家庭教育支援者リーダー等養成講座

家庭教育支援者リーダー等養成講座第2回報告

今年度の家庭教育支援者リーダー等養成講座のテーマは「Withコロナ親子への支援のカタチを考える」です。日常生活を含む多くの活動が様変わりしたコロナ禍の中では、密や接触を避けるなどの新しい生活様式が求められるなど、その多くがこれまでに経験したことのない事ばかりでした。

それは家庭教育・子育て支援の現場でも同じで、活動に取り組まれている皆さんにとっては模索の一年だったようです。その想いを持ち寄って、みんなと一緒にwithコロナの中での「それぞれの支援のカタチ」を考えていきました。

 

   

 

2回 Withコロナでも変わらぬ親子支援~出会い、育てあい、学び合い~

開催日時:115日(金)1330分~1630

講師:田口 香津子さん(佐賀女子短期大学 学長)

2回目は佐賀女子短期大学 学長の田口香津子さんを講師に迎え、親子への支援に携わる際に大切な支援者の視点や気持ち、寄り添う姿勢についてお話しいただきました。

 【講師】田口 香津子さん(佐賀女子短期大学 学長)

田口さんはまず、「生きていく中で、自分に自信を失くし考え方がネガティブになるという経験は誰にでもあり得ることです。その時の自分のつらさを否定しないで認めるという作業は、支援に携わる人にとっても大切なことです」と、子どもや大人が育つための基本的な視座について話されました。

心が弱った人は、小さな心の動き、さりげない言葉でも肯定的にとらえることができないことがあり、それに対して支援者は、過去の自分のつらかった思いに心を寄せて目の前の人に寄り添う。それが居心地の良さや安心感、温かさとなり愛着へとつながっていくとも話されました。


    


また「マズローの欲求階層」を例に、その基本的な部分がコロナ禍において脅かされていること、支援者自身が抱えるコロナウイルスに対しての不安、これまでのやり方が通用しない状況に触れられました。

支援者自身と支援を必要としている人の自己実現に向けて、どうしたら補完できるのかをみんなで考えたり、子どもたちのメンタルを守るためにコロナ禍を災害時としてみた視点でのサポートの仕方など、知恵と連携をもって、新しい環境に適応していくことも今、必要なことかもしれないとのことでした。

 

続いて、ボウルビィが唱えた愛着概念から、支援者はコロナ禍という不安な状況において、支援を必要とする人に「この人だったら助けてくれる」と思ってもらえるような関係を築いていくこと、つまり愛着の再形成をはかることも必要だと話されました。

そうすれば、支援者と支援を必要とする人の間に物理的な距離があっても「あの人だったら、きっとこうアドバイスしてくれるだろう」と想像できるような「絆」が芽生えてくるそうです。このように接触や接近の愛着から距離を持った相互作用へと変わっていくことは、withコロナの中では必要になってくるのかもしれないとのことでした。

 

その後は、地域の実践者の事例から学びました。

  • 保育者から子育て支援者になったことで見えてきた育児のつらさや大変さを抱える母親、自分の関わり方で届かない支援となり得る危うさ、支援することの難しさと意義
  • 「子どもと関わる仕事についている人は、完璧な子育てができるはず」といった社会通念によって、自分の子育てに苦しい思いを持ち、心を閉ざした母親に寄り添った支援者
  • 家庭環境が原因で困った行動をとる子どもに対して、愛着の形成をはかり、その子の心に誇りをもたらした無資格の園の補助の先生
  • 問題行動をとるシングルマザーに、子育ての親の役割を伝えるのではなく、母親自身に対して「あなたが心配」との言葉を伝え続けた支援者 

 

支援をする立場では、いい親、いい子になってほしくて気づかないうちにアドバイスをたくさんしてしまうこともあるが、共感したり温かい場にしたり、居心地のよい関係性を築くことで、支援を必要としている人自身が少しずつ変わっていくことがあることが事例から伺えました。


     


続いての演習では、まず、東日本大震災の時、東京のNPO団体が子どもの支援に向かう際の研修として活用した「子どもの話を聴くときは(兵庫県教育委員会 防災マニュアルを詩に 篠原久美子さん作)」の10個の詩を順番に朗読してもらいました。朗読を引き受けてくださった皆さんは読み聞かせがとても上手で、場が一気に和みました。

田口さんは、詩それぞれに例やアドバイスを入れて解説をされ、受講者はその詩に込められた想いを感じ取っている様子でした。

また、NPO法人被害者支援ネットワーク佐賀VOISSの理事長でもある田口さんは、本当に苦しい想いをした人には何度も同じ話を繰り返す場が必要だと教わった経験から、話を遮らずにじっと耳を傾けることも大切にしてほしいと話されました。


     


その後は、10個の詩の中で自分が大事だと思うこと、心がけていきたいことをグループで話し合ってシェアし、続いて、withコロナ時代に子育ての現場に携わっていく中で、親や子どもに心理的に寄り添える手立てを考えてみました。

すると、オンラインでつながる、電話相談、手紙、コロナ対策を施した居場所づくりなど、支援を必要とする人のために常に窓口を開いておきたいとの気持ちのこもった意見が多くみられました。

 

田口さんは最後に、支援に携わる中でみんなに変容する力が秘められていること、それは人との関係の中で育つものであると話されました。また、一人で抱え込まず、自分が困った時には「助けて!」と言えることも必要だと伝えられました。


 講座の感想(アンケートより一部抜粋) 



・「子どもの話を聴くときは」の10項目、とてもよかったです。寄り添い方法のコツですね。これを心掛けながら支援に関わりたいと思いました。

・愛着や欲求階層論など、大事な内容の中に具体的な話を交えて、何より子供の話を聴く時は何が大事なのか、ハッとさせられる項目ばかりでした。

・これからの支援の仕方について、関わる態度、想いをあらためて考える事が出来ました。

・この人なら話せる、受け止めてくれる、そんな人でありたいと改めて思いました。

・「自他の不完全を受け入れる」という言葉が心に残りました。周囲の方に温かい声がかけられるように心掛けたいと思います。

・子育て支援は、親の支援が大事だと思いました。親の話を聞き、共感して愛着をつくりたいと思います。

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