「第5次佐賀県男女共同参画基本計画」に佐賀県男女共同参画推進審議会会長として関わられました。今回は、そのご経験から第5次佐賀県男女共同参画基本計画のポイントについて、また、中西さんのご専門である家庭科教育から、男女共同参画の推進に必要な基礎的な知識についてご講義いただきました。


 研修前半は、第5次佐賀県男女共同参画基本計画策定に向けた議論から、男女共同参画社会基本法と第5次男女共同参画基本計画、そして、第5次佐賀県男女共同参画基本計画の関連性を踏まえて、次の3点を切り口にお話いただきました。

1.男女共同参画社会基本法の基本理念にある「国際社会の動向を踏まえた取組」は、佐賀県版に必要?

2.ポジティブアクションは、逆差別ではないの?

3.キーワードは、「男女双方」と「防災」


 まず、国際社会の動向を踏まえた取組は、国際社会とともに歩むといった大切な視点であり、施策として取り組むことは難しいが、理念として取り入れることは大事だという議論が策定過程にあったということをお話いただきました。

 また、ポジティブアクションは、男性差別ではなく、女性が差別されてきた(されている)状況を改善するための措置であり、「男女共同参画社会基本法」や「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」においても積極的措置や特別措置をとることは差別ではないとされていることを教えていただきました。

 そして、性は多様であり、男性も女性も性別に関わらずに、男女共同参画社会をつくるためには、みんなの意識改革が必要だという視点と、第4次佐賀県男女共同参画基本計画には入っていなかった「防災」が昨今の災害の状況を踏まえ、盛り込まれたことをお話いただきました。

 前半のまとめとして、意識改革を進めていくためには、男女共同参画担当が庁内の全部局を統括する役割を担い、横断的に取り組んでいかなければならないとアドバイスをいただきました。


 研修後半は、まず、ジェンダーギャップ指数(GGI:男女格差指数)の日本の順位(156か国中120位)やスコア(0が完全不平等、1が完全平等、日本の総合スコアは0.656)から、日本の現状と課題について確認しました。日本は、特に「経済活動の参加と機会」と「政治的エンパワーメント」の2分野におけるスコアが低く、2006年のデータと比較してもスコアの変化はあまりありませんが、G7各国と比べることで、他国がスピード感をもって男女平等の取り組みを進めていることを学ぶことができました。

 次に、既婚男性の「家事シェアリング」に関する調査を紹介されました。家庭科の履修状況は、男女別で履修する家庭科(例えば、男性は技術、女性は家庭科など)から、男女ともに履修する家庭科(男女共修)へと変わっていきました。高校で男女共修で家庭科を学んだ43歳以下(共修世代)は、男女共修で学ばなかった別修世代と比べ、「家事をするのは家族として当たり前」と考え、家事の実施率が別修世代よりも高い結果が出ているとのことです。これは、妻が専業主婦の場合においても言えるとのことでした(参考:既婚男性の「家事シェアリング」に関する 調査結果)。また、共修世代の多くは、「家事は『分担』ではなく、『シェア(共有)』するもの」と考えているとの結果も出ているそうです。分担という言葉には、妻が主で担い、夫がサポートするという意味合いで捉えられる場合が多く、男女共同参画社会をつくるためには、シェア(共有)の意識が大事だということを学びました。

 最後に、男性育休取得率92%の千葉市の事例を取り上げられました。従来のやり方に捉われずに「発想の転換」をしながら男女共同参画の推進に取り組んでいただきたいとまとめられました。

*令和3年9月16日(木)実施

講座の様子講座の様子

【参加者の声】(一部抜粋)

  • 県の計画策定にあたってのポイント議論された内容など、市の計画策定作業のうえでとても参考になった。

  • 家事分担意識が高まらない背景に、家庭科履修の差があることを初めて知った。

  • 各担当部局との連携を行うことが重要だと感じた。

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