令和5年度「女性に対する暴力防止講演会」を開催しました

ストーカー被害のリアル

日 時:令和5年11月22日(水)13:30~16:30

会 場:アバンセホール

方   法:会場開催、オンライン開催(12/13~1/10 YouTubeにて録画配信)


「女性に対する暴力をなくす運動」期間(11月12日~25日)に合わせ、女性に対する暴力防止講演会を開催しました。

今年度も、会場に加えオンライン(録画配信)で開催し、155名(会場62名・オンライン93名)の方にご参加いただきました。

 

第1部 講演 

演題 まさか自分が被害者に ストーカー被害から自分を守るために

講師 内澤 旬子さん(文筆家、イラストレーター)

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 今年度は、ストーカー被害に遭ったご自身の経験を綴った本「ストーカーとの七〇〇日戦争」を出版された内澤旬子さんにお話しいただきました。

 

 内澤さんが元交際相手に別れを告げると、「別れたくない」と懇願する電話やSNSのメッセーが続き、あまりにもしつこかったため、「ストーカーではないか」、「警察に相談する」という言葉を使った途端相手の怒りが増幅し「お前をめちゃくちゃにしてやる」と豹変したことで、ストレスから不眠になり喘息が止まらなくなったと話されました。加害者は脅迫罪で逮捕されたが、再び被害に遭うことを恐れて勾留中に引っ越しを余儀なくされ、その時は自分の気持ちに寄り添ってくれる人や相談できる専門家もおらず、恐怖と過度の緊張状態で判断能力が低下したと話されました。

 

 示談成立後に再び被害に遭ったため、自費で書き込みを特定するなど、示談違反のための証拠書類を提出し、名誉棄損罪で加害者が再逮捕されたことを話され、当時(2016年)はストーカー規制法の改正前で、ネット上の書き込みやSNSの誹謗中傷は罰則の対象外だったことを説明されました。

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 その後、ストーカーは病気であり治療する手段があるということが分かり、加害者が治療を受けて自分への執着を解くことが一番の解決策だと思うと話されました。

 また、カウンセラーの小早川明子さんに相談できたことはとても心強かったと話され、公判前に加害者と面談してもらい、あれだけ逆上していた加害者が、治療の必要性を理解したが、後にまた自分はストーカーではないと拒否したことから、自覚してもらうことの難しさを述べられました。

 

 加害者は実刑判決となりましたが、服役中に受講する更生プログラムに、ストーカー専門のプログラムはなく、反省も償いもないまま、失った時間や恐怖を考えると謝って欲しいが、それ以前にまず、日々の安心安全の保障や、ストーカー規制法の適用があれば不安は少なかったはずと、加害者が出所したばかりの時は本当に不安だったと話されました。

 

 これからは、犠牲者が出る前にストーカー規制法の改正をして欲しいと述べられ、つきまとい行為の定義から恋愛感情を撤廃することや、テクノロジー進化に伴う新しいつきまとい行為を迅速に反映すること、そして加害者の治療を義務化して欲しいと訴えられました。

 

 内澤さんは、被害の後遺症で、対人恐怖、男性恐怖、やさしい人も突然豹変するかもしれないと思ってしまうことなど生活に支障があり、後悔と落ち込みと自己否定がすごくて、人生削られたような気がすると話されました。また、居場所を誰にも知られたくないという思いから、「通信販売」、「郵便物などの受け取り方法」、「SNS写真や新機能の参加」などを今も躊躇しており、被害者は非難されるものとして常に身構えていて、活動のすべては元の生活には戻れないと話され、「もしみなさんの周りで、被害に遭っている方がおられたら、今日悪化する前に警察などに相談して欲しい」と呼びかけられました。

 

 最後に自然豊かな風景の写真を投影され、「こんなのどかなところでも、ストーカー、ネット上のつきまといはあり得ますので、気をつけていただきたい」と締めくくられました。

 

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第2部 トークセッション 

テーマ ストーカーを生まない、遭わない、遭ってしまったときに何ができるか

登壇者

 内澤 旬子さん (文筆家、イラストレーター) 

 小早川 明子さん(NPOヒューマニティ理事長) 

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小早川明子さん(NPOヒューマニティ理事長) 

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ストーカーは、責任感が強い人や自罰的な人を望む傾向があり、分かれる時に計画的に臨まなければ、相手が刺激を受けてエスカレートする可能性があるので、「別れようと決めたら、別れるための準備をする」ことがポイントであると述べられました。

 

 カウンセラーが間に入るのは、被害者を守るという大きな意味があると同時に、警察や弁護士では聞くことができない加害者の本当の苦しみを聞きだすことができるからで、カウンセラーは公平な第三者の立場で接するので、加害者の気持ちにも寄り添って話をしていくうちに、加害者が自分を苦しみから解放できるかも…と望みを持ち「治療を受けたい」と希望するようになると話されました。


 警察から警告や禁止命令が出された後、加害者の「納得できない、苦しい」という相談や、加害者家族からの「異変を感じるので様子を見てほしい」という相談など、ストーキングに発展する前に家族が異変に気付くことがあり、加害者側にも相談先があれば、早期に予兆を把握し芽を摘むことができるので、被害者を守るためにもそのような施設や機関があればいいと述べられました。

 

 治療の義務化は、全てのストーカーに必要というわけではないが、多くの人が必要である。また、加害者の弁護については、減刑や執行猶予をゴールの設定にせず、再犯させないことを目的に弁護してもらいたいと述べられました。

 

 被害者側にはトラウマが残るので、カウンセリングが必要だが、カウンセリングで一番問題になるのは、自分が被害に遭っていることに気づかない被害者で、被害に遭っている意識があれば、逃げられるし対応もできると話されました。


                             内澤旬子さん(文筆家、イラストレーター)

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 内澤さんは、別れ方が大事で「その連絡自体が辛い」と伝える必要があることを小早川先生に習ったが、「こういう部分が嫌だ」という話はできても、「辛い」という自分の状態を表す言葉が言えなかったと振り返られました。


 2016年ごろから警察で加害者へ治療を働きかける試みが始まっているが、警察から言われて素直に治療に向かうのかは難しい問題であること、犠牲者が出た後に法律が変わるのは辛いことで、その前にアクションを起こし、制度や法律を改正して欲しいという気持ちで活動していると話されました。


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  < 参加者の声(一部抜粋) >

事者のお話は貴重です。内澤さんが恐怖心と闘いながらお話をされたことは、この問題をよりよく知ることに大きなアドバイスとなりました。


●被害者と加害者の間に介入するカウンセラーがいることを初めて知った。ストーカーのきっかけが言葉というのが、自分にも起こりうるものとして考えさせられた。


誰しも何がきっかけでストーカーの被害者、そしてもしかしたら加害者になる可能性があることを考えさせられました。言葉の使い方や、相手の特性について考え、対応しなければならないと思いました。

 

●ストーカー加害者が治療に繋がってほしいと思いました。

 

●ストーカーに遭った期間より、その後の後遺症の方が、かなり長い期間になる事を凄く感じました。早めに周りへ相談することも必要と感じました。


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主催:佐賀県    主管:佐賀県DV総合対策センター 

後援:佐賀県警察本部、佐賀県弁護士会、佐賀県教育委員会、佐賀県PTA連合会、佐賀県医師会

   佐賀県産婦人科医会、一般社団法人佐賀県公認心理師協会、公益社団法人佐賀県看護協会、

   公益社団法人佐賀県社会福祉士会、佐賀県人権擁護委員連合会、

   認定NPO法人被害者支援ネットワーク佐賀VOISS、国際ソロプチミスト佐賀有明

   国際ソロプチミスト佐賀、佐賀県民生委員児童委員協議会、国立大学法人佐賀大学、西九州大学、

   西九州大学短期大学部、佐賀女子短期大学、九州龍谷短期大学(順不同)

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