生涯学習関係職員実践講座(実践編2)報告

佐賀県立生涯学習センターでは、生涯学習・社会教育関係職員に必要な知識や実践力を身につける
「生涯学習関係職員実践講座」(基礎編・実践編・課題編)を行っています。

実践編2は、12月10日に佐賀市立嘉瀬公民館で開催しました。

地域でつなぎ はぐくむ 子どもと地域の未来

地域全体で子どもを育む意義を学び、学校・地域団体等が相互に連携・協働しながら子どもの健全育成や持続可能な地域社会を創造していく仕組みづくりを考える講座を開催しました。


1 地域全体で子どもを育むとは

講師

清國祐二さん(香川大学生涯学習教育研究センター長・教授)


大学で社会教育学や生涯学習論を専門に教える傍ら、家庭教育推進専門員の養成や子どもの冒険遊び場「プレーパーク」の運営をされている清國さん。公私ともに子どもの育成に携わられている清國さんが大切にされているのは「あいさつ」なのだそうです。「明るくあいさつが出来ると、周りに可愛がられ、支えてもらえる一歩につながります。子どもが自らの力を活かして成長していくには、あいさつのある環境や感謝の心を育てる体験の場を提供していくことが大事です」と語られました。


 プレーパークでは、たき火をして服を焦がす失敗体験や、はさみがなくても工夫して切ろうとする子ども自身の試行錯誤を大切にしているそうです。清國さんは「遊びの中から生きる知恵を身につけるこれらの体験が、子どもの無限の可能性を生み出し、進化し続ける地域を育むことにつながる」と伝えられました。そして「家庭や地域社会が分断し、親子の関係性やつながりが弱まっている中、学校だけではできない体験だからこそ、地域との連携・協働が必要で、それを担うのは有能なリーダーや組織でなはく、誰もが取り組むという風土をつくること」と言われ、私たち個人の自覚を促されました。


事例発表

続いて、地域、学校、公民館のそれぞれの立場から、子ども育成に関わる取り組みについて3名の方に紹介していただきました。


早谷川 悟さん(香川県栗林おやじ塾代表)


香川県高松市中心部の栗林町にある栗林小学校は、児童数が約1230人の大規模校です。早谷川さんは、19年前にその小学校のPTA活動に関わる中で、父親の出番が少ないと感じ、「栗林おやじ塾」を立ち上げられました。「自らも楽しみながら自分達の町は自分達で」を基本理念に、子どもの居場所と父親達の地域参画へのきっかけづくりとして、毎月「プレーパーク」や「子ども塾」を開催されています。他にも、学校に1泊2日宿泊する「ワンナイトキャンプ」や学校行事の支援などにも取り組まれています。おやじ塾に関わる中、自分の子ども以外と接することで、参加した父親自身が大きく成長していく姿が見て取れるそうです。

「学校と地域のどちらかが手伝ってもらうのではなく、先生も楽になり、地域もやるがいがあるというWinwinの関わり方が大事で、この地域に住んでいる人々がどのような地域にしていきたいか、より多くの声を集めながらそれを実現できるよう心掛けている」と語られました。


江口 浩文さん(佐賀市立嘉瀬小学校長)


嘉瀬小学校は、20年前から地域連携を核とした学校方針を立て、取り組まれています。当時の子ども達が自分のことを表現するのが苦手だと感じた教頭先生が「表現が上手くなるには感動がある本物の体験が必要」と地域と連携し、子どもの体験活動を始められたそうです。その後、平成14年に子どもの活動を地域が支援する「嘉瀬小学校ボランティアネットワーク(以下、KSVN)」が始まりました。KSVNでは、嘉瀬町全戸から活動資金をいただき、地域全体で関わっています。活動として、地域住民と子どもが触れ合う「どようひろば」やかけ算の九九や音読の聞き役など、学習の手伝いをする「スズメサロン」などがあり、校舎1階に地域の人が気兼ねなく自由に利用できるコミュニティールームが設けられています。近年は、地域での子どもの出番づくりにも力を注いでいるそうです。


納富 美恵子さん(佐賀市立嘉瀬公民館主事)


子ども育成に関わる公民館の事業の中から「よりみち100円塾」「夏休み水曜ひろば」、「カレー会」を紹介されました。「よりみち100円塾」のきっかけは、4年生になり児童クラブの対象から外れる子どもを心配した保護者からの相談でした。共働きの両親が帰ってくるまで1人で過ごすことになる子どもの居場所をつくろう、と始められました。また、学習塾がなく、通えない子ども達に塾の雰囲気を味わう機会になればとの思いもあり、100円を参加費として徴収し、英語教室などの学習支援を設けられたそうです。始めてみると30人と、思いの他多くの申込みがあり、ニーズの高さを実感したとのことでした。「夏休み水曜ひろば」は児童センターや公営プールがなく、猛暑で外遊びも十分にできない子ども達が安心して過ごせる場として、公民館のフリースペースを自主学習室として開放されています。そして「カレー会」はフリー参観日の代休に、終日子どもだけで過ごす家庭もあることから、男性料理教室のメンバーが調理したカレーを食べ、地域住民とビンゴや人生ゲームなどで楽しむ居場所として用意されました。どの取り組みも子どもや保護者の悩みごとに寄り添いたい思いから生まれたもので、それに共感する住民の力を借りて取り組まれています。


昼食休憩後、嘉瀬小学校内のコミュニティルームや嘉瀬公民館内の藍染工房を見学しました。

 

コミュニティルーム


 

藍染工房、藍染の原料となる藍 

2 子どもと地域の未来のために 私たちができることとは

後半は、言葉で伝えることの難しさを体験するアイスブレイクから始まりました。衝立を立て、ペアになった相手の言葉だけを聞いて図を組み立てていくのですが、思ったように伝わらず、正解したのは1~2組のみ。正確に伝える難しさや確認の大切さを改めて体感しました。

「地域で子どもを育てる」の観点での取り組みやその課題について共有するワークでは、多忙感や担い手不足、何のためにしている事業なのか分からなくなっている、などの課題があがりました。そして、それらの課題に対し、どんな対処や対応の仕方があるかについてさらに深めて話し合うと、グループの中でたくさんの意見が飛び交いました。例えば「運営するとき、わざと抜け感をつくり、親しみやすさと参加しやすさを促してみる」のような具体的な案が発表され、参加者たちからは多くのヒントや刺激を得ている様子が見受けられました。


  

 



参加者の声(講座アンケートより)

  • なぜ地域が子どもを育てる必要があるのか、きれいごとでなく意味が分かりました。
  • 学校と公民館の協力や連携がわかりやすい事例で説明されて、勉強になりました。
  • 悩みを共有し、他館の事例から解決策の提案を受けたりして良かったです。
  • 他の方の意識を聞いて刺激になり、ネタや発想が増えました。本音で話せる場の大切さを実感しました。
  • 地域に開かれた学校づくりを支援していきたいです。

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