令和3年度 地域女性リーダー養成セミナーを開催しました

「ワタシサイズの一歩~出会いを力に、学びを行動に~」

 佐賀県立男女共同参画センターでは、「私たちの暮らしをもっとよくしたい」「地域や社会で何かを始めたい」など、想いをもつ女性を対象に、地域女性リーダー養成セミナーを開催しています。

 今年度は「ワタシサイズの一歩~出会いを力に、学びを行動に~」をテーマに、4回の連続講座を開催しました。

第1回 11月7日  つぶやきワークショップ ~個人的なことは社会的なこと~

講師:髙﨑 恵さん(オフィスピュア 男女共同参画政策アドバイザー/ワークショップデザイナー)

(11月7日 日曜日 13時30分~16時30分 アバンセ美術工芸室)


 第1回と第2回は、昨年に引き続き、髙﨑恵さんを講師に迎えました。髙﨑さんは始めに「今年度は東京オリンピック組織委員会での『わきまえない女』発言から始まり、『ジェンダー平等』という言葉が注目され、多くの人たちに男女共同参画の推進がこの社会に必要だと共有され、扉が開きかけている。私たちが地域の中でその開いた扉を閉じさせることなく、もっと開いていくことが大事。今回の講座では、そもそも男女共同参画の視点ってどういうことなのかを、暮らしの中から考えていきたいと」と述べられ講座をスタートされました。

 

 第1回のテーマは『つぶやきワークショップ』。私たちが暮らしの中で感じているモヤモヤを、男女共同参画の視点で振り返り、出てきた『つぶやき』を紙に書きます。この『書くこと(ジャーナリング)』はとても大切な作業で、自分の心の中を整理する上でとても有効なのだそうです。何かあった時、誰かに話すことができなくても書いてみることで心の回復が早くなると言われているそうです。

 

 次は、それぞれが書いた『つぶやき』をグループで共有します。つぶやいた方に、その想いを語ってもらい、その想いを聞いてどう思ったかをグループのみんなで話し合います。

 この『話し合い』ですが、日本人は子どもも大人も苦手な人たちが多く、子どもに苦手な理由を聞くと必ず出てくる言葉が『違い』だそうです。なので、『私はこう考えているけど、あなたはどうですか』というような私を主語とした『Iメッセージ』で話すことが大切で、違いを重ねて新たな価値を作り出す『対話』、これからのリーダーは対話する組織づくりを目指すことが必要だと話されました。

 

 

 最後は、グループの中で出てきた『つぶやき』の中から気になったものなどを発表します。発表するときの約束は『傾聴』です。遮らずに最後まで人の話を聴くこと。特にリーダーには必要なスキルです。

 皆さん、職場での男女の賃金格差や働き方の問題や、結婚など生き方に関する世代間でのギャップなどを発表してくれました。髙﨑さんは、「個人のつぶやきですが、それはその人一人に背負わせてはいけないつぶやきです。自分では選べない性別によって生き方や働き方が限定される社会を変えていくことが必要で、それが男女共同参画社会づくりです」と述べられました。

第2回 地域づくりに必要な男女共同参画の視点 ~コロナ禍で見えてきた課題から~

講師:髙﨑 恵さん(オフィスピュア 男女共同参画政策アドバイザー/ワークショップデザイナー)

(11月14日 日曜日 13時30分~16時30分 アバンセ第2研修室)

 回は、「地域づくりに必要な男女共同参画の視点~コロナ禍で見えてきた課題から」と題し、コロナ禍で浮き彫りとなった、ジェンダーによる様々な課題を振り返り、地域課題の解決に不可欠な男女共同参画の視点を学びました。はじめに、内閣府の「コロナ下の女性への影響と課題に関する研究会報告書」等に掲載されている様々なデータを紹介されました。その一部をご紹介します。

 

【所定内給与における男女間格差】

 男性一般労働者を『100』とした場合、女性一般労働者の給与水準(2019年)は『74.3』

 この格差の要因としては、固定的性別役割分担意識が平均値に基づくいわゆる「統計的差別」などを生んでいることだと、この報告書には書かれています。この統計的差別は、平均的に女性の離職率・転職率が高い等の理由から、企業が女性を比較的容易な職務に割り当てること等により、結果として女性の賃金が低くなることだそうです。この女性に不利な職場慣行や環境を変えていく必要があります。

 

【緊急事態宣言下(2020年5月第2週)におけるテレワーク実施状況】

 男性33.9%、女性20.3%  正規雇用34.9%、非正規雇用13.4%

 産業別にみると、医療・福祉・保育関係のほか、対人サービス、小売業など女性の就業者割合が高い産業では、テレワーク実施率が低いそうです。今後のテレワーク実施希望(2020年12月時点)については、就業者全体の約4割が希望していたそうです。一方で指摘されているのが、女性の負担が増えたということ。家庭内の固定的な性別役割分担意識が変化しないまま、柔軟な働き方が進んでいくのであれば、女性の労働参画や活躍にはつながらない。国連も父親がケアの役割を主に担う又は共有することで、ポストコロナにおいて無償ケアへの参画が変わっていく可能性を指摘し、こうした変化を積み重ね、強固なものとしていく必要性を指摘しています。

 

【就業者数の前年同月差(令和2年4月~5月の前年同月差の一カ月当たり平均)】

 女性マイナス70万人、男性マイナス39万人

 男女共に緊急事態宣言が発出された令和2年4月に前の月と比べて就業者数が大幅に減少しており、男女で比較すると、女性の減少幅の方が大きくなっています。そもそも、女性の方が給料も低く、このような有事の際に仕事を失っているのも女性が多い状況です。これは個人の裁量の問題ではなく、社会の在り方の問題であり、男女共同参画という視点を社会の中に根付かせていく必要があります。

 

【女性に対する暴力の状況】

 2020年度全国の配偶者暴力相談支援センターと「DV相談プラス」に寄せられた相談件数を合わせた数は

 前年度比約1.6倍の190,030件

 コロナ下の生活不安やストレス、外出自粛による在宅時間の増加等により、DV相談件数が増加し、女性に対する暴力の増加や深刻化が懸念されています。女性に対する暴力は重大な人権侵害であり決して許されるものではありません。これからの地域づくりは、人権を基本的価値において進めなければなりません。

 

【2020年の自殺者数の状況】

 女性7026人(対前年差+935人)、男性14,055人(-23人)

 コロナ下であっても男性の方が数は多いですが、女性・子どもの自殺者数の増加が指摘されています。特に、女性の場合は無職者(主婦)と女子高生の増加幅が前年比で大きかったそうです。人と接する機会が減ったことで、孤立感を深め、一気に自殺者が増えていったのではないかと推察されています。色々な方と接点を作っていくことは、多様な人で構成されている地域に期待できるところです。

 様々なデータから、コロナ下で顕在化したこれらの現状の根底には、強固な「固定的性別役割分担意識」があることが分かります。この報告書では「コロナ下のいま、家庭内の役割分担を超えて、社会の諸制度の前提ともなっているジェンダー格差を所与とする規範や慣行にメスを入れない限り、ポストコロナのニューノーマルな世界において、日本は一歩も二歩も大きく後れをとることになる。そこで、ここで強調したいことは、さまざまな諸政策を企画、実行するに当たって、ジェンダーという視点を入れるべきということである」と書かれています。これは、地域づくりを考えていく上でも必要な視点で、これからの地域のリーダーに男女共同参画の視点が不可欠だということを学びました。

※参考データ

・コロナ下の女性への影響と課題に関する研究会「コロナ下の女性への影響と課題に関する研究会報告書」令和3年4月

・内閣府「男女共同参画白書」 令和2年版、令和3年版

・厚生労働省「新型コロナウイルス感染症に起因する雇用への影響に関する情報について(6月18日現在集計分)」   

第3回 ワタシサイズのリーダーシップ

講師:福成 有美さん(株式会社アテンド代表取締役)(11月20日 土曜日 13時30分~16時30分 アバンセ第3研修室)


 第3回のテーマは、「ワタシサイズのリーダーシップ」。講師には、人材開発、組織開発に関するコンサルティングや研修などを行っている、福成有美さんを迎え、開催しました。

  福成さんは、「今日皆さんと一緒に考えていくことは、リーダーシップって何なのかという事です。このリーダーシップって、いろんな考え方があり、こういうものですよということを一つの概念として皆さんにお伝えするのは中々難しい。なので是非皆さんの、『ワタシサイズのリーダーシップ』というものを、今日の3時間の中でつかみ取って帰っていただきたいと思います」と講座をスタートされました。

 

【リーダーシップって何?】

 まずは、自己紹介をして、「理想のリーダー像」と「その理由」を紙に書き出し、グループでシェア。それをホワイトボードに貼り出し、みんなで見比べてみると、人それぞれ様々なリーダー像があることが分かりました。次は「リーダーシップって何?」をテーマにグループで話し合い、発表しました。また、福成さんは、正解ではなく私が答えるとしたら「沸き立つもの」や「影響力」と表現するとおっしゃいました。

 また、リーダーシップの概念は様々にあり、TPOで変わっていくものだと述べられた上で、「オーセンティックリーダーシップ」を紹介されました。これは、自分らしいリーダーシップを発揮しましょうというものだそうです。この自分らしいリーダーシップを探っていく際に大切な要素が(1)自分の目的が明確になっていること(2)自分の価値観に気付くこと(3)本音で話すこと(4)人間関係(5)自己規律。リーダーシップはリーダーだけが持っているものではなく誰もが持っているので、それぞれが「ワタシらしいリーダーシップ」を発揮してほしいとおっしゃいました。


【リーダーに必要な力とは?】

 リーダーシップに1つの答えがなく様々な概念があるように、リーダーシップに必要な力も様々。その中から以下の3つを紹介されました。

1.「情報○○力」→情報をどう扱っていくかが重要(発信力、聞き取る力、観察力などなど)

2.「フォロワーシップ」→フォローする人たちにのみ必要な力ではなく、リーダー含め全員に必要

3.「ファシリテーションスキル」→人々の活動が容易にできるよう支援し上手くことが運ぶよう舵取りすること

 

【ファシリテーションスキルを身につける】

 ファシリテーターの役割は「言える化・聴ける化・見える化」を通して、人々を「つなぐ」こと。そうすると、チームとしての総合力が引き出されていき、また、対話ができるチームは良くなっていくそうです。

 

【合意形成に至る「企画会議」を開こう】

 最後は、グループの中から一人がファシリテーターになり、「知る、繋がる、仲良くなる 元気になれる懇親会を開こう」をテーマに企画会議の体験を行いました。ファシリテーターはホワイトボードに話し合いの内容を書きながら進めていきます。

 まず、ファシリテーターはどんな懇親会にするか、一人ひとりの意見を聞き合います。その際、結論だけではなく、なぜそう思うのかを具体的に引き出し、会話を対話にしていくことが大切です。その中から、大切にしたい事やアイデア等を明確にし、最後に具体的な計画を決めていく手順です。ファシリテーションのポイントは、話し合う全員が同じ分量話し、同じくらい聞き合うこと。参加者の心理的安全性が高くなるとおっしゃいました。

 

 福成さんは最後に、「私とあなたの想いを合わせ動き出すこと、これがまさにチームを作るということ。チームとしての総合力を高め、目的を達成する際に必要なことは、一人が頑張るのではなく、それぞれが自身の役割を果たして、皆の想いを合わせ動いていく、そういったファシリテーター型のリーダーシップを発揮していただきたい。一人では出来ないことを、誰かと共に。その源泉があなたのコアリーダーシップだと思います。今日から始められる一歩が今日の3時間でキャッチアップ出来ていたら嬉しいです。」と参加者にメッセージを送られました。

第4回 交流会 人と地域のつながり方~周囲の力を引き出す巻き込み力~ 

パネリスト:泉 万里江さん(佐賀女子短期大学社会連携推進室コーディネーター)

パネリスト:林 美保子さん(さくらむすび代表)

コーディネーター:福成 有美さん(株式会社アテンド代表取締役)

(11月27日 土曜日 13時30分~16時00分 アバンセ第3研修室)


 最終回は、様々な地域活動のリーダーとして活躍されている泉万里江さんと、林美保子さんをパネリストに迎え、現在取り組まれている活動や、ライフストーリーなどお話しをお伺いしました。(聞き手:福成有美さん)

 

 林さんは、白石町の魅力を発信する団体「さくらむすび」の代表。メンバーとは、白石町外のイベントでの偶然の出会いをきっかけに、白石町でも何かやりたいと意気投合。桜の季節にスタートし、いろんなことを結んでいきたいという思いから、グループ名を「さくらむすび」に。多様なスキルを持つメンバーが集り、スムーズに活動はスタート。「やれるときに、やれるひとが、やれることを楽しくやっていこう」をモットーに自分たちがワクワクできる活動をしているそうです。自らが暮らす町の魅力を発見し、楽しみながら発信していらっしゃり、紹介いただいたイベントはどれも楽しそうでした。

 コロナ禍の2020年のイベントは全て中止となったそうですが、白石町のPRブックや、かわら版の発行、HPの立ち上げなどを実施。2021年はイベントも少しずつ再開しているそうです。そんな活動の成果が評価され、佐賀県から「令和3年度 佐賀さいこう表彰(自発の地域づくり部門)」を受賞。白石町は食や農、自然の魅力がたくさんある町。今後も、それを楽しく発見・発信していきたいと楽しそうに話されました。

 

 泉さんは、佐賀女子短期大学を卒業後、幼稚園・小学校に勤務。結婚で牛津に移り、出産を機に退職。自分の子どもは自分の手で育てたいという夢から、家庭に入ったものの、知り合いは夫だけ。社会に取り残された気持ちで、寂しい日々を送っていたそうです。当時は子育て支援も充実していなかったことから、役場に子育てサークルを作ってほしいと何度もお願いしたそうですが、実現せず。だったら自分で作ってしまおうと、子育てサークルを立ち上げたところ、最初のサークル開催日には県内から65組もの親子が集まりニーズの高さに驚かれたそうです。

 それから、お子さんが小学校に進学する頃、サークルを運営した仲間と、自分たちも社会に出て働きたい、自分が子どもを預けても安心な保育施設を立ち上げたいという話になり、当時アバンセで開催されていた「女性起業家セミナー」に参加し、その勢いのまま借家を探して仲間と認可外の保育施設を立ち上げたそうです。そこでは、幼稚園勤務時代には叶わなかった「抱っこと言われたら抱っこができる保育」が実現でき、12年間園長を勤められました。

 その後、東日本大震災をきっかけに被災地支援に携わり、1年半、無給のボランティアを続ける中、短大の恩師と出会い、佐賀女子短期大学で働くことに。そうこうする中、熊本地震が発生し、学生ボランティア部「サンキスト」の立ち上げの支援にも携わり、現在も活動を続けているそうです。

 また、泉さんはこれまで色々な審議会等の委員も務めていらっしゃいます。最初はほとんどが男性の委員ばかりの中緊張されたそうですが、小城市をよくするには女性の声を届ける必要があると感じたそうです。事前の資料の読み込みなど大変なことも多かったそうですが、自分の意見が実現されたこともあり、やって良かったと述べられました。

 

【お二人から皆さんへのメッセージ】

林さん:一人でやろうとせず、同じ思いを持ってワクワクを共感できる仲間づくりを!

泉さん:一生懸命になりすぎると、自分のことを忘れがち。まずは自分を大事に。

 

【みんなでワタシサイズの一歩宣言】

最後は参加者みんなで「ワタシサイズの一歩」を一人ずつ宣言しました。

 

 最後に、コーディネーターの福成さんは、「林さんも泉さんも、一見対照的なお二人でしたが、共通するのは自分の課題から始まり、楽しみながら活動していること。そして「沸き立つもの」。頭で考えすぎるより、まずやってみる。前回の講座から何度もお伝えしていますが、この「沸き立つもの」は皆さんの中にも必ずあると思います。気付いてないかもしれないし、過小評価しているのかもしれない。そこに気付いていくことが、一歩踏み出すことにつながっていくのではないかと思います」と述べられました。

参加者からの感想(抜粋)

  • 各地で皆さん熱を持ってやろうという意気込みを感じました。地域おこしで私も何か出来ることがあるかなとおもいます。
  • 4回充実したセミナーでした。
  • 今日の学びを発信する。具体的な計画はありませんが、とりあえず今日からできることを始めます。
  • 出会いに感謝です。ありがとうございました。

チラシ (848KB; PDFファイル)(令和3年度地域女性リーダー養成セミナー)

トップへもどる