令和2年度 男女共同参画週間記念フォーラム

佐賀県立男女共同参画センターと佐賀市の共催で、「男女共同参画週間記念フォーラム」を開催しました。

毎年6月の男女共同参画週間にあわせて開催しているフォーラムですが、今年度は、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため6月開催を延期して、感染拡大防止の対策をとり2月に開催しました。


日時:令和3年2月11日(祝・木)13:30~16:00 / 会場:アバンセホール ライブ配信

第1部 講演
「オリンピックの見方が変わる ~なりたい自分になる生き方~」

  講師 山口 香さん

  (筑波大学体育系教授/ソウルオリンピック女子柔道銅メダリスト/公益財団法人日本オリンピック委員会(JOC)理事)


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1部では、スポーツ界での男女共同参画の歩みやオリンピック・パラリンピックの考え方について、山口さんご自身の生き方を踏まえながらお話いただきました。

今回はコロナ禍ということもあり、山口さんにはオンラインによりご登壇いただきました。

 

講演内容の一部をご紹介します。


女性スポーツの歴史 

  オリンピックの第1回大会は今から100年以上前、1896年にアテネで開催されました。この記念すべき第1回大会に女性は出場できませんでした。なぜかというと、近代オリンピックの父、クーベルタン男爵は、「女性の役割は男性の勝者に冠を捧げること」という考えであり、女性の参加は反対でした。

 この「女性の役割は男性の勝者に冠を捧げること」ということをちょっと注意深くみてみると、セレモニーなどでメダルを渡す人は、男性や女性と少しずつ多様になってきていますが、メダルを運んでくる人はどうでしょう?ほとんど女性ですよね。昔から女性が運んでくるのが当たり前で、今でもそのことが変わっていません。できれば、東京オリンピック・パラリンピックが開催されたら、女性に関わらず、男性もプレゼンターのために、メダルを運んでくる姿がみられると、また風景が変わってくるでしょう。


柔道をはじめたきっかけ ~女の子だからとあきらめなくてよかった~

私が柔道を始めたのは、昭和39年小学校1年生の時でした。柔道をはじめた1970年代は、スポーツにおいても、社会においても「女性はこうあるべき」という固定概念が強かった時代で、最初、道場の先生からは「女の子には柔道は無理だよ」と断られました。女の子だからダメといわれて、カチンときました。それで、がぜんやる気がでて、何度もお願いしてようやく通えるようになりました。今思えば、女の子だからとあきらめていたら、今の私はなかった、あきらめないで自分のやりたいことをやってよかったと思っています。


女性スポーツの歴史は、女性への偏見やジェンダーバイアス、女性解放の歴史でもあり、闘いでもありました。世界では、今でも女性であるという理由で教育が受けられなかったり、スポーツができなかったり、参政権がなかったりする国や地域もあります。スポーツは社会の縮図です。女性がスポーツで力を発揮できないような環境があるということは、社会も同じということです。女性でも、障がい者でも、高齢者でも「やりたいこと」に挑戦できる、夢をあきらめない社会を作っていくことが大切です。


オリンピックの原点や精神 ~参加することに意義がある!~

 早く走れる人も、強い人も、能力には差があります。大事なことは、参加することであり、自分の力を発揮することです。自分がやりたいことに一生懸命取り組んで、自分なりに、なりたい自分を目指していく。それこそが、オリンピックの原点、精神です。つまり、社会貢献や社会参画が大事ということです。


オリンピック・パラリンピックは、違う文化・歴史・バックグラウンドを持った世界中のアスリートが同じルールで競い合います。競い合うことは、進化につながり、敵を作るのではなく、友を作ることです。競い合う相手がいるから、自分が成長できる。このことをオリンピック・パラリンピックから感じてほしいです。

 

男性と女性はもちろん、一人ひとりに違いがあります。「違い」はマイナスではなく、プラスです。「違い」は「面倒くささ」につながりますが、説明したり理解させたりする努力のひと手間や、プロセスが重要だと考えます。オリンピック・パラリンピックでもそうですが、みんなが競い合うから進化し、イノベーションが起こるのです。 コロナ禍で、今までの経験や、今までの常識が覆されました。これからの世の中を生きていく私たちが、こうだという思い込みではなく、違うということを受け入れながら、その違いに価値を見出して、違いを尊重する世の中になればと願います。


オリンピック・パラリンピックは世界に窓を開けること

オリンピック・パラリンピックを招致したということは、世界に向けて窓を開けて、日本を見てもらう覚悟を決めたということです。大会を通して、日本の文化や歴史、習慣など、良い部分と変えるべき部分を考えるチャンスです。それがこの大会の意味だと思っています。

日本は素晴らしい国です。もっと言えば、もう少し見直したら、もっともっといい国になる、もっとみんなが活躍できる国になる、みんなが夢を持てる国になります。みなさんと一緒に、そんな社会を作っていけるように、私はこれからもスポーツから発信していきたいと思います。


第2部 パネルディスカッション
「未来へつなげよう! みんなが挑戦できる社会をつくる」

 パネリスト

  内田 信子 さん(学校法人旭学園理事長、NPO法人女性参画研究会・さが副理事長)

  片桐  亮 さん(いまパパ.代表)

  宮﨑 美由紀さん(みやき町総務部女子サッカー推進室参事、一般社団法人佐賀県サッカー協会副会長)

 助言

  山口 香さん

 コーディネーター

  上野 景三(アバンセ事業統括)

パネル写真1パネル写真2


第2部のパネルディスカッションでは、県内で活躍されている3名の方にご登壇いただき、性別にかかわらず全ての人が能力を発揮できる社会のあり方について考えました。


これまで、自分がやりたいことにどう取り組んできたか、今の自分につながることや、転機となった経験をお話いただきました。


北京女性会議での出会い 内田信子さん 

内田さんからは、転機となったサガテレビ在職時代に随行取材で訪れた、25年前の北京女性会議での出来事をお話いただきました。そこで、ハツラツとした佐賀県の女性たちに出会って刺激をうけ、先輩たちから多くのことを学んだこと。そして、国際会議に参加したことで、世界の潮流に気づき、自分にできることを精一杯やっていこうと決心したこと。そんな人とのつながりや一歩踏み出すことの大切さをお話いただきました。 


父親の育児参加で「未来の日本」をつくる! 片桐 亮さん

片桐さんからは、自身の育休中でのワンオペ育児の経験から、子育ての大変さを痛感し、「育児のことを誰かと共有したい!」そんな思いで一歩を踏み出し活動を始めたことや、現在代表を務めるパパネットワーク「いまパパ.」の活動を紹介いただきながら、子育ては期間限定で父親だからできることがあると男性の育児参加の大切さをお話いただきました。


女子サッカーの未来をつくる! 宮﨑美由紀さん

サッカーで選手・監督・役員を経験された宮﨑さんからは、サッカーとの出会いや女子サッカーがまだ認知されていない時代のこと、そして、子育てと両立しながら務めたサッカー部監督のこと等についてお話いただきました。その中で、サッカー部監督を務められたのは、選手、保護者に助けてもらいながらやれたと話され、やりたいことを進めていく上で、女性だけでなく男性にも協力を得なければならない、賛同してもらえる人・仲間を増やすことが大事とお話いただきました。


そして、最後に登壇者のみなさんより、参加者のみなさんへ向けてメッセージをいただきました。

パネリスト写真1

内田さん「道を拓く」

昔は、自分の意見を主張することが出来ないし、傷つきやすかった。それが先輩方の背中を追いかけて活動を共にしているうちに、多少のことでは動じなくなった。仲間や経験から学ぶことは大きい。最初「明けない夜はない」と書こうと思ったが、女性の活躍の場も広がった今、次のステップに主体的に進んでいこうという意味で「道を拓く」としました。共に歩んで行きましょう。


 

パネリスト2片桐さん「ありがとうを忘れない」

この言葉が好き。ありがとうという言葉は、あることが難しいと書く。ありがとうの反対の言葉は、当たり前。コロナのおかげで当たり前のことに感謝するようになった。家族みんなでごはんが食べられること、そんな当たり前の毎日に感謝したい。

 


パネリスト写真3宮﨑さん「やりたいことを貫く ~継続~ 」

好きで、楽しくてたまらないサッカー。ここまで続けてこられたのは、いろんな人たちのおかげで、やりたいことを貫くことができた。女性は特にライフステージの中で、やりたくてもやれないという時がでてくる。でも、それでもまた続けてほしい。それは、何か私たちに学ぶ機会が与えられていると思うから。



パネリスト写真4山口さん「自分らしくあるために一歩前に」

自分らしくあるために、一人ひとりが自分をすごく大事にしてほしい。一人の幸せが隣の人を幸せにして、その集合体が社会全体を幸せすると思う。ぜひ、自分らしさって何かなって振り返ってもらえればと思う。




上野事業統括より「まとめ」コーディネーター写真

今回のフォーラムでは、スポーツを通して男女共同参画を考えた。今の子どもたちは、スポーツが嫌いな子が多いらしく、できない自分を、みんなに見られるのが嫌だという感覚をもっている。一生そのままになってしまうのが気がかりで、みんなが挑戦できるようになる社会をどうやって作ればいいかというと、それは「仲間の存在」が大きい。今日のお話の中にもあったように、自分ひとりで生きていくのではなく、まわりと一緒に挑戦できる社会、支えあう社会にしていければと思う。


参加者からの感想(抜粋)

  • (昔は)オリンピックや柔道の試合などスポーツの場で、女性が参加することが当たり前ではなかった。女性が変えようと歩いてきた時代の先に今があることを再認識した。

  • 現在のオリンピックが、経済的効果を重視するようになっている中、原点は何かと考えることが出来てよかった。

  • 講演、パネルディスカッションを通じて、変革は勇気と信念をもって起こさなければ変わらないこと、そして後世につないでいかなければならないこと、女性、男性でなく、一人ひとり個として尊重される社会にしなければならないと感じた。
  • 男女共同参画に関する体験を、どの方も自分自身の経験を通してお話されたのが等身大で好感が持てた。自分自身の今後の生き方を考えさせてもらえたように思う。
  • 佐賀でも活躍されている人が多くあり、自分も何か参加できたらと心が動いた。
  • 講師がオンライン(登壇)で、新しい時代をリアルに感じた。

 フォーラムチラシ (1435KB; PDFファイル)


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