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男女共同参画センター 

活躍する女性を訪ねて 【第2回】

さまざまな分野で活躍する佐賀県在住の女性に
前アバンセ館長の村上文(あや)がインタビューしました

 合同会社佐賀市漁村女性の会 (佐賀市東与賀町)
 代表  古川 由紀子さん

古川代表 事務所縮小.jpg

 

 

 ● プロフィール ●

 

   (ふるかわ・ゆきこ)

 佃煮や焼き海苔などの佐賀県産の海苔を使った製品を製造・販売する「合同会社佐賀市漁村女性の会」代表。

  平成3年から旧西与賀漁業協同組合(現・佐賀県有明海漁業協同組合)に勤務し、信用事業などを担当。

 平成12年に漁協女性部のメンバーとともに海苔加工品の製造・販売事業を立ち上げる。

  平成18年、加工品づくりに専念するため漁協を退職し、「佐賀市漁村女性の会」を結成して事業を開始。

  平成20年に法人化。

 

  

 

 

                                                              

                      

                                (インタビュー:平成25年7月)

  


 

 全国区をめざしてスタート

 佐賀市漁村女性の会の看板商品である海苔佃煮「うまかのり(ばい)」が誕生したのは平成12年。古川由紀子さんは当時、漁協の職員として商品づくりに関わった。 

 

 佃煮の商品化は、もともと漁協女性部の全員参加型の事業としてスタートしたものでした。女性部の旅行で東京に行った時には銀座の百貨店の地階食品売り場を見に行きました。そこの一番いい場所、つまり食品売り場のセンターポジションにあったのは、なんと佐賀県産のイチゴだったのです。「佐賀のイチゴがあって、海苔がないわけにはいかないでしょう」と、一流百貨店に並ぶ海苔商品のパッケージをみんなにイメージさせました。

 

 素材のよさを活かす醤油の選定から入れる分量まで、古川さんは深夜の自宅キッチンで何種類ものサンプルをつくり、「全国区の味」をめざして試行錯誤したという。

 

 海苔屋がつくる佃煮とはいえ、海苔だけではちょっと厳しいだろうから、何かアイデアはないかと考え、行き着いたのが、海苔と並んでよく食卓に並ぶ「梅」でした。当時はまだ、海苔と梅を組み合わせた佃煮というのは大手のメーカーにもありませんでした。「うまかのり(ばい)」には着色料や保存料といった食品添加物は一切入っていませんが、梅がちょうど保存料の役目を果たしてくれています。

 

 そこそこヒットして有名になってからは、「PB(プライベートブランド)商品として売り出したい」というお話もいくつかいただきました。中には保存料などの食品添加物を入れてほしいと言われたこともありましたが、私は「そんなことはできません」とお断りしました。瓶のふたを開けて放置しておいたらカビが生えるということは、私はよいことだと思っているのです。

  


   
やっぱり本気で売りたい

 平成16年、「うまかのり(ばい)」は全国漁業協同組合連合会が主催するコンクールにおいて、優れた水産加工品に贈られる農林水産大臣賞を受賞した。商品は一挙に注目を浴びたが、漁協女性部では加工品事業から離れていく人が増え始めていたという。

 

 最初はまるで手探り状態。仲良しクラブの活動というか、とても商売と言えるようなものではありませんでした。ゼロからのスタートだったのにもかかわらず、「どうせやるんだったら全国の有名百貨店で売りたい」と大胆な夢を持っていました。甘口醤油を使った「九州の味」ではなく、「全国区の味」にこだわったのもそんな理由からです。商品開発には大手食品会社勤務で東京出張の多かった夫のアドバイスがとても役に立ちました。

 

 女性部の加工品づくりは、スタートして2年目に漁協の事業から独立して、女性部有志での取り組みになりました。そこで私は自分のオフの時間に、業務外で関わらなくてはならなくなりました。いつかはホームページをつくって通販もやりたかったし、全国のいろんなところに置きたいと思っていました。でも、自分が本当にやりたかったことは全然できていなかったし、だんだん販売の難しさもわかってきました。

 

 そうするうちに、関わっていた女性部のメンバーの意気込みが少しずつ下がっていきました。海苔生産の家業に追われて、もう佃煮どころではないというのです。もっと儲かっていれば加工品に飛びつくのでしょうけれど・・・。コンクールには「商品を認めてもらえれば何かが変わるかも」と思って応募しました。「うまかのり梅」で最高賞を取り、マスコミには取り上げてもらえましたが、厳しい現実はあまり変わりませんでした。

 

 「加工品事業はもう止めよう」という声も聞こえてきたこの頃、古川さんは「やっぱり誰かが中心になって本気でやらないと無理だ」と思い始めていたという。

 平成18年、ついに古川さんは専業でやっていく覚悟を決め、漁協を退職した。

 

 「本腰入れてやりたいので辞めさせてください」と一度退職願を出したのですが、みんなに止められました。「バカなこと考えないほうがいい」、「今辞めてもらったら困る」とか、「生産者でもないのに、漁協を辞めてまで、どうしてそこまでするの」とも言われました。家族も大反対だし、とにかく周りがみんな反対しました。でも自分の生き方だからやるだけやりたい、一所懸命やってダメなら仕方がないからって言って。私の人生の転機でした。

 

 女性部全員の52人で始めた加工品づくり。しかし、古川さんが退職を決意し、「佐賀市漁村女性の会」として新たにスタートしようとした時、チームに残ったスタッフはたった2人だったという。この2人の海苔生産者は、今も「合同会社佐賀市漁村女性の会」の社員として、古川さんを支えている。

  


  

事務所を改装した「手作り工房」

 「うまかのり(ばい)」がつくられているのは、有明海に注ぐ本庄江川の河口から少し遡った佐賀市西与賀町相応津。もとは漁協の空き事務所だったという小さな建物だ。工房入り口から 縮小.jpg

 

  事務所の床にタイルを貼ったり、壁を変えたり、ペンキを塗ったりして加工場に改装しました。最初は加工品づくりに乗り気でなかった男の人たちも、「加工品が生産者のためになるなら」と改装に力を貸してくれました。建物自体は古いけれど、全部が手づくりの加工場なのですごく愛着があります。瓶のキャップは全部手で締めますし、その後の減菌消毒も手作業です。そんな小さな手作り工房でずっとやってきています。

 

写真:佃煮を製造する加工場 (佐賀市西与賀町)

 

 新たに商品取引をする際、生協などではまず工場の立入り検査があります。お金をかけずにどう改良し、厳しい検査を乗り切るか。知恵と努力でなんとかパスしようと頑張りました。ホームセンターから材料や部品を買ってきて、例えば水道の蛇口をレバー式に交換したり、入口にビニールカーテンを取り付けたり。高いところに網を張る作業は、県産品振興を担当する県庁職員に「ちょっと来て」とお願いして、張ってもらったりもしました。

 

  私たちは、資金もノウハウも何もないところから立ち上げたので、地元の人や役所など、いろんな人がいろんな形でサポートしてくれました。人脈というのはお金では買えないもので、私の誇りです。「お金はないけど、人脈だけはいっぱいあるものね」といつも言っています。でも、自分たちが一所懸命にならなくて人に頼ってばかりいてもダメ。やっぱり頑張ってやっているからこそ、見兼ねて、手を貸してくれたのではないかと思います。

 


 

手作業でも、やればできる

 

  1つの釜の能力が限られている中で、例えば「3000個」などの大口注文に応えて納期までにきちんと納めるには、回転数を増やすしかありません。以前は、佃煮をつくる際にしょっちゅう釜の中の状態を見て、いちいち火加減を変えたりして、まるで自宅の台所で家庭料理を作るような、そんな感覚からなかなか抜けられない部分がありました。また、炊き込み時間がつい長くなると海苔が痩せてしまうこともわかってきました。

 

  そこで、取り組んだのが「マニュアル化」です。「開始から○分間はこの温度帯で」、「それから調味料と○○を入れて」、「○分したら泡が噴き出す」ので、「その瞬間を見極めてから中火に落とすこと」というように決めました。さらに、途中で触らないで、次の準備をその間にすること、と徹底しました。工房後方から 縮小.jpg

 

  また、つくる人の動きも見直しました。加工場は専用に設計したものでなく、空き事務所に後からシンクを並べたりしているので、そんなに効率よくできてはいなかったのです。狭い厨房で人同士がぶつからないように、動作や手順を考えました。すると常に3人が入っていたのが2人でも大丈夫になりました。1工程で30分くらいは無駄なところが出てきたのです。

 

写真:加工場に並ぶ海苔佃煮の瓶(手前)

 

  こうして、特別な機械を入れたわけではないのですが、うまく効率化が進み、1釜あたり佃煮120個が確実にできあがるようになりました。1回転で120個できる。5回転したら600個できる。しかも夜中ではなく夕方6時ぐらいには終わります。これで5日間で3000個が製造できます。大口の注文が来ても、準備して1週間ぐらいあれば楽にこなせるのだと計画ができるようになり、自信を持ってやれるようになりました。

 

 「これからどんどん売っていこう」という時に問題になったのが、個人経営の壁でした。新規の取引をお願いしても口座開設ができないなどと言われてしまうこともあり、平成20年に法人化しました。今は売上のうち7割が卸売業者の取扱になっていますが、自社に専任の営業担当者がいないからこそ、卸の企業を活用したほうがいいと私は思っています。

 


 

 「焼き海苔」も高品質

 

 佐賀市漁村女性の会では「焼き海苔」の製造・販売も手掛けている。乾燥した場所でつくる必要があるため、「うまかのり梅」とは別に、本社(佐賀市東与賀町)の1階で製造している。特に優れた製品は生産者の名前を掲げて販売しているという。

 

  例えば、漁船名を掲げた「勝栄丸」という焼き海苔は、中部地方の百貨店イベントですっかり定着し、今では「勝栄丸をください」と指名で買い求められるようになりました。生産者にとってはやりがいがある反面、「今年は味が落ちた」などと言われないよう、責任も増してきます。百貨店からは「2~3万円のギフトを提案してください」という話もありますし、もっと高級な5万円コースも企画があります。

 

 海苔といっても本当にいろいろです。毎年の天候や環境に左右されて、海苔養殖はとても難しいのです。現在の主流になっている“スサビ種”は、品種改良されていて病気に強く、たくさんの量が取れます。ただし、やや硬めです。一方、東京湾で昔から養殖されていた“アサクサノリ”は甘くて柔らかくて、スサビ種とは味が全然違います。しかし、生態系が変わってしまった今では絶滅危惧種に指定され、幻の海苔といわれています。

 

 このおいしいアサクサノリの品種を「ぜひ復活させたい」と、生産者たちが天草に原種があることを聞きつけて取りに行き、胞子から育てた海苔はとても希少価値があります。網を張ってもうまくいかなかったり、味の検査に通らなかったりして、手間暇ばかりかかる非常に厳しいものですが、旧西与賀漁協(現佐賀県有明海漁協)の生産者のみなさんはスサビ種とともにこのアサクサノリも手掛けているのです。

ラベル貼付縮小.jpg

 

  焼き海苔は在庫を置かずに、注文が入ってから焼きます。機械的にダーッと焼くのではなく、1回目をソフトに焼いて、2回目に本焼きをしてと、とても丁寧につくっていますから絶対においしいのです。たとえ数は少なくても本当においしいものを味わっていただきたいと思っています。人がなかなかやらない、難しい海苔づくりをしている生産者の姿を漁協の職員としてずっと近くで見てきました。手間暇をかけて一所懸命やっていることを、こうして生産者に代わってみなさんに伝えていくのが自分の役割ではないかと思っています。

 

写真:佐賀市東与賀町の本社にて

  


 

 仲間がいたから続けられた

 

 とにかく今までは無我夢中で、本当によく続いたなと思います。「もうダメだ」という時が何度もありました。最初は簡単に壁を乗り越えていたのに、その先に行けばさらに高くて厚い壁が現れて、という繰り返しで、お金も無くなってきて、もう限界だと何度も思いました。円形脱毛症にもなりました。「もし私が病気で入院したらこれを機会に止められるのに」とか、「明日、夜が明けなければいいのに」などと考えていました。今は笑って言っていますが、本当に笑えない時期が何度もあったのです。

 

 それでも歯をくいしばって頑張って続けてきたのは、自分ひとりだけのことではなくて仲間がいたからだと思います。応援してくれる人たちへの恩返しがまだできていないうちは途中で止められないというのがありました。それに、私たちくらいの年齢になったら生き方や価値観がいろいろ変わってきますよね。お金儲けのためではなく、最高においしい海苔を食べながらお酒を飲んで、温泉に浸かりながら「みんな頑張ったね」と言える時が来ればそれでいい。厳しい試練を何度も乗り越えて、そう思えるようになりました。 

 


 

海苔ファンを増やしたい

 

 昔の食卓には毎日のように海苔がありました。でも、このごろは手巻き寿司を自分で巻けないという若いお母さんも増えています。だから私は海苔をもっと食べていただくために、巻き寿司の講習会をやったり、海苔を使ったお菓子やアイスクリームなど、いろんな海苔の食べ方を提案したりしています。

 

 それから、農家さんの得意な食材と私たちの海苔を組み合わせた佃煮など、新たな製品を生み出そうともしています。自分たちだけで頑張っていくのももちろんいいのですが、海苔屋の私たちと農家さんたちとで、お互いに得意なものを合わせて、1プラス1が5になるくらいのことをやっていきたいと思っています。練り窯縮小.jpg

 

 これからも佐賀海苔のファンを全国にもっと広げたいし、ここで「おにぎりカフェ」も始めたいと思っています。有明海の向こうの多良岳に沈む夕日を見ながら、おいしい海苔とおいしいお米を使った「究極のおにぎり」でゆっくりと過ごしていただきたいです。デザートには「焼きのりアイス」もあるし、お味噌汁とお漬物もあります。ここが佐賀市南部の観光の拠点になるようにと、少しずつですが、もう準備を始めています。そのうちにカフェの看板をバーンと揚げたいですね。 

 

写真:加工場を案内する古川さん

 

  

インタビューを終えて

  「お金はないけど、人脈だけはいっぱいあるものね」と言われるように、地元の方、行政、問屋、大口顧客をはじめ、有益なアドバイスをしてくれる様々な分野の専門家など、頼もしい人脈を築いておられます。これは、古川さんが海苔づくりを熟知しており、有明海の美味しい海苔をもっと食べてもらいたいという熱意と、漁協の職員を辞めてまでこの事業にかけるという本気の気迫が、人柄の魅力と相まって関係者の協力を引き寄せているのだと思います。このネットワークは、アドバイスを生かして苦労しながら着実に事業をすすめてきたことで得られた信用に他ならず、お金では買えない貴重なものです。

 

 大口の注文に応える過程で、生産工程の作業の一つ一つを見直し、マニュアル化しました。これにより、作業を効率化し、品質の安定化も実現しました。試行錯誤しつつ、創意工夫を積み重ねて、手づくりの工房でも、無添加、ヘルシーで、高品質なものを量産できるという立派なビジネスモデルを確立されました。また、地域の女性が、仕事と子育てを両立しながら、無理なく生き生きと働ける場をつくったという意義も大きいでしょう。事業立ち上げのときから一緒に働いてきた漁家の女性の「古川丸に乗っています」との言葉に、古川さんへの信頼の厚さを実感しました。漁家は船に命を託しているからです。

 

 日本の各地に自慢の野菜など特産品があります。それを生かして六次産業化したいというところはたくさんあると思います。古川さんのこのチャレンジは、地元の特産品を生かした農林水産業の加工品開発のモデルとして、大いに参考になるものと思われます。   

 

 アバンセ館長  村上 文    

 

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