家庭教育支援者リーダー等養成講座

家庭教育支援者リーダー等養成講座第4回報告

今年度の家庭教育支援者リーダー等養成講座のテーマは「Withコロナ親子への支援のカタチを考える」です。日常生活を含む多くの活動が様変わりしたコロナ禍の中では、密や接触を避けるなどの新しい生活様式が求められるなど、その多くがこれまでに経験したことのない事ばかりでした。

それは家庭教育・子育て支援の現場でも同じで、活動に取り組まれている皆さんにとっては模索の一年だったようです。その想いを持ち寄って、みんなと一緒にwithコロナの中での「それぞれの支援のカタチ」を考えていきました。

 

   

 

第4回 Withコロナでも変わらぬ子どもの理解と支援~発達障がいを持つ子どもへの関わり方から考える~

開催日時:2月12日(金)1330分~1630

講師:日野 久美子さん(佐賀大学大学院学校教育学研究科 教授)

4回目は佐賀大学大学院学校教育学研究科 教授の日野久美子さんを講師に迎え、発達障がいを持つ子どもへの関わり方から、子どもの「理解」と「支援」について考えました。

 【講師】日野 久美子さん(佐賀大学大学院学校教育学研究科 教授)

日野さんははじめに、人が健康であることを全人的にとらえたWHO(世界保健機関)憲章前文()を紹介され、子どもを身体面・精神面・社会面から多面的に理解することで、子どもの気持ちが満たされる支援につながることを話されました。

※WHO(世界保健機関)憲章前文

「健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、全てが満たされた状態にあることをいう」

 

特別支援教育の中の通級指導、特別支援学級、特別支援学校などの仕組みにも触れられ「発達障がいを持つ子どもがどこに該当するかは、その子がどのくらい主体的に取り組めるかというところも、判断のひとつになる」と話されました。それらは、共生社会を目指して必要な援助を、必要な形で必要な子どもに届けるための仕組みだそうです。

また、子どもが小学校へ進む際に、園と小学校の先生たちの間で引継ぎのすれ違いが生じやすいことについて、「一人の子どもの成長」を見守る園と、「集団活動による成長」を促す小学校というように、学んでいる“場”が違うために起こりうることを示されました。そのような評価の違いの差を小さくするためには、子どもの発達段階とその過程に応じた環境(学びの場)を知ることも大切だそうです。


それから、発達障がいは大きく3つのタイプに分けられ、幼児期から児童期、青年期といった発達段階での周りの期待の変化によって診断名が変わることもあるなど、発達障がいについての基礎的な知識を学びました。

  発達障がいのタイプ

  • 学習障害(LD…学習上の問題)
  • 注意欠陥・多動性障害(AD/HD…行動上の問題)
  • 自閉症スペクトラム(ASD…コミュニケーション上の問題)

これらの発達障がいの症状が、脳機能の問題であることを踏まえて、障がいを持つ子どもが普段どのように見えているのか、また、物事を理解できない時にどのような心理状態にあるのかを、受講者は「図と地の弁別」に関する演習を通して疑似体験しました。

見方や視点を変えることで解ける問題に悪戦苦闘し「自分だけが分からない」という場面で生じる不安や焦り、悔しさ、恥ずかしさ、自信喪失といった心理状態を体験し、障がいを持つ子どもに対して具体的にどのような声かけができるのかを考えました。


    

  

続いて、日野さんは聴覚認知についても触れられ、そこに障がいを持つ子どもに対して、どの時点で支援をするのが望ましいかを受講者に投げかけて、場面の展開をしながら具体的に示されました。

障がいを持つ子どもは、物事をその場ですぐに理解できない時でも、これまでの経験から答えを導き出そうと、頭の中で必死に検索をし続けています。支援者はそれに気づき、子どもの心の安心を保証しつつ、他人にサポートを求めることができる雰囲気にすることで、その子が大人になった時に、スムーズに周りの人へサポートを求めることができるようになるそうです。

 

これらが発達障がいの全てを表すわけではなく、困った状態になった時の子どもの心理状態にしても、あくまで一つの事例です。「支援者自身にも『見方の癖』があることを自学した上で、支援者自身がどれだけ支援方法や声かけを変えて関わっていくかが、子どもを理解することにつながる」と話されました。

 

    

そして子どもが困ることには、自分ができないことそのものよりも、周りから「どうしてできないの?」「何回言ったらわかるの!」などの『負のメッセージ』を与えられることであり、それが自己評価の低下や、自分に対する諦めにつながるそうです。不登校や非行の状態にある子どもの背景には、このような発達障がいからの二次障害の可能性が隠れている場合もあるということでした。

 

支援者として障がいを持つ子どもへの効果的なアプローチは、行動のきっかけに働きかけることだそうです。

行動全体を一連の流れとして理解し、必要な時に特性に応じた環境や課題の調整、また、特性に応じた手助けをしていくことで、子ども自身が自分の特性を客観的に認識し、対応の仕方を獲得していく、そうすることで子どもの自立する力が蓄えられ、支援する量はだんだんと減ってくるそうです。

「子どもは育つ存在で支援されるだけの存在ではない。困った状況を増やすのも減らすのも環境ではないでしょうか」という日野さんの言葉に、受講者は大きく頷いていました。


    


一生懸命だからこそ、ついつい口に出してしまう大人の言葉かけについても『か・き・く・け・こ』になぞらえて、時々見直してみることを提案されました。そして、言い過ぎたと思った時は素直に子どもに謝ることも大切なことだそうです。

最後に日野さんは「私たちの教え方で学ぶことができない子どもには、その子どもの学び方で教えなさい」という言葉を紹介されました。この日、多くの気づきと学びを得た受講者に向けて「『この支援が良かったかどうか』についての答えは子どもの中にあります。皆さんにはこれからも、発達障がいを持つ子どもへの理解に基づく関わりでアプローチし、支援者の力を発揮していただきたいと思います」とエールを送られました。

 


 講座の感想(アンケートより一部抜粋) 



・日野先生が現場の経験豊富な分、事例が具体的で、言葉かけや子どもへの理解が深まりました。

・発達障がいの子は特別だと思っていた自分に気付きました。

・関わっている子どもたちの顔が浮かび、自分の考え方を見つめ直すことができました。つい、できないことに目がいきますが、成功体験は大切ですね。積み重ねてあげたいと思いました。

・演習を交えての発達障がいの子どもの気持ち、子どもの関わり方を分かりやすく学べて良かったです。

・小さな子どもとの関わり、気持ちの伝え方、言葉の伝え方、大事だと思いました。

・「か・き・く・け・こ」見直してみたいと思います。

・学んだ事を早速、職場で共有し実践していきます。もっと聴きたい!と思う内容でした。

・発達障がいだけではなく、一人一人の関わりにも大切で大事なお話でした。

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