令和4年度 家庭教育支援者リーダー等養成講座(リーダー研修) 第3回報告

つながりあいの中でひろがる家庭教育支援の可能性

~誰も取り残さない!親と子の育ちの支援をめざして~

リーダー研修は、家庭教育・子育て支援に関わる活動経験年数が3年以上の方を対象とした連続5回講座です。

様々な経験を重ねてきた支援者の皆さんと、子どもと親の育ちを支援するために、つながりあう中でできることをお互いに学び合い、考えていきました。


家庭教育支援者リーダー等養成講座(リーダー研修)チラシ (695KB; PDFファイル)

第3回 子ども理解に基づく支援 ~発達障害のある子どもへの関わり方から学ぶ~

【開催日時】12月8日(木)13時30分~16時30分


講座3回目は、西九州大学子ども学部特任教授の日野久美子さんを講師に迎え「発達障害」をテーマにお話しいただきました。小学校教諭時から、また現在も発達支援アドバイザーとして幼稚園や小学校現場で教えられ、子どもたちに向き合ってこられた経験を紹介いただきながら、発達障害のある子どもへの支援において大切なことを学びました。


講師

【講師】日野 久美子 さん(西九州大学子ども学部 特任教授)


はじめに、発達障害のある子どもを支援するためには、その子を取り巻く関わり(家庭、学校、地域社会など)にも目を向ける必要があると話されました。それは、子どもを取り巻く物的・人的環境によって及ぼされる生活上の困難や制限があるからです。そして「子どもの保護者やきょうだいを支えることがその子を支えることにもつながる」と、様々な現場で家庭教育支援に携わる皆さんの立ち位置がとても大事であることを受講者に呼びかけられました。

また、今の学校の現状として、特別支援教育を受ける子どもたちの中で発達障害のある子どもの割合が年々増加している点を挙げられ、その背景として子ども一人ひとりの教育的ニーズに応じた多様な教育環境が整えられてきたことを説明されました。「今の学校は私たち自身が過ごした時期の学校とは理念もシステムも変わってきていることを心に留めて、子どもや保護者との関わりを大事にしてほしい」と話されました。


続いて「発達障害」とは脳機能の障害であり、3つのタイプ(⑴LD「学習上の問題」⑵AD/HD「行動上の問題」⑶ASD「コミュニケーション上の問題」)に分かれることと、それぞれの特性について具体的に教えていただき、発達障害についての基礎知識を学びました。


演習 演習 演習

 

演習として、スクリーンに映った図形や画像が何に見えるのかを答える問題が出されました。

分かった人は手を挙げて答えていきますが、周りの人は分かっているのに自分はヒントが出されても分からない…と焦る様子の人もいました。これは答えられない状況に身を置いて「認知ができずに困る」という疑似体験になりました。このワークを通してどんな気持ちになったのかをグループで話し合うと、答えが分からなかった時の不安や悲しさ、分かった時のうれしさ、分かっていない時に周りからプレッシャーをかけられたくない気持ちなど、たくさんの意見が出ました。また、人に自分の気持ちを否定されずに受け止められることの安心感を感じた受講者の様子も伺えました。

日野さんは「子どもたちは『分かりたい』と思っている。その子どもの困りや気持ちを受け止めて分かろうとする姿勢と、どうしたら『分かる』『できる』になるのか、そこにアプローチする支援が大事」と話されました。

受講者からは「分からない子の気持ちを実感することができた。相手の気持ちをくみ取って、不安にさせない、笑顔になれる対応を心がけていかなければいけないと感じた」という声が聞かれました。


         講義 講義


子どもは自分ができないことによって与えられる「負のメッセージ」から自己評価の低下やあきらめの気持ちが生じ、困難を抱えてしまいます。日野さんは「自分の気持ちをうまく言葉で表現できないままに行動に出てしまう子どももいる。その行動の裏にある感情を感じ取って、その思いに共感することが大切」「問題行動への対処は、良い行動につながるきっかけに働きかけること」など、子どもの感情や気持ちに着目した対応と、行動面に着目した対応についてアドバイスされました。

また、保護者との関わり方については「子どもがより良い生活を送れるように支えたいという思いを伝え、保護者の経験や知恵から学ぼうとする姿勢で一緒に考えることが大切である」と話され、保護者と同じ思いの元に子どもを支援することが「寄り添う」ことになると教えていただきました。


最後に「子ども自身が自分の得意・不得意を把握して『こんなときはこうすればいい』という対応の仕方を身につけ、他の人と互いに助け合いながら過ごせることが大事」と、子ども自身の自己理解と自立を促す支援のあり方も示されました。そして「発達障害があるからではなく、誰もがお互いに得意・不得意の偏りをカバーし合いながら生活できることが一番良いことではないでしょうか」と語られ、障害の有無ではなく、一人ひとりへの適切な配慮と関わり方によって誰もが生きやすい社会を目指すことができるのだと学ぶことができました。


受講者の感想(アンケートより抜粋)
  • 発達障害の正しい理解につながった。子どもたち一人ひとりに合わせた声かけの大切さも知ることができました。
  • 「子どもは育つ存在」であって、支援され続ける存在ではない。子どもの育つ力を信じ、育ちを見守り、支援をしていきたいです。
  • 自分の中の普通が「普通」ではない。アプローチの仕方で子どもの自立をどこまで支援できるのか、保護者に寄り添い、同じ思いで進むまでが難しいと感じますが、頑張りたいです。

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