令和3年度生涯学習関係職員実践講座(基礎編2)報告

佐賀県立生涯学習センターでは、生涯学習・社会教育関係職員に必要な知識や実践力を身につける「生涯学習関係職員実践講座」(基礎編、ステップアップ編、地域支援編)を行っています。

基礎編2は、会場受講(佐賀市立嘉瀬公民館)とオンライン受講のハイブリッド形式で開催しました。

(共催:佐賀市地域振興部公民館支援課)




基礎編2

誰ひとり取り残さない伝わる情報の届け方 ~広報が変わると住民と、まちが変わるって、ホント?~

令和3年10月19日(火)13時00分~16時30分

広報が変わるとなぜ住民とまちは変わるの?

【講師】佐久間智之さん(PRDESIGN JAPAN株式会社代表取締役)

講師の佐久間さん


講師の佐久間さんは埼玉県からオンラインでのご登壇です。元埼玉県三芳町職員という経歴をお持ちの佐久間さん。在職中、読まずにゴミ箱に捨てられる広報紙を目にされ、その時に「住民に広報紙を手にとって読んでもらうことはとても大事なこと。もっと情報が伝わる工夫が必要だと気づかされた」と話されました。そして、「日本一の広報を作る」と宣言し自ら異動を申し出て、広報担当として仕事に取組むことに。一から広報を学びながら、宣言通り全国広報コンクールで内閣総理大臣賞を受賞されました。三芳町の広報が『住民に伝わる広報』へと変わったことで『まちが好きという住民が増えた』『住みたいまちランキングの上位にアップした』等の嬉しい変化がみられたそうです。

こうした経験から『公務員の広報力を1%でもあげると日本が変わる』との思いで、令和2年に18年間勤められた三芳町役場を退職。その翌日には会社を設立し、現在は全国で広報や人材育成の研修講師として活動されています。


社会教育・生涯学習の仕事においても、公民館やセンター等のことを地域住民の皆さんに知ってもらうための広報活動はとても大切です。そこで、佐久間さんのこれまでの経験から、広報における『誰ひとり取り残さない』という考え方を学び『伝わる広報』への意識を高め、これからの活動に活かす機会となる講座を開催しました。


会場の様子

会場の様子


はじめに「広報紙を手にとってもらわなければ意味がない」と述べられ、まずは手にとってもらう表紙づくりから考え、次に紙面づくりに入っていくプロセスを紹介されました。ポイントの一つにあげられたのは『主役は住民』という視点です。人物写真は訴求力が高いという点を活かし、表紙や紙面に住民の写真を用いることを意識したところ、行政の情報を一方的に伝えるだけの広報紙から、紙面に登場する住民と読む住民が会話する『広報でコミュニケーション』できるデザインに変わったと話されました。三芳町の場合、若い人に読んで欲しいとリニューアルしたところ、高齢者の方も高い割合で読まれていることがわかったそうです。若い人が見やすいデザインは全世代見やすく、ここにいろんな仕掛け(ユニバーサルデザイン(フォント、カラー等を意識する)をすることで、プラスの方向につながったと述べられました。


また「情報発信は住民の行動変容につなげることができる。命を守ることもできる」と佐久間さんは話されました。例えば公民館で開催する健康講座の情報を『住民が知る』そして『参加する』ことにつながれば、健康寿命を延ばす可能性が生まれます。もし情報が伝わらなければそうした可能性を見出すことはできません。

さらに、住民に伝えることをしていない情報、ただ載せているだけの情報は『アリバイ広報』だと言われました。行政が伝えたいことと住民が知りたいことにはズレがあるので、情報を整理して、わかりやすい言葉で適切に届けることが大切。『あなたに対しての情報です』と一目でわかることが大事と話されました。


そして、多様化する社会への対応として、デジタルとアナログ広報、SNS(LINE、ツイッター、YouTube等)の活用について触れられ「SNSの活用は、SNSをすることが目的ではなく、ターゲット層に適したツールを利用することが大事。どのタイミングで配信するのか考えて運用しないと情報はなかなか刺さっていかない」と、年代別に適したツールを紹介しながらアドバイスされました。


講義の様子

会場からの質問


佐久間さんは最後に「皆さんが抱えている事業は住民の皆さんにとってダイヤモンドのように輝くものです。広報を研磨して磨けば参加者は増えてきます。伝える(自分が相手に伝える)のではなく伝わる(相手にどういう風に伝わるか)を意識することが重要です。職員全員が広報担当という意識を持って取り組んで欲しい」と呼びかけられました。

誰ひとり取り残さない社会を目指すためにも、広報活動を通して私達ができることは何かを考える必要性をあらためて考えさせられました。

『広報が変わると住民の行動変容につながり、住民が変わるとまちが変わる』

佐久間さんの広報への取組み実践から多くの学びを得ることができました。

「明日からできる伝わる情報」~できることを見つけて始める~

【進行】佐賀県立生涯学習センター企画員


後半の時間はグループワークに取組みました。(オンライン受講者には後日レポートを提出してもらいました)

グループに分かれ、持ち寄った『公民館だより』や『講座チラシ』を見せ合いながら、それぞれの公民館等で行っている広報活動について語り合い、情報共有と明日からできる取組みについて意見を交わしました。


ワークの様子

ワークの様子

ワークの様子

発表の様子

発表の様子発表の様子


グループ発表では「写真の使い方、見やすいフォントの使用、色の使い方、余白を活かす等、参考になることがたくさんあった」「すぐにでもできそうな手法を学ぶことができた。ぜひ明日から取組みたい」との意気込みが語られました。また「毎年同じ原稿に日付を変えて使っていた。一から見直したい」等、相手のことを考えずに情報を載せておけばいいという『アリバイ広報』になっていた点を反省する声も聞かれました。

講義やグループワークを通し、参加者それぞれに、広報に向き合うモチベーションの高まりが感じられました。


まとめの話(アバンセ生涯事業部長)


閉会では佐賀県立生涯学習センター事業部長の関より「この講座では、他の市町や他の公民館等職員の思いを知ってもらい、互いに情報共有することも大きなテーマです。ワークでは活発に話し合う様子を見ることができました。職場に戻ったら、他の職員にも今日学んだこととを伝え、皆さんが付箋に書き出したチャレンジしたいことを一つでもいいので、チラシ等の広報に活かしてください。もし上手くいかなかったら他のやり方に上手くいく手立てがあるはずです。まずやってみましょう」とエールを送りました。


集合写真

参加された皆さんの『伝わる広報』に期待しています!

参加者の声(アンケートから抜粋)

・以前からあまり変わらない広報紙を作成していたが、今回研修で手にとって読んでもらわなければ何も意味がないことがよくわかりました。今後は誰でも読みやすくわかりやすい紙面を作成していきたい。

・広報紙を作ること自体が目的になりがちな時があることを再認識できた。伝えることと伝わることの違い、伝わる広報紙にするためにどのような創意工夫があるのかが、具体的でわかりやすかった。

・これまでの物とこれからの物と変更すべきところは変更し、仕事を行っていきたいと思う。

・これまで特に文章を作る点においては、ただ伝えることだけに意識が向いていましたが、そもそもそこが誤りだったことがわかりました。これまでの視点とは意識を変える必要がありますし、変えなければならないと思います。


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