家庭教育支援者リーダー等養成講座

家庭教育支援者リーダー等養成講座第3回報告

今年度の家庭教育支援者リーダー等養成講座のテーマは「Withコロナ親子への支援のカタチを考える」です。日常生活を含む多くの活動が様変わりしたコロナ禍の中では、密や接触を避けるなどの新しい生活様式が求められるなど、その多くがこれまでに経験したことのない事ばかりでした。

それは家庭教育・子育て支援の現場でも同じで、活動に取り組まれている皆さんにとっては模索の一年だったようです。その想いを持ち寄って、みんなと一緒にwithコロナの中での「それぞれの支援のカタチ」を考えていきました。

 

   

 

第3回 Withコロナでの支援のカタチⅠ~“現場”がつなぐ家庭と地域~

日時:令和3129() 1330分 ~1630

講師:山口 ひろみさん(NPO法人唐津市子育て支援情報センター センター長)

事例発表:▪江口 浩文さん(佐賀市立嘉瀬小学校 校長)

         ▪中村 由美子さん(さが多胎ネット代表・佐賀女子短期大学 非常勤講師)

 

子どもや親に直接関わる“現場”では、コロナ禍の中どのようなことが起きていたのでしょうか。そして、現場での視点から見えてきたもの、感じたこと、そのうえで人や家庭や地域をつなぐために、どのような支援や活動のカタチがあるのでしょうか。今回は実際に現場で指揮をとられているお二人の事例から学びました。

 

【講師】山口 ひろみさん(NPO法人唐津市子育て支援情報センター センター長)

     

【事例発表】  江口 浩文さん(佐賀市立嘉瀬小学校 校長)         中村 由美子さん(さが多胎ネット代表・佐賀女子短期大学 非常勤講師)

事例発表

最初に佐賀市立嘉瀬小学校校長の江口浩文さんに、学校教育現場の視点からお話しいただきました。

緊急事態宣言下での学校現場と家庭の混乱と、繰り返されるコロナ感染の報道によって、医療に従事している母親の身を案じて側から離れることができなくなった子どもがいたことや、多くの制限や決まりの中で不安を抱える子どもたちがいたことを話されました。江口さんは、子どもたちの心の繊細さと報道の難しさというものを改めて感じたそうです。

 

その頃の社会全体がそうであったように、学校でも行事や学習にいろいろな制限や変化が生じました。

江口さん自身も、安全を第一に考えると学校行事は中止した方がいいのでは…と考えてしまうこともあったそうですが、「この学年でしかできない学び、一度しかできない学びがある!学びを止めてはいけない!」

と再度奮起し、学びの工夫を続けていきながら、子どもたちの思い出に残るようなものを一つでも多く実現していこうと決めたと話されました。

また、コロナ禍の中で学校と保護者、保護者と保護者の間のつながり、また、これまで通りとはいかない地域との連携から、家庭訪問や授業参観、地域との合同運動会、幼・保園児の学校体験、地域住民との学びの場も開催、また上級生の宿泊体験と修学旅行も、“今”大切なことを学ぶ機会だと捉え、実施の方向性と対応マニュアルを作成し実施をしたそうです。そこから江口さん自身も(1)学び・行事の意義や学校システムの見直し(2)カタチを変えながら行事を行う工夫(3)教師との連携・信頼関係の大切さを学んだとのことでした。

 

そして教師の役割は、先行き不透明で予測困難な未来を生き抜かなければならない子どもたちに、自分の良さを認識しつつ他者を尊重し、いろんな人と共に協働し、自分で道を切り開いていく力を身につけさせていくことであると言われ、「子どもたちの教育に待ったはない。誰一人取り残すことなく学びを保証する。常に子どもたちの笑顔を真ん中に置き、保護者と地域、教師とともにこれからも学校を作っていきます」と話されました。

     

続いて、さが多胎ネット代表の中村由美子さんに、多胎支援活動の現場の視点からお話しいただきました。

中村さんはもともと保育士で、自分の中に「理想の母親像、理想の子育て像」というものがあったために、自身が双子を出産し子育てする中で、あまりの大変さに精神的・体力的に非常にきつい思いをしたそうです。

そんな中「少しずつお母さんになっていけばいい」と思えたことと、双子先輩ママが双子育児の大変さに共感してくれたことで「私も次のママたちの手助けをしたい」と思ったことが、今の活動につながっていると話されました。

多胎児サークル「グリンピース」を立ち上げたことで多胎児ママたちに寄り添う場ができ、今ではそこで救われたママたちが先輩ママとしてサークルに残るという好循環が生まれているそうです。

また、多胎の妊娠期から出産後の集いの場を含むさまざまな支援の必要性、ピアサポーターとしての寄り添いなど、多胎支援は切れ目のない支援であることが望ましいことを説明されました。

これまでの活動もあり、今年度から県と一緒に多胎家庭サポート事業を展開することになったそうですが、コロナ禍となり開催の方法を模索しなければならない事態となったそうです。そんな中IT関係の方との出会いでオンラインを用いたセミナーを開催できるようになり、改めて自分が苦手なところは、できる方にお願いすればいいということを学んだと話されました。

そして、コロナ禍の中での支援の工夫について、以下のように紹介されました。

  • 今までの事業のやり方を変える
  • 自分たちでできないときは、他の団体に助けてもらうことでやれることもある
  • 行動を起こさなければ0、やれば少しでも効果はある!
  • 無理をしすぎず、やれることをコツコツやる

他にも利用者が多いLINEを使いグループで交流することもあったそうです。

通信費などの問題もあり参加は本人に任せるしかないが、常に“窓を開けておく”という姿勢で支援を続けていくと話されました。

 ワークショップ

その後受講者は、事例発表を聞いての感想や気づきを、隣の人と話し合うペアワークをしました。

頭の中で漠然と考えていたことが話すことによって整理され、江口さんや中村さんに直接聞いてみたいことがたくさん浮かんできました。


    

その一部を紹介します。

Q:江口先生が学校行事で大きな決断をする時のモチベーションは何ですか?

A:「子どもたちのためにやるべきこと」ということが大前提にあります!

Q:コロナ感染拡大に敏感になっている上司を説得して、支援をもう少し広げたいのですが…

A:上司との間にもう一人相談できる人(ワンクッション)置くのもいいかもしれないですね。 

Q:多胎児のママたちが、言われて嫌な気持ちになる言葉とかありますか?

A:本当に疲れているママにとっては、好奇心だけでかけられる言葉には困ってしまいます。どんな気持ちで言葉をかけるのかということが大切なのではないでしょうか。

質問だけでなく、「先生方の言葉に熱意を感じ、元気をもらいました」との声も多く聞かれました。


      

  

最後に講師の山口さんは、県が進めているGIGAスクール構想について江口さんに説明を求められました。

その中で江口さんが「デジタルのつながりとアナログのつながりで物事がプラスに動いていく。そこが大事」と話されたことに触れ、「withコロナの中で子どもに関わる活動をしていくうえでも、この二つのバランスが大切なのではないでしょうか。ひとりではできないことを保護者、地域、行政、いろいろな所と連携して、つながることでできることを見つける。その姿勢を大切にしていきましょう」と話されました。


 講座の感想(アンケートより一部抜粋) 


・学校現場での対応に苦慮されている事や、多胎児の妊娠、出産の過酷さを実際のお話を聞くことで、良く理解でき勉強になりました。

・コロナ禍でそれぞれの環境が変わり、1人ではできない事も多くなったと感じていました。連携をそれぞれの立場でとっていくことの大切さを感じました。

・自分だけで頑張るのではなく、自分が出来ない事は他の団体を頼ればいいという言葉に救われました。

・勇気と決断、そして実行、その後の評価等、前向きな考え方に感動しました。

・今日の2つの事例に関わるような支援活動をしているので、具体的な関わり方や、先生方の考え方等を聞かせ頂き大変参考になりました。

・言葉のひとつ、ひとつに熱い想いが伝わり、こちらが元気をいただきました。「コロナだから中止」ではなく、状況を踏まえたうえでどのようにすると実施できるかを考えることの大切さ、実施する勇気が必要であることを再確認できました。

・多胎育児は「大変ですね」の一言では済まされない。自分に何ができるのかをしっかり教えて頂きました。

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