家庭教育支援者リーダー等養成講座

家庭教育支援者リーダー等養成講座第5回報告

今年度の家庭教育支援者リーダー等養成講座のテーマは「Withコロナ親子への支援のカタチを考える」です。日常生活を含む多くの活動が様変わりしたコロナ禍の中では、密や接触を避けるなどの新しい生活様式が求められるなど、その多くがこれまでに経験したことのない事ばかりでした。

それは家庭教育・子育て支援の現場でも同じで、活動に取り組まれている皆さんにとっては模索の一年だったようです。その想いを持ち寄って、みんなと一緒にwithコロナの中での「それぞれの支援のカタチ」を考えていきました。

 

   

 

第5回 Withコロナでの支援のカタチⅡ~“食”がつなぐ家庭と地域~

日時:令和3219() 1330分 ~1630

講師:山口 ひろみさん(NPO法人唐津市子育て支援情報センター センター長)

事例発表:▪干潟 由美子さん(NPO法人フードバンクさが 理事長)

         ▪大坪 裕樹さん(佐賀市立北川副小学校運営協議会こどもおなか一杯便 委員長)

     ▪福島 めぐみさん(一般社団法人スマイルキッズ代表、認定NPO法人ブリッジフォースマイル)


今回は、“食”を通じた様々な支援の現場で指揮をとられている3人をお招きし、コロナ禍でより顕著になってきた厳しい環境に置かれている子どもや家庭の現状を知り、地域から取りこぼさないためにできる支援や活動のカタチを考えていきました。

 

    

【講師】山口 ひろみさん(NPO法人唐津市子育て支援情報センター センター長)  【事例発表】干潟 由美子さん(NPO法人フードバンクさが 理事長)

    

【事例発表】大坪 裕樹さん(北川副小学校運営協議会こどもおなか一杯便 委員長)  ・福島 めぐみさん(一般社団法人スマイルキッズ代表、認定NPO法人ブリッジフォースマイル)

 

事例発表

最初に、干潟由美子さん(NPO法人フードバンクさが 理事長)から、”食”で企業や団体、個人をつなぐ中間支援の視点から話していただきました。

干潟さんの活動のきっかけは、廃棄食品を目にしたことで受けたフードロスの講座からだそうです。「佐賀でフードバンクの仕事をやりたい!」と思った干潟さんは、必要なノウハウとスキルを得るためにすぐに行動に移し、賛同者を得て2019年、任意団体「フードバンクさが」としてスタートされました。仕組みは作ったものの寄付やモノがない状態を支援してくれたのが全国のフードバンク。そこから仕組みを再構築したことで寄贈や提供が始まり、ようやく軌道に乗ってきたそうです。

干潟さんは、フードバンクさがの理念とSDGsを取り入れた視点での活動内容を紹介する中で、共助社会に関する事例を話されました。ある店舗と自立支援の団体とつなぎ、そこで支援を受けている人に役割を担ってもらう仕組みを作り、それまで支援を受けていた人が他人の役に立つ喜びを知り、社会復帰を遂げるきっかけになったそうです。

また、コロナ禍で困窮する県内の大学生へ向けて行った「ギフト」という形の緊急的な支援活動、高校生が取り組んだフードドライブ活動など、学生自らが運営に携わりその後もボランティアとして活動するなど、食と団体を通じて、そこに必要な支援を届けていらっしゃる様子が伺えました。

また、コロナ禍の活動で見えてきた、提供先のこども食堂・こどもの居場所の減少や形態の変化はもちろん、寄贈元の変化、支援対象の急激な増加について、これからは食という資源をうまく活用して、社会がより良く循環する仕組みを作るために、他機関や専門家との連携など様々な課題を考えていきたいと話されました。   


続いて、大坪裕樹さん(佐賀市立北川副小学校運営協議会こどもおなか一杯便委員長)に地域の課題を自分たちで解決するための取り組みを話していただきました。

こどもおなか一杯便は、小学校のコミュニティスクール(学校運営協議会)の中に立ち上げた団体で、PTA活動に携わっていた大坪さんが、100円のパン1個のみを昼食にしている生徒がいるという事実を知ったことが活動の原点になっているそうです。

大坪さんは、お腹を空かせた地域の子ども達を何とかしたいという想いで、周囲の協力と「こども宅食事業」(文京区)からノウハウを得て、2018年2月に「お金も人手もすべて地域で集めて、北川副小学校に子どもを通わせる就学援助受給世帯に食品を届ける、地域主体の子育て応援プロジェクト」をスタート。活動を始めるうえで気になるヒト、モノ、カネについても、運営方法を分かりやすく紹介されました。

それらを上手く運営するために学校との連携とボランティアの協力が不可欠であること、支援を受ける人の匿名性を担保するための方法と寄り添い方についても具体的に話されました。

しかし、この不況下で増加している就学援助受給世帯に対して、利用家庭を増やすための活動や寄付金の増額 活動の拠点、人員の確保などが今後の課題としてあるそうです。

「人を支援できる人は、人から支援されたことのある人。おなか一杯便の支援を受けた子どもたちが、将来北川副の困っている人を支援して将来に続く活動にしたい。また、おなか一杯になった子どもたちの心も、一杯にできるような活動にしたい」との言葉が印象的でした。


最後は、ステップファミリーとひとり親家庭支援、児童養護施設を出た後の子ども支援をされている福島めぐみさん(一般社団法人スマイルキッズ代表、認定NPO法人ブリッジフォースマイル)です。

元々は福島さん自身が周りに助けられた経験から、恩返しのためにひとり親家庭の支援を始めたことから活動が広がっていったそうです。

福島さんは、その時々に関わる人達の声に耳を傾け、ステップファミリーの子ども食堂やひとり親家庭予備軍の支援も行い、コロナ禍では、アウトリーチ型宅食事業「とどけエール」を始められました。

支援が必要なひとり親家庭への訪問を、当事者(ひとり親経験者)の専門スタッフが行うことで安心感を与え、細かな家庭状況の把握ができると共に、問題があった場合は他機関へつなげるなどの連携ができてきたそうです。

そんな中、コロナ禍の影響もあり、今年のとどけエールの件数は昨年の倍になり、お届けする品物の要望も変わってきたそうです。ただ、ひとり親家庭の厳しい状況に変わりはないので、変わらぬ支援を続けていくということでした。

スマイルキッズの運営は寄付によるところが多いそうですが、寄付をしてくれる人の9割がひとり親家庭の方だと話されました。ここでも、支援を受けたことがある人からの支援が活きているようです。

 ワークショップ

受講者は、事例発表を聞いての感想や気づきを、グループで話し合いました。初めて聞いた内容という受講者もいて、発表者に直接聞いてみたいことがたくさん浮かんでいるようでした。


    


その一部を紹介します。

Q:皆さんを突き動かした原動力は何?

A:干潟さん NY国連本部に行った時に多くの経験をして、自分がちっぽけな中で生活していたと気づいた。その時の「参画することでうねりが起こり、社会は変えられる」という演説に感銘を受けたこと。

大坪さん 困っている子どもの存在に気づき、周りに相談した時に「あなたがやるんだったらサポートするよ」と言ってくれたこと。

福島さん 自分が経験した悲しい・悔しい思いを、他のひとり親家庭にさせたくないという気持ち。

 

Q:活動される上でご自分の家庭や都合など、いろんな制約があるのでは?  

A:干潟さん フードバンクを立ち上げる時は子どもたちは独立しており、夫と話し合った上、ないものを補いながら役割分担するようになった。お互い思いやりをもって応援していてくれていると思っている。

大坪さん 活動を始めてから、仕事とプライベートをきちんと分けるようになり、仕事のメリハリもつくようになった。家庭での役割分担もこなし、適度な距離を保っている。仲間と明るい未来について話すのもよい。

福島さん 無我夢中だったので、子ども達が小さい頃は我慢させていた部分があったと思う。お楽しみを作るなどの工夫をしていた。

 

最後に講師の山口さんからは「皆さんの食を通じた支援から、自分の存在を認めて理解してもらえることで、次の支援につながってく様子を学びました。『人を支援できる人は人から支援されたことのある人』の言葉は支援者にとって大切なキーワードだと思います」と話がありました。


    


 講座の感想(アンケートより一部抜粋) 


・団体の立ち上げに至る背景や日本の現状、支援の多様さなどを知ることができました。

・「知る→動く→続ける」ことができるのはすごいと思います。自分には何が出来るかを考えました。

・どんな形でも、人と関わることで支援に結びつくという連鎖がとても素敵だなと思いました。

・人との繋がりを感じられる、そんな場所をつくりたいと思いました。

・食を通じた様々な支援の形があることと、皆さんの行動力にとても感動しました。

・食への感謝と食育で、つながる関係ができると思った。

・まさに今求められていることに、先頭に立って取り組まれている事例と現状を知ることができて、本当に勉強になりました。

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