「NOひとりぼっち!防災まちづくり ~私たちができること~」

 佐賀県立男女共同参画センターでは、今年度はじめて、地域で防災活動をされている女性や防災に関心のある女性を対象に、「NOひとりぼっち!防災まちづくり~私たちができること~」をテーマとして学ぶ、3回連続の「男女共同参画の視点を取り入れた防災リーダー養成講座」を開催しました。

 本講座は、過去に発生した災害の実態調査や男女共同参画の視点を取り入れた防災の先進事例から学び、誰ひとり取り残さない安全・安心な災害に強いまちをつくるために、私たち一人ひとりができることを考えるための講座です。

第1回 2月6日 「男女共同参画×防災」 ~その時、被災地で何が起きたのか~

 講師:池田 恵子さん

  (静岡大学教育学部教授/同防災総合センター兼任教員、減災と男女共同参画研修推進センター共同代表)

(2月6日 土曜日 13時00分~16時00分 アバンセ第3研修室)


 第1回のテーマは『男女共同参画×防災』です。まずはじめに、生物学的な違いや固定的性別役割分担意識に代表されるような社会的に求められる責任や役割の違いから、災害時に直面する困難やニーズが、性別や立場でどのように異なるかを学びました。例えば、過去の大規模災害時には、避難所での環境が整っていなかったことで、着替えや授乳がしづらかったり、下着が干せないといったことがありました。また、小さい子どもを育てる家族や障がいを持つ人とその家族が避難所で居づらい思いをしたこと、男性が孤立し、ストレスを溜め込んでしまうといった問題が発生しました。

 また、役職を持った一部の男性に避難所の運営面がまかせきりとなったり、女性のみに炊き出しの負担がのしかかるといったことが生じて、男性も女性も疲れ切ってしまうといったこともあったと教えていただきました。

 このような問題を解決するために、2020年5月に改訂された『男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン』や『人道支援の必須基準』の9つの原則などを確認し、「女性は主体的な担い手である」ことや「被災した地域や人々は、それぞれのニーズにあった支援を必要な時に受けられなければならない」こと、「同じ支援でみな平等ではなく、個人を大切にし、結果においての平等を目指す」ことの大切さを学びました。

 後半では、災害時の女性と子どもの安全について学びました。阪神淡路大震災(1995年)では、発生状況を示す客観的な資料がなかったため、暴力の発生を否定する反応やバッシング、デマではないかという声がありました。しかし、東日本大震災(2011年)では、講師の池田さんも関わられた「災害・復興時における女性と子どもの暴力」に関する調査が実施され、現在では、ようやく防災の課題としての認識が進んできていることを知りました。

 最後は、学んだことを参考にしながら、「私たちができること」をグループで考えました。グループからは、「相談しやすい体制を事前につくっておく」「地域の女性団体や男女共同参画部局などとの連携を平時からとっておく」「地域の話し合いの場に、女性が3割以上参画する」「まずは自らが地域で声を出していく」など、受け身ではない主体的な内容の発表がありました。わたしたち一人一人が身近にできることから参画し、気づきや考えを発信していくことの大切さを講師の池田さんをはじめ、参加者のみなさんの発表から学ぶことができました。

  

固定的性別役割分担意識とは

 男女を問わず個人の能力等によって役割の分担を決めることが適当であるにも関わらず、「男は仕事・女は家庭」、「男性は主要な業務・女性は補助的な業務」等のように男性、女性という性別を理由として役割を固定的に分ける考え方のこと。

第2回 2月20日「地域づくり×防災」 ~いつかではなく、今やれること~

 講師:柳原 志保さん(歌う防災士 しほママ)

(2月20日 土曜日 13時00分~16時00分 アバンセ第1研修室)


 第2回のテーマは、『地域づくり×防災』です。柳原さんは、「東日本大震災」で2週間の避難所生活を経験されました。その後、熊本県に移住され、東日本大震災での経験を話されるうちに、日ごろからの防災が大切であると気づかれ、防災の勉強を始められました。そして、熊本地震や2020年7月豪雨などを経験された中で、やはり、日常生活の中で簡単に取り組める防災が大切だと思われたそうです。「みなさん、自分が被災するとは思っていないし、被災経験があったとしても時間が経つと忘れてしまいます。防災は”忘災”だとも言えます。楽しく続けられることが大切です。」と教えていただきました。

 その取組の一つとして、「0円防災」を紹介していただきました。例えば、AEDや公衆電話がある場所を知っておくこと。何かあった時の集合場所を決めておくこと。役に立つものや情報のアンテナを張ること。知っているのと知らないのでは、全く異なります。”いつも”と”もしも”に役立つ視点をもって、日ごろから生活することが大切だと学ぶことができました。

 柳原さんは、いつもの行動が、もしもの時に役立つことを知ってもらうための啓発ビデオを作成されています。それは、柳原さんが歌をうたうことや踊ることが大好きだからと仰っていました。「自分の得意なものと役に立つものを組み合わせることで、新しい発想が生まれるのではないでしょうか。その視点をみなさんの活動に取り入れてみてはいかがでしょうか。」と提案されました。

 また、阪神淡路大震災の後に生まれた「クロスロード」というカードゲームを体験しました。これは、正解のないゲームです。「決断の訓練」の練習ができ、「立場によって答えが変わる」という気づきを得ることができます。また、少数派の意見が貴重な意見とされることもあり、多数派に流されがちな物事を決める場面で、少数派の意見も大切にすること、その答えの背景や事情を想像すること、そして、自分の想いを伝えることの大切さを学ぶことができました。

  

 後半は、『マイタイムライン』や『パッククッキング』、『簡易トイレ』の作り方の紹介など、参加者のみなさんの活動にすぐに役立つスキルや情報を教えていただきました。『新聞紙がどれぐらいの水を吸水できるか』の実験では、より少ない新聞紙で吸水しようと、みなさん知恵を出し合い、試行錯誤され、一番盛り上がりました。

 現在、防災の分野は特に、意思決定の場への女性の参画がとても少ない状況です。そのことで、避難所の備蓄品に女性の視点が入りづらかったり、過去の災害時では、女性が男性の物資担当者から生理用品などの物資を受け取りにくかったことがありました。女性が地域の防災活動に参加することで、防災に女性の視点が入ります。一緒に頑張りましょう」とエールを送られ、東日本大震災の復興ソングである「花は咲く」を歌い、講座は終了しました。

第3回 2月28日 「誰ひとり取り残さないための防災プログラムを企画しよう!」

 講師:古賀 桃子さん(特定非営利活動法人ふくおかNPOセンター理事長)

(2月28日 日曜日 13時00分~16時00分 アバンセ第3研修室)

 

 第3回目のテーマは、『誰ひとり取り残さないための防災プログラムを企画しよう』です。まずはじめに、講師の古賀さんから、ひとりぼっちを作らない防災プログラムを企画するために参考となる事例を紹介していただきました。事例もさることながら、事例の見方も教えていただき、参加者は多くの学びを得ることができました。


見方のポイントは、3点とのことでした。

1.佐賀の事例じゃないから参考にならない?はNG

2.どんな人たちがターゲット?

3.どんなところにこだわっている?


 これらの視点を大切にしながら、事例の分析を行いました。今後の活動に活用できるポイントを聞き漏らさないようにと、みなさん熱心にメモをとられてました。


 講座後半は、「企画を立てよう」ということで、古賀さんに提供いただいたワークシートをもとに、「目的」や「対象者」、「場所」、「内容」など、企画の詳細を考えました。最初は、みっちりと個人で内容を考えます。その後は、グループ内で一人ずつ発表し、それぞれの企画に”コメント”と”愛あるつっこみ(〇〇したらどう?、□□と連携したらスムーズに進みそう!など)”をグループメンバーと行いました。

 その後、グループから1企画ずつ、メンバーから推薦を受けた企画者が発表し、全体で共有しました。地域に住む独居高齢者のこと、子どもたちへの防災教育など、災害が起きたときにすぐに動けるようにと、今やりたいと思われている企画を共有しました。

 最後に、みなさんの発表を受けての追加の情報(女性の視点を避難所運営に取り入れるための参考資料やペットとの避難、独居の高齢者の避難など)を古賀さんから提供いただき、講座を終了しました。地域や職場で取り組むための具体的なアドバイスを古賀さんからいただいたことで、参加者のみなさんは、次のステージに進むためのエネルギーを充電されたようでした。

 修了証交付

 「男女共同参画の視点を取り入れた防災リーダー養成講座」は、参加者のみなさんに、男女共同参画の視点を取り入れた防災を、地域で核となって進めていただくためと、女性の防災リーダー同士の横のつながりをつくるために開催しています。3日間の講座すべてを受講された14名に、「修了証」を交付しました。

 また、地域の避難所の運営に男女共同参画の視点を取り入れていただくために、参加者全員に「男女共同参画の視点を取り入れた避難所運営の手引き(佐賀県立男女共同参画センター制作)」をお贈りしました。


 また、山口佐賀県知事からのビデオによる応援メッセージをみなさんにお贈りしました。知事からは、「お互いを思いやり、支え合いながら、誰もが暮らしやすい佐賀県を作っていきましょう」とメッセージがありました。

 

 最後の閉会の挨拶では、佐賀県立男女共同参画センター 上野事業統括から参加者のみなさんに、「それぞれの団体や職場、地域で、防災意識を高めていく、仲間を増やしていくためには、今までの取組にあわせて、+(プラス)α(アルファ)な取組が必要かもしれません。それは、男女共同参画の視点だけではなく、防災の視点だけでもなく、生活の視点だけでもなく、それぞれの視点を掛け合わせることで、何か新しいこと(仕掛け)が生まれてくるのではないでしょうか。それぞれの地域、職場で、今回学んだことを伝えていただきたいと思います。」とエールを送りました。

参加者からの感想(抜粋)

  • 参加して良かった。地域に帰って、話し合うことが出来ると思う。

  • 実際の体験をもとに災害を忘れずに過ごす。防災って身近なものだと感じました。ありがとうございました。

  • 一昨年の水害で、右往左往したことから、来年度の計画の中に、今日作った計画を活かしたい。

  • より一層、防災に取り組む必要があると実感した。

  • 考えもしなかったDVなどの事例には大変ショックを受けた。啓発など地域活動に役立てたい。
  • 防災のこと、災害時の女性視点での防災を考えることの重大さを感じる。参加者が、防災に関しての意識が高い方なので勉強になる。

チラシ (1154KB; PDFファイル)(令和2年度男女共同参画の視点を取り入れた防災リーダー養成講座)

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